冬のホットフラッシュ、乗り切るためのヒントが知りたい!

セルフケア

仕事に家事に忙しい5人の女性「ヴィーナス」が、つらい更年期を乗り切るヒントを専門家に聞いて学んでいく取材企画。今回は悩みを抱える人の多い症状「ホットフラッシュ」をとりあげます。47歳・シングルマザーのヤヨイが、更年期症状に詳しいよしかた産婦人科院長の善方裕美先生にインタビュー。ホットフラッシュの症状やメカニズム、冬に向けての対策を詳しく聞きました。

更年期症状のホットフラッシュ、そのメカニズムや症状は?
ホットフラッシュはいつから始まるの?
冬のホットフラッシュにおすすめの服やアイテムとは
ホットフラッシュは予防できるの?

更年期症状のホットフラッシュ、そのメカニズムや症状は?

ヤヨイ 私は昔から汗はよくかくほうだったんですけれど、最近その症状がひどくなっている気がします。もしかしてホットフラッシュなのかな、と思ったりもするんですが、ホットフラッシュの具体的な症状や原因を教えていただけますか?

善方先生(以下、善方) 更年期にのぼせたりほてったりする症状を「ホットフラッシュ」と言います。汗をかきやすくなることについては「スウェッティング」という言葉で表現され、どちらも原因は同じですが、カーッとほてるだけの人もいれば、たくさん汗をかく方もいるなど、その症状はさまざまです。

女性ホルモンのひとつである「エストロゲン(卵胞ホルモン)」は、女性らしい体づくりや生理にも関わるホルモンなのですが、卵巣が寿命を迎える閉経前後の更年期(45~55歳くらい)に急激に分泌量が減ります。エストロゲンは分泌されなくなるのに、脳下垂体から卵巣に向けて「もっとホルモンを出すように」と指令が飛び、「FSH(卵胞刺激ホルモン)」が過剰分泌されてしまいます。

このFSHの過剰分泌が、血管を縮めたり拡げたりしている自律神経に乱れを引き起こし、体温を調節する幅を狭めるといわれています。暑さや寒さを感じる幅が狭くなってしまうんですね。そのため、周りの人は暑く感じていない暑さでも自分だけ暑く感じる、周りの人は寒く感じない寒さでも自分だけ寒く感じるという症状につながるんです。

ヤヨイ ホットフラッシュは、いつ、どんな場合に起こるんですか?

善方 起こるタイミングは予想がつかず、いきなりです。体が暑さを感じると頭部にホットフラッシュ(ほてりやのぼせ)の症状があらわれたり、皮膚の汗腺から汗が出たりするのですが、その出方には個人差があるものの、一般的には5分以内に治まります。症状が出てから1時間以上ずっとほてっているという方はいませんね。

また、のぼせは重い方だと1日に10回以上というケースもあります。症状の出る期間も人それぞれで、更年期の時期に1年や2年など期間限定で出る場合が多いように思いますし、あまり出なかったという方ももちろんいらっしゃいます。

ヤヨイ ちなみに私はほてると汗が出て大変なのですが、ほかの人はどんな症状で悩まれているんでしょう。

善方 婦人科を受診される方の中には、例えば接客業の方でお困りのケースを多く聞きます。お客様とお話しているときにいきなり顔に汗がしずくとなって出てしまい、相手の方に不快な思いをさせてしまっているのではと心配になってしまわれるんです。

また、夜の寝汗がひどくてパジャマを着替えても、またびっしょり汗が出てパジャマが濡れてしまい、寒くて風邪をひくほどだという話もあります。そのように症状がひどい方は婦人科外来に来られ、ホルモン補充療法で楽になっていますよ。

ヤヨイ そんなお悩みをお持ちの方も…。症状がひどかったら治療ができること、覚えておきます!

ホットフラッシュはいつから始まるの?

ヤヨイ 更年期前の年下のママ友に「私の症状って更年期のホットフラッシュかな?」と聞かれることがあるんですが、更年期症状かそうではないかはどこで見分けるんでしょうか。

善方 閉経の平均年齢は約50歳なので、その前後5年、つまり45歳から55歳が更年期といえます。その時期でなければ、基本的には更年期症状とは言いません。また、「器質的疾患(臓器そのものに異常があり、症状も出ている状態)がない」ということが定義なので、ほかの病気との見分けが大切になります。

とはいえ、実際のところ、いつ閉経するのかは個人差がありますから、年齢のみで絶対に違うとも言い切れないのです。そこが、更年期診断の難しいところですね。

例えば更年期の年齢より少し下の40歳くらいの女性の方がいろいろなタイミングでほてりが出るとします。生理はきちんと来ている場合、もしかしたら緊張等のストレスが原因のほてりかもしれません。ストレスを改善して症状が緩和されるのであれば、それは更年期のホットフラッシュではなく、自律神経失調症から来るホットフラッシュだと見分けられるわけです。

ただ、いろいろやってみても症状が落ち着かないとき、ホルモンケアをしてあげると楽になる場合もあります。その場合は更年期のホットフラッシュということかもしれません。FSHの過剰分泌は、いわゆるプレ更年期である40代前後から始まることもあるので、月経が乱れ始めているなら可能性はあるかもしれませんね。いろいろと生活改善や治療を試しながら、一番良い方法を探していくといいでしょう。

冬のホットフラッシュにおすすめの服やアイテムとは

ヤヨイ 冬のホットフラッシュや汗への対策にはどんなものがありますか。

善方 冬に症状が出るときに準備するといいものをお伝えしますね。ポイントは体の内側は冷やさず、ほてる外側を上手に冷やして体温調節することです。

●すぐに脱ぎ着できるような服装

寒くて着込みたくなる時期ではありますが、症状が出たら脱いで調節できるような服装がいいですね。

●着替え用の下着

汗をたくさんかくという方は、汗を吸収しやすい綿などの素材の下着を必要な枚数持つといいでしょう。汗をかき始めたときには、服が濡れたままだと風邪をひいてしまうからです。

●ハンドタオル

ハンドタオルも複数枚準備して、すぐに汗を拭けるようにしておきましょう。背中をふけるような長さのあるものも◎。

●冷感接触素材のスカーフ

ホットフラッシュのときは頭がほてることが多いので、冷感接触素材のスカーフなどを首に巻くと楽になることがあります。

●冷却ジェルシート

おでこに貼るような冷却ジェルシートを使うと、ほてりが和らいだという人もいますのでお試しを。

●常温の水

のどごしのいい常温の水を少し飲むことをおすすめしています。ホットフラッシュは体温が上がっているわけではなく、汗をバーッとかいたのちにすぐ治まります。更年期症状の発汗で脱水症状になったりはしないので、冷たい水分を飲んで体を中から冷やすのは冷えにつながるのでやめたほうがいいです。あくまで体の外側から冷やすようにしましょう。

暑い夏の時期にはホットフラッシュや汗はひどくなる傾向がありますが、寒い冬は症状が軽くなるので、その点は安心してくださいね。ただ、暖房の効いた部屋ではのぼせやすいので、温度設定を高くしすぎない方がよいですね。



ホットフラッシュは予防できるの?

ヤヨイ いきなり体が熱くなって汗が噴き出すのは本当につらいですが、このホットフラッシュを予防することはできるんでしょうか?

善方 予防するのは難しいですが、症状を緩和することならできるかもしれません。方法のひとつは、フィトエストロゲン(女性ホルモンのエストロゲンの代替効果が期待できる外因性エストロゲン)を含む食品をホルモンケアとして食生活に取り入れることです。大豆製品(大豆イソフラボン)などを好きな調理法で積極的に食べてみてください。


ヤヨイ なるほど…。大豆製品は意識的に取り入れていましたが、もうちょっと増やしてみます。ちなみに先生、私はシングルマザーで日々プレッシャーやストレスもあり、ホットフラッシュもあり…という生活です。更年期で生活環境も大変…そんな場合はどうすればいいんでしょう。

善方 わぁ!大変ですね。毎日よく頑張っていますね。シングルマザーの方は四六時中、気を張って緊張していることが多いです。まずは自分の生活のリズムを振り返って、無理のないスケジュールを組むことが一番だと思います。忙しいとは思いますが、マッサージに行くなど、自分を癒やすための時間、ほっとできるひとときをつくりましょう。そして大豆製品を摂ってみてください。

気を付けなくてはならないのは、ホットフラッシュの原因が更年期症状ではなくて病気が隠れている場合、例えば甲状腺機能に異常があるケースなどです。「ホットフラッシュの原因が病気だとわかり、薬を飲んだら楽になった」という人もいるんですよ。症状がひどければ我慢しすぎず、まずは婦人科に相談するといいと思います。

ヤヨイ ほてりばかりに気を取られて、病気の可能性があるなんて考えてもいませんでした。更年期っていろいろ考えなくてはならなくて大変…!このつらい時期は、いつか終わるんでしょうか!?

善方 大丈夫、ちゃんと終わりますから安心して!更年期を過ぎたら楽になりますし、ホットフラッシュもなくなります。まずいろいろ試してみて、それでもダメな場合は婦人科医師がサポートしますから決して頑張りすぎないでくださいね。

ヤヨイ 先生…(泣)。すごく勇気づけられます。ホットフラッシュで悩んでいる人がたくさんいることもわかりましたし、まずはセルフケアをしながら、今一度自分の生活を見つめ直してみます。今日はありがとうございました!

善方 裕美先生

よしかた産婦人科院長、横浜市立大学産婦人科客員准教授

医学博士、日本産科婦人科学会専門医、日本女性医学学会認定女性ヘルスケア専門医。日本骨粗鬆症学会認定医。更年期障害について、ホルモン治療のみならず、カウンセリング、漢方薬、食事、運動、代替医療など多方面のアプローチで治療を行う。NHK『きょうの健康』『チョイス@病気になったとき』などの番組や自治体健康セミナーなどで、更年期診療の認知を広める活動もしている。最新著書『女医が教える閉経の教科書』(秀和システム)が好評を得ている。

ヤヨイ

47歳。中学生の子どもとの2人暮らし。バツイチのシングルマザー。子どもに手がかからなくなってきたので、仕事でキャリアアップに励んでいる。4年前から肩こりや倦怠感、目の疲れ、汗、イライラがひどくなってきて、肌のシワやシミも気になっている。

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