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臨床現場におけるクランベリーの位置付け ―尿路感染症再発予防・膀胱留置カテーテル管理での選択肢と、患者さんへの伝え方―

在宅で膀胱留置カテーテルを使用する療養者では、尿路感染症や膀胱留置カテーテル閉塞による排尿トラブルがしばしばみられます。排尿に関する緊急コールが入り定期交換を待たずに膀胱留置カテーテルの交換が必要になったり、ほぼ毎月のように発熱し、都度、解熱剤や抗菌薬で対応しています。こうした実情は、訪問看護の現場でもよく見られます。

また外来診療の現場では、閉経や疲労を背景に膀胱炎を繰り返す中高年女性が少なくありません。在宅と外来、置かれた状況は異なりますが、そこには共通する課題があります。それは、抗菌薬が必要になる前に、患者さんに示せる予防の方法をどれだけ持てるかという点です。

この記事でご紹介する高濃度クランベリーは、その選択肢の一つです。再発をくり返す膀胱炎の予防については『JAID/JSC感染症治療ガイドライン2015』で、50歳以上の女性を対象に、推奨グレードB・エビデンスレベルⅡ(表記はBⅡ)として記載されています。これは最上位の「強く推奨する」ではなく、予防の選択肢として一般的に勧められる水準にあたります。

一方、膀胱留置カテーテル管理での活用は、ガイドラインで効果がグレードづけされているものではなく、尿を酸性に保つという成分の作用機序と、臨床現場での観察に基づく位置づけです。両者は根拠の性格が異なる点を区別して捉える必要があります。

出典:ナースマガジン Vol.46 別刷・43 別刷(在宅カテーテル座談会・第5章画像)

1. 再発をくり返す膀胱炎

中高年女性の膀胱炎は、閉経に伴うホルモンバランスの変化や疲労などの影響から、再発しやすくなったり、重症化したりする場合があります。

短期間に何度も膀胱炎を繰り返す場合には、薬剤耐性菌により治りにくいケースもみられます。いったん薬剤耐性ができてしまうと、内服薬が効きにくくなり、点滴でも十分な効果が得られにくくなることも。

そうした背景から、予防の視点が重要になってきます。再発が続くと受診や服薬の負担となり、患者さんの生活の質(QOL)の低下にも繋がりかねない。だからこそ、再発しにくい状態を保つことには大きな意味があるのです。

再発予防の観点で対象になりうるのは、50歳以上の女性。ガイドラインでも、クランベリージュースの飲用が再発性膀胱炎を予防する可能性があるとして記載されており、予防を検討しやすい中心的な対象といえます。

2. なぜ予防に働くのか

クランベリーが尿路感染症の予防に関与するとされる主な成分として、キナ酸とプロアントシアニジンが挙げられます。

キナ酸は体内に吸収されたのち肝臓で馬尿酸に代謝され、尿のpHを低下させると考えられています。プロアントシアニジンはポリフェノールの一種で、尿路への感染菌の付着を防ぐとされます。尿を酸性側に保つことは、感染菌が増えにくい環境づくりにつながると考えられています。

この作用は膀胱留置カテーテルの管理を考えるうえでも手がかりになります。尿路感染に伴って尿素が分解されるとアンモニアが発生し、尿はアルカリ性へ傾きます。するとアルカリ性の結晶が形成され、膀胱留置カテーテルの閉塞や結石の付着につながることがあります。

尿のアルカリ化は、尿砂(尿のにごり)として肉眼で確認できる場合もあり、膀胱留置カテーテル閉塞の予兆となることがあります。

尿のpHと結晶形成のしくみ

3. 薬剤耐性を避けるために

近年では、抗菌薬に耐性を持つ薬剤耐性菌の増加も問題となっています。膀胱炎の治療においても、閉経前女性と閉経後女性で第一選択薬が異なるなどの違いがあり、抗菌薬の使用方法が見直されてきています。

高濃度クランベリー果汁飲料を日々の食品として取り入れることは、膀胱炎の再発予防だけでなく、抗菌薬の適正使用につながる一つの方法と考えられます。なお、クランベリーの成分を十分に摂取するには、高濃度で品質の確かな製品を選ぶことが欠かせません。

短期間に膀胱炎を繰り返し、薬剤耐性によって治療が難しくなりつつある患者さんでは、日頃のセルフケアがより求められます。抗菌薬による治療を繰り返す前の段階で、高濃度クランベリーを取り入れる方法もあります。

4. 監修者が経験した症例について

監修者のもとに膀胱炎を頻繁に繰り返す患者さんがいました。抗菌薬で治療しても約2か月ごとに膀胱炎を繰り返していましたが、高濃度クランベリー果汁飲料を継続したところ、半年以上にわたってみられなくなりました。受診回数も減り、再発までの期間が延びたことが本人の安心感につながり、日常生活を楽しめるようになったといいます。

もちろん、効果のあらわれ方には個人差があります。この症例だけで有効性を示すことはできませんが、膀胱炎に悩む患者さんにとって、一つの手立てとなり得ることを示した経験といえます。

5. 在宅での観察例(Vol.43別刷より)

前述のとおり、膀胱留置カテーテルでは尿を酸性側に保つことが、結石付着や閉塞の予防につながると考えられています。対象となるのは、在宅や施設で長期留置している患者さんです。

ある在宅症例では高濃度クランベリーを開始して3か月後、結石付着が著しく減少し介護者からは「尿がきれいになった」「熱が出なくなった」との声があり、使用期間中は排尿に関する緊急コールもなく、尿路感染症による発熱もみられませんでした。

なおこれは在宅における一例の観察であり、この経過だけで膀胱留置カテーテル管理での予防効果を示すものではありません。結石付着や閉塞による負担を和らげる、日々のケアの一環として捉える位置づけです。

在宅での観察例
図:在宅症例における経過(ナースマガジン Vol.43 別刷より)

6. 予防の生活習慣とあわせて

尿路感染の再発を防ぐには、日頃の生活習慣が土台となります。たとえば以下が挙げられます。

  • 水分を十分に摂る
  • 尿意を我慢しない
  • 排泄後は前から後ろへ拭く
  • 生理中は下着や生理用品をこまめに替えて清潔に保つ

基本となる生活習慣の改善だけでは十分でないときに、高濃度クランベリー果汁飲料を加えるという使い方が推奨されます。

予防の生活習慣
図:再発予防の生活習慣とクランベリーの位置づけ(ナースマガジン Vol.46 別刷より)

7. QOL・排尿自立支援の観点から

クランベリーの活用は、QOLの観点からも意味を持ちます。2020年度の診療報酬改定で見直された「排尿自立指導料」により、入院と外来に区分した評価体系が導入されました。

医師・看護師・理学療法士による「排尿ケアチーム」を設置してチームでアプローチし、入院中の対応から外来へと継続して包括的な排尿ケアを行った場合には、最長12週にわたって週1回の点数が算定できます。排尿に関するケアを向上させることは、尿路感染の防止と、患者が自立した排尿の両方を取り戻すことにつながります。

こうした排尿ケアの向上は、膀胱留置カテーテルを早期に抜去して尿路感染を防ぎ、人としての尊厳やQOLを守りながら、排尿の自立した状態での在宅復帰を後押しするものとなります。

在宅復帰までの段階では、膀胱留置カテーテルが留置されている患者さん、排尿障害のある患者さん、パッドやおむつを使用している患者さんなど、状況はさまざまです。そうした患者さんの尿路感染症予防とQOL向上のためにできることの一つとして、高濃度クランベリー果汁飲料などの食品を活用する方法を提案してみてはいかがでしょうか。

8. 患者さんへの伝え方

患者さんやご家族に勧めるときは、クランベリーの「位置づけ」を先に伝えることをお勧めしています。クランベリーは薬の代わりではなく、毎日のケアの手段の一つであるという前提に立つとともに、効果が穏やかであることも踏まえ、再発の間隔が延びているかを数か月単位で一緒に確認していく姿勢が大切です。

また、味や酸味が続けにくさにつながることもあるため、無理なく続けられる形を一緒に探すことが、再発予防を生活のなかに定着させる助けになります。特に介護を担うご家族では、「治すため」というより、日々の管理の負担を少し軽くする観点で取り入れてもらうと、目的を共有しやすいのではないでしょうか。

9. まとめ

高濃度クランベリーは、再発をくり返す膀胱炎の予防や、膀胱留置カテーテルの管理における負担の軽減という場面で、臨床現場で活用できる選択肢の一つです。

抗菌薬に頼り過ぎないケア、排尿の自立とQOLを守るケアにより、その意義はより明確になります。

効果は条件付きで報告されている範囲にとどまるものの、日頃の生活習慣の改善とあわせて取り入れることで、患者さんの暮らしを和らげる一助となりうるでしょう。

監修

髙橋 悟 先生

日本大学医学部 泌尿器科学系 主任教授
日本大学医学部附属板橋病院 院長
日本老年泌尿器科学会 理事長
日本排尿機能学会 理事長

本稿はナースマガジン Vol.46 別刷を母体に再構成したものです(冒頭の在宅カテーテルの場面はVol.43 別刷の座談会に基づく)。図版はナースマガジン Vol.46 別刷より(膀胱留置カテーテルの観察例はVol.43を引用)。

参考文献

日本感染症学会・日本化学療法学会 JAID/JSC感染症治療ガイド・ガイドライン作成委員会.JAID/JSC感染症治療ガイドライン2015 ― 尿路感染症・男性性器感染症―.感染症学雑誌 2016;90(1):1-30.

Takahashi S, Hamasuna R, Yasuda M, et al. A randomized clinical trial to evaluate the preventive effect of cranberry juice (UR65) for patients with recurrent urinary tract infection. J Infect Chemother 2013;19:112-117.

日本創傷・オストミー・失禁管理学会 編「排尿自立支援加算」「外来排尿自立指導料」に関する手引き.照林社,2020.

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