手首や体のあちこちが痛い!更年期の関節痛の特徴や予防法を解説

「関節の痛みで階段の上り下りがつらい」「手がこわばって物をにぎれない」。

そんな不安や悩みを抱えていませんか。更年期になると、女性ホルモンのバランスが変化し、体にさまざまな影響を与えます。その影響の一つに「更年期の関節痛」があり、手首やひざ、肩などに痛みやこわばりを感じるようになります。

本記事では、更年期の関節痛による痛みや、よく似た症状が現れる関節リウマチとの違い、そして予防法について解説していきます。関節痛に悩んでいる方は、健やかな生活を取り戻すためにも、ぜひ参考にしてください。

更年期の関節痛の特徴|どんな痛みや症状があるの?

更年期の関節痛とは、女性ホルモンのバランスが乱れることで起こる体の変化の一つです。関節に違和感を感じる程度から始まり、徐々にひざや手指などに痛みやこわばりが生じて、動かしにくくなります。ひどくなると、日常生活に影響が出ることも。具体的な症状には、下記のようなものがあります。

●朝起きたときの症状:指の関節に痛みやこわばりがある。
●動き出すときの症状:椅子から立ち上がるときに、ひざの関節や股関節が痛む。
●日常動作のなかでの症状:階段の上り下りで、ひざの関節や股関節が痛む。物が握れない。力が入らず、物を落としてしまう。
●その他、局所的な痛み:特に、ひざ、肩、腰、手首、手指などの関節に、痛みが集中しやすい。

更年期の関節痛と関節リウマチとの違い

更年期の関節痛の症状とよく似ているのが、関節リウマチです。関節リウマチとは、膠原病(こうげんびょう)の一つで、体の免疫機能が正常に働かずに自身の細胞を攻撃してしまうことで生じる病気です。更年期になり、女性ホルモンが減少することで免疫系も影響を受け、発症のリスクが高まるといわれています。その症状には、局所の熱感、屈曲しづらさ、関節が紡錘型に腫れる、複数の関節が腫れるなどのほか、全身症状として、だるさ、微熱、皮疹、息切れなどがあります。

両者の違いには、症状が続く時間と、局所の腫れが挙げられます。更年期の関節痛の場合、関節の症状は数分ほどで軽快しますが、症状が1時間以上続くなら、関節リウマチの疑いが高いといえます。また局所の腫れという点では、関節リウマチなら紡錘型に腫れますが、更年期の関節痛ではそれほど腫れません

こうした違いもありますが、正確な鑑別には専門家による診察や検査が必要です。痛みや違和感が長く続く場合は、早めにリウマチ内科やアレルギー・膠原病内科などの内科、整形外科、更年期外来、婦人科、手外科などの受診を検討しましょう。

更年期に関節痛が起こる原因

更年期の関節痛の原因は、加齢や女性ホルモン(エストロゲン)の減少だと考えられています。関節の軟骨には、エストロゲンの受容体(細胞外からの信号を受け取るタンパク質)があり、エストロゲンが結合することで筋肉や腱などの関節組織の柔軟性を保つ働きがあります。

そのため、エストロゲンが減少すると関節の柔軟性が徐々に失われ、こわばりや痛みが出現するのです。また、加齢やエストロゲンの減少によって関節を支える軟骨や筋肉が衰えたり、血流が悪くなったりすることによっても、関節痛やこわばりが起こると考えられています。


更年期の関節痛を予防・治療する方法

更年期の関節痛を予防・治療する方法は次のとおりです。

●ホルモン補充療法(HRT)を用いて治療を進める

●漢方薬を用いて治療を進める

●内服薬や外用剤を用いて治療を進める

●関節に必要な栄養を摂取する

●サプリメントで栄養を補う

●全身運動による血行の促進


ここからは、それぞれの方法について詳しく解説していきます。


ホルモン補充療法(HRT)を用いて治療を進める

関節痛の原因がエストロゲンの減少であれば、エストロゲンを補う「ホルモン補充療法(HRT)」によって改善する可能性があります。ほかにもホルモン補充療法は、ほてりやのぼせ、発汗などの更年期症状に高い効果を示す治療法です。

治療の初期には、吐き気やむかつき、子宮からの不正出血などが見られることがあります。しかし基本的には、治療を継続するうちに治まってくるため、過度な心配は必要ないでしょう。


漢方薬を用いて治療を進める

ホルモン補充療法による副作用が心配な方や、関節痛以外にもさまざまな更年期症状に悩んでいる方は、漢方薬を用いて治療を進めることがあります。

漢方薬による治療は、西洋医学の対症療法とは異なり、体の状態を総合的に診ることで病気や症状の根本的な改善を目指します。適切な漢方薬は、個人の体質や症状によって異なるため、使用する際は医療機関で医師の診察を受けましょう。


鎮痛剤や抗不安薬を用いて治療を進める

関節の痛みが強い場合は、鎮痛剤である「非ステロイド性抗炎症薬」を用いたり、関節内注射やブロック注射などを使用したりすることもあります。

また、不安感や不眠などの精神症状が強い場合や、ホルモン補充療法や漢方薬での治療で効果がみられない場合は、抗不安薬や睡眠薬などを用いることがあります。


関節に必要な栄養を摂取する

関節痛の予防や治療には、骨や関節に必要な栄養を摂ることも大切です。乳製品や小魚などに豊富なカルシウムを積極的に摂るほか、ビタミンB群やビタミンCなどを摂取することで、血行が促進されるため、骨や関節の健康が保てます。

また、更年期になると分泌が減少する女性ホルモンと似た作用がある「大豆イソフラボン」の摂取もおすすめです。納豆や豆腐、豆乳などの大豆製品には大豆イソフラボンが豊富に含まれているため、日々の食事に取り入れると良いでしょう。


サプリメントで栄養を補う

関節痛やこわばりの改善に役立つとされている主な栄養素には、ヒアルロン酸やコラーゲン、コンドロイチン硫酸などが挙げられます。仕事や家庭のことで忙しく、なかなか食事内容に気を使うことが難しい方には、サプリメントを活用して必要な栄養を効率的に摂取する方法もあります。

また、更年期の関節痛は女性ホルモンの減少が原因と考えられるため、女性ホルモン様作用をもつ「大豆イソフラボン」の摂取もおすすめです。複数の種類がある大豆イソフラボンのなかでも、女性ホルモン様作用が最も強いのは「ゲニステイン」という成分です。サプリメントで、手軽に補ってみてはいかがでしょう。


全身運動による血行の促進

全身運動によって血行が促進されると、関節の動きが改善する場合があります。患部を必要以上に動かさずに炎症を防ぐことも大切ですが、運動不足になると、かえって症状を慢性化させる可能性もあります。無理のない強度やペースで、ウオーキングや水泳、ストレッチなどの全身運動に取り組んでみましょう。

手指の痛みがある場合は、マッサージで血行を促すのもおすすめです。

 

更年期の関節痛に関するよくある質問

ここからは、更年期の関節痛に関するよくある次の質問に回答していきます。更年期の関節痛に関してより詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

更年期の関節痛はどんな痛みですか?

ー痛みの感じ方は人それぞれですが、特にひざ、肩、腰、手首、手指などの関節に痛みが集中します。

更年期の関節痛はいつまで続きますか?

ー痛みやこわばりなどの症状が軽い方もいれば、5~10年続く方もおり、一概には言えません。

更年期の関節痛を治すにはどうすればいいですか?

ーまずは痛みの原因となる動作を控え、薬物療法や注射を用いて痛みを和らげることが大切です。ほかに、更年期の治療を進めることで痛みが軽減することもあります。

大豆イソフラボンを摂取して関節の健康を維持しよう

更年期に手足の関節痛やこわばりが起こる原因には、加齢や、女性ホルモンであるエストロゲンの減少が深く関わっています。関節の症状を予防するには、エストロゲンに似た作用を示す「大豆イソフラボン」の摂取がおすすめです。

「大豆イソフラボン」は豆腐、納豆、豆乳、味噌などに含まれるため、積極的に取り入れるようにしましょう。しかし、これらの大豆食品を毎日一定量摂取するのは難しいので、手軽に、かつ摂りたい成分だけを摂取できるサプリメントも活用しましょう。

関節の痛みやこわばりの要因には、関節リウマチや痛風などの病気が隠れている場合もあるため、症状がつらいときは無理せず整形外科や更年期外来を受診してください。


<この記事を監修いただいた先生>

田中 利和 先生
柏Handクリニック 院長
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