【医師監修】更年期の疲れはなぜ?「だるい」「やる気が出ない」を乗り越える対策と注意点
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「なんだか最近疲れやすくなった」「しっかりと休んでいるのに疲れがとれない」
更年期を迎えた多くの女性が、疲労感や倦怠感に悩んでいるのではないでしょうか。だるい感覚がずっと続くため、気分まで沈んでしまいますよね。
本記事では、更年期に疲れやすさを感じる原因や、症状への対策を解説しています。更年期の疲労や倦怠感に関するよくある質問へも回答しているため、症状をやわらげたい方は参考にしてください。
更年期世代の方の多くは疲れやすさを感じている
更年期世代の方の多くは、疲労感や倦怠感を感じているといわれます。そのため、若い頃のようにテキパキと家事や仕事がこなせずに自信をなくす人や、周囲に「怠けている」といわれて傷つき、悩んでしまう人も少なくありません。
しかし多くの方が同じような悩みを持っており、更年期に疲れやすいと感じています。更年期外来の患者を対象にした調査では、週1回以上疲れを感じる方は85.6%、ほぼ毎日疲れを感じる方は49.3%いることが分かりました。
更年期に疲れやすくなる原因
更年期に疲れやすくなる原因には、ホルモンバランスの乱れ、不眠や不安感のほかに、更年期を原因としないものもあります。
主な原因はホルモンバランスの乱れ
更年期にさしかかると、エストロゲン(女性ホルモン)の分泌量が、大きくゆらぎながら低下します。すると、ホルモンバランスが乱れ、自律神経に変調をきたし、代謝が低下。エネルギーを生み出す力も落ちてしまい、疲れがとれなかったり気力がわかなくなったりするのです。さらに、昼間でも眠気を感じやすくなります。
また更年期世代には、疲れの原因となるサビ(活性酸素)とたたかう抗酸化力も急激に低下するため、元気を保つことが難しくなってきます。
更年期による不眠や不安感が原因の場合も
疲れやすさは、不眠や不安感が原因の場合もあります。更年期世代(45~55歳)は、家庭や職場での環境が大きく変化する時期とも重なります。そのストレスから不安を感じやすくなり、眠れなくなって疲れがたまってしまうことも。
さらに更年期は、自律神経のバランスが乱れることにより、抑うつ症状が出やすいとも言われています。抑うつ症状は、自分でコントロールできるものではありません。まずは家族や友人などの信頼できる人に今の状況を伝えて、つらい気持ちを吐き出すようにしましょう。症状が長引く場合は、医師や臨床心理士の診断を受けて、適切な治療を進めていくことをおすすめします。
更年期症状「以外」の原因
更年期世代の女性が「だるい」「眠い」「何もしたくない」と感じる場合、下記のような病気や体調不良が背景にある可能性もあります。
●婦人科疾患(鉄欠乏性貧血)
●甲状腺異常
●肝・腎の病気
●慢性疲労症候群
●睡眠障害
●うつ症状
過多月経に伴う鉄不足による貧血では、血液中の酸素運搬力が低下し、体がエネルギー不足になり、疲れを感じることがあります。こうした症状がある場合、まずは総合内科を受診し、必要に応じて婦人科や内分泌内科などの専門医への紹介を受けるとよいでしょう。
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更年期に疲れやすい場合の対策

更年期に疲れやすい場合の対策には、以下のようなものがあります。
● 規則正しい生活リズムを心がける
● 適度な運動を心がける
● 食事やサプリメントで抗酸化力が補える成分を摂取する
● 漢方薬を服用する
● ホルモン補充療法(HRT)で女性ホルモンを補う
規則正しい生活リズムを心がける
生活リズムの乱れは、自律神経のバランスを崩します。多忙でも、できるだけ毎日同じくらいの時間に就寝・起床する習慣をつけ、十分な睡眠時間と休息時間を確保しましょう。この時期は家事や仕事のペースを落とすことも大事なセルフケアになります。
適度な運動を心がける
更年期の疲労感を軽減するためには、適度な運動も効果的です。ウオーキングやストレッチ、ヨガなどは生活のスキマ時間に取り入れやすいため、毎日5〜10分を目安に始めてみてはいかがでしょうか。適度な運動を続けることにより、自律神経のバランスが整うため、疲労感以外の更年期症状の改善も期待できます。
食事やサプリメントで抗酸化力が補える成分を摂取する
疲れのもとになる「活性酸素」とたたかう抗酸化力は、体内で作られるほか、抗酸化成分を摂って補うこともできます。抗酸化成分は、緑黄色野菜や果物、大豆やごまなどにも含まれています。
緑黄色野菜や果物にはβカロテンやリコピンなどの「カロテノイド」が含まれており、大豆には「イソフラボン」、ブドウの皮や種にはプロアントシアニジンなどの「ポリフェノール」や、ビタミンC、Eが含まれています。いくつかの食品を覚えておき、毎日の食事に上手に取り入れてみましょう。また食事のなかでの摂取が難しい場合は、サプリメントで補う方法も有効です。
漢方薬を服用する
体全体のバランスを整えたい場合は、漢方薬を服用するとよいでしょう。更年期の疲れには、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)や、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)などの漢方薬が有効です。特に補中益気湯は、漢方でいう「気」を増やす効果があるため、更年期症状による疲労感や、食欲不振などの改善が期待できます。
ホルモン補充療法(HRT)で女性ホルモンを補う
更年期症状の主な原因は、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量低下によるものです。そのため、ホルモン補充療法(HRT)により女性ホルモンを補うことで、疲労感などの更年期症状を軽減させる効果が期待できます。
ただし副作用により悪化する疾患(子宮体がんや乳がんなど)があるため、治療を開始する前に検査が必要です。なおホルモン剤には、内服薬や貼り薬、塗り薬などの種類があります。
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更年期の疲労や倦怠感に関するよくある質問
ここからは更年期の疲労や倦怠感に関するよくある質問へ回答していきます。
更年期に疲れやすい、眠いと感じる理由はなんですか?
ホルモンバランスの乱れが一因と考えられます。ただし、なかには更年期上昇ではない場合もあるので注意が必要です。一例として、「甲状腺機能低下症」があります。全身のエネルギーの使い方をコントロールするホルモンを作る甲状腺に異常が見られる病気です。また、心臓や肝臓疾患の可能性もあります。不調が長く続く場合は、医師に相談しましょう。
疲労感への効果が期待できる漢方薬はありますか?
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)や、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)などの漢方薬が有効とされています。特に補中益気湯は、漢方でいう「気」を増やす効果があるため、更年期症状による疲労感や、食欲不振などの改善が期待できます。
疲労感や倦怠感に有効なサプリメントはありますか?
抗酸化成分が含まれているサプリメントがおすすめです。ブドウ種子ポリフェノール(プロアントシアニジン)や、イソフラボンが摂取できるものであれば、疲労感や倦怠感をやわらげる効果が期待できます。
更年期症状の原因に目をむけてケアを始めよう

更年期になると疲れやすいことは、女性の体のしくみ上、仕方がないことです。昔のように家事や仕事がテキパキこなせなかったり、周りから理解が得られなかったりしても、あなたが傷つくことはありません。また、更年期症状の現れ方は人それぞれなので、他人と比べないようにしましょう。
疲れを感じたら無理をせずに、家事や仕事のペースを落として休息をとるように心がけてください。根本の原因である女性ホルモン量や抗酸化力の低下に目をむけてケアをはじめると、更年期以降もずっと元気な自分でいることにつながります。更年期を一つのきっかけとして、これから自分がどのように生きていきたいか、そのためにどのような心と体の状態を保っておきたいか、見つめ直す時間をとってみてくださいね。
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<この記事を監修いただいた先生>

秋津 憲佑先生
キッコーマン総合病院 産婦人科部長
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