尿路感染症(UTI)の予防について、クランベリーを患者さんにどう説明すればよいか悩んだことはありませんか。再発をくり返す患者さんやそのご家族から「日常でできることはないか」と尋ねられ、答えに迷った経験のある方も多いのではないかと思います。
クランベリーは情報源によって「効く」「効かない」の温度差が大きく、どこまで言ってよいのかを判断しにくいテーマです。本記事では、クランベリーの尿路感染症予防について、エビデンスを読み解くための判断基準を整理しています。記事を通して根拠を正確に読み、自信をもって患者さんに手渡せるようになりましょう。
本稿はナースマガジン Vol.46 別刷・Vol.50 別刷を母体に構成したものです。
1. 尿路感染症の基礎知識
クランベリーの予防効果を正しく伝えるために、まず尿路感染症がどのような病気なのか、そのなかで膀胱炎がどこに位置づくのかを押さえておきましょう。ここでは、膀胱炎と尿砂(結石)という2つの基礎をおさらいします。
尿路感染症は、尿道口から細菌が上っていく上行性感染が多くを占めます。感染が膀胱にとどまれば膀胱炎、腎盂にまで及べば腎盂腎炎です。このうちクランベリーによる予防効果が主に語られているのは膀胱炎で、頻尿や排尿時の痛み、残尿感、尿のにごりなどを引き起こし、再発しやすいことが知られています。
尿路感染症には、もう一つ知っておきたい側面があります。細菌のなかには尿素を分解してアンモニアを発生させ、尿をアルカリ性に傾けるものがあり、尿がアルカリ性になると、リン酸マグネシウムアンモニウム(ストルバイト)という結石ができやすくなります。
これがいわゆる「砂」や「にごり」になることがあり、とくに膀胱留置カテーテルを留置している患者さんでは、カテーテルの結石の付着や閉塞の原因になり得ます。
2. 判断基準1|推奨グレードをどう理解するか
クランベリーは、再発性膀胱炎の予防をはじめとして尿路感染症への有効性が報告され、複数の診療ガイドラインに「予防の選択肢」として収載されています。
『JAID/JSC感染症治療ガイドライン2015』では、50歳以上の女性がクランベリージュース(65%飲料)を1日1回飲用することで、プラセボと比べて再発が有意に抑制されたとする国内の報告を根拠に、クランベリージュースの再発予防効果を推奨グレードB・エビデンスレベルⅡ、表記では「BⅡ」と評価しています。
『女性下部尿路症状診療ガイドライン[第2版]』(2019)でも、「再発性細菌性膀胱炎にどう対処すべきか」への回答として、50歳以上の女性で再発性膀胱炎を予防する可能性がある(報告レベル2)とし、推奨グレードをC1としています。
| ガイドライン | 対象 | 推奨グレード |
|---|---|---|
| 女性下部尿路症状診療ガイドライン[第2版](2019) | 50歳以上の女性/再発性膀胱炎の予防 | C1 |
| JAID/JSC 感染症治療ガイドライン2015 | 尿路感染症の再発予防 | B |
BⅡの「B」は、推奨の強さが「一般的な推奨」であること、「Ⅱ」は、その根拠が非ランダム化比較試験のレベルであることを示します。一方、女性下部尿路症状ガイドラインの「C1」は別の評価方式で、「十分な科学的根拠はないが、有効性が期待できる可能性がある」ことを意味します。
表記の文字は違いますが、どちらも最上位の「強く推奨する」ではなく、中ほどの推奨である点は共通しています。
つまりクランベリーは「予防的な使用をお勧めできる」水準にある、というのが正確な理解です。患者さんや同僚に説明する場面では、出典と推奨グレードをセットで示せることが重要です。
3. 判断基準2|コクラン2023が示すもの
ガイドラインと並んで押さえておきたいのが、国際的に評価の高いコクランレビューです。ここでは、まずコクランレビューとは何かを確認したうえで、2023年版が示した内容と、近年注目される成分の話までを順に見ていきます。
コクランレビューとは、イギリスの非営利団体であるコクランが作成し、定期的に更新している医療情報レビューのことです。世界中の関連研究を体系的に集めて評価するため、個々の論文を単独で読むよりも一段高い視点から結論を確認できます。
同団体によるコクランレビュー(2023)でも、有症性・反復性の尿路感染症において、クランベリー製品の摂取により発症リスクが低下したと報告されています。「コクランでも報告されている」という事実が、ガイドライン収載とあわせて、根拠の確からしさを補強してくれます。

コクランレビュー(2023)では、尿路感染症の予防に関わっているのは、クランベリーに含まれるプロアントシアニジン(PAC)という成分ではないか、との考察も示されています。PACには、細菌が尿路の粘膜に付着するのを妨げる方向に働くと考えられている性質があります。
ただし注意したいのは、現時点で各種の診療ガイドラインは、成分としてのPACにまで踏み込んだ記載をしていない点です。
ガイドラインが評価しているのは、あくまで「クランベリージュースの飲用」であり、「PACという成分の効果」が確立したわけではありません。成分レベルの話はガイドラインの推奨より一歩手前の、研究上の考察として受け止めておくのが正確です。
コクランレビュー2023では、クランベリーのタブレットやパウダータイプの摂取で有症性尿路感染症と反復性尿路感染症のリスク低下が報告されています。予防の効果は継続が前提になるため、無理なく続けられる形を一緒に選ぶこと自体が、看護師がかかわれる支援のひとつです。
なお、コクランレビューでは発症リスクが低下した具体的な割合も示されていますが、数字は対象や条件によって意味が変わってきます。
4. 判断基準3|数字を正しく捉える
広告や口コミなどでは「クランベリーで尿路感染症が大幅に減る」といった表現が使われることがありますが、それだけだと誤解を生んでしまいます。異なる研究を照らし合わせてみると、若く健康な女性を対象にした研究と、再発をくり返す高齢女性を対象にした研究とでは、同じ「予防効果」という言葉でも意味する中身が異なるからです。
だからこそ、効果を示す数字は必ず「誰を対象に」「どんな条件で」得られたものかとセットで読む必要があります。
割合だけを切り出して強調すると、本来はあてはまらない患者さんにまで効果を期待させてしまいかねません。数字を単独で扱わない姿勢は、結果的に患者さんの信頼を守ることにつながります。
5. 判断基準4|「どこまで言えるか」を見極める
報告のある対象・場面に絞って勧めることが、正確さを担保する最後の要点です。ここで、前半で整理した膀胱炎と尿砂についても交えながら、必要なポイントを解説します。
クランベリーの予防効果が報告されているのは、再発をくり返す中高年、とくに50歳以上の女性が中心です。閉経前後はホルモンバランスの変化などから膀胱炎をくり返しやすく、予防の意義が比較的大きい層といえます。こうしたケースにおいてガイドラインを用いて説明することが、患者さんへの有効なコミュニケーション手段となります。
一方で、長期にカテーテルを留置している患者さんに対してクランベリーを説明する場合は、これまで紹介してきたガイドラインの記載とはやや離れた、応用的な位置づけとなります。理由は、ガイドラインが評価しているのが膀胱炎の再発予防であり、カテーテル閉塞への対策ではないからです。ここでのねらいは、感染を「治す」ことではなく、前半で触れた尿砂(ストルバイト結石)による付着や閉塞という、管理上の負担を軽くすることにあります。
クランベリーは尿を酸性側に保ち、アルカリ性の結石ができにくい方向に働くと考えられており、実際にカテーテル先端への結石付着や夜間頻尿がみられる症例に対して、排尿記録などのアセスメントと併せてクランベリーを活用した例が紹介されています。
このように、カテーテル閉塞への活用はガイドラインが直接推奨している使い方ではなく、現場のケアに基づく応用的な位置づけとなります。患者さんに伝える際は、その前提をおさえておくことが重要です。
クランベリーの効果について患者さんに伝える際には、以下のポイントを覚えておきましょう。
- 効果はガイドラインが示す推奨水準の範囲として伝え、断定はしない
- そのうえで、再発間隔の変化を継続的に確認しながら活用していく
また、水分摂取や排尿習慣の見直しといった日常的なケアと組み合わせ、患者さんごとの経過を見守るなかにクランベリーを位置づけることも大切です。
6. まとめ
クランベリーと尿路感染症予防の関係は、次の3点に整理することができます。
- 使い方は再発予防の手段として位置づける
- 勧める相手は「報告のある対象(再発をくり返す50歳以上の女性が中心)」を中心とする
- 効果の強さはガイドラインが示す水準(JAID/JSCでBⅡ、女性下部尿路症状ガイドラインでC1)までと見極める
いずれも最上位の「強く推奨」ではなく、中程度の推奨であるという点が共通しています。
誇張も過小評価もしない「ものさし」を持つことが、看護師が安心して患者さんや周囲の方々にクランベリーを勧められる土台になるはずです。「効きます」と言い切るのではなく、「再発の回数が減ったという報告があります」と伝えてみる。このひと言の違いが、信頼につながっていきます。
本稿はナースマガジン Vol.46 別刷・Vol.50 別刷を母体に再構成したものです。
ナースマガジン Vol.46 別刷 コメンテーター
髙橋 悟 先生(日本大学医学部 泌尿器科学系 主任教授/日本大学医学部附属板橋病院 院長/日本老年泌尿器科学会 理事長/日本排尿機能学会 理事長)
ナースマガジン Vol.50 別刷 コメンテーター
西村 かおる 先生(コンチネンスジャパン株式会社 専務取締役/日本コンチネンス協会 名誉会長)
鈴木 基文 先生(キッコーマン総合病院 泌尿器科 主任部長)
※肩書きは取材当時のものです。
参考文献
日本感染症学会・日本化学療法学会 JAID/JSC感染症治療ガイド・ガイドライン作成委員会.JAID/JSC感染症治療ガイドライン2015 ― 尿路感染症・男性性器感染症―.感染症学雑誌 2016;90(1):1-30.
日本排尿機能学会・日本泌尿器科学会 編.女性下部尿路症状診療ガイドライン[第2版].リッチヒルメディカル,2019.
Williams G, Hahn D, Stephens JH, et al. Cranberries for preventing urinary tract infections. Cochrane Database Syst Rev 2023;4:CD001321.






