更年期の不安やストレス、どう向き合うのが正解?

更年期の不安やストレス、どう向き合うのが正解?
セルフケア


仕事に、家事に、子育てに、介護に…ストレスだらけの更年期!女性のお悩みを専門家と一緒に解決する『お悩み解決隊』。今回のテーマは「ストレスの解消法」です。子ども3人を抱え、パートをこなすアイコが、成城松村クリニック院長の松村圭子先生に、更年期のストレス対策を伺います。



更年期世代に起こる、メンタルの変化とは

松村先生(以下、松村) 体のメカニズムからいくと、女性ホルモンが急変動を起こすのが更年期です。この時期、ホルモンの変化のせいで、いろいろな不調が起きますよね。例えばホットフラッシュ動悸めまい不眠といった不定愁訴。イライラしたり落ち込んだりといったメンタル面にも影響が出ます

さらに、更年期は女性にとって環境の変化が起こりやすい時期。親の介護が始まる人もいれば、身近な人の死を経験する人もいます。また、子どもの反抗期や受験もあります。こんなご時世だから、先の見えない不安、経済的な心配もストレスの一因。つまり、ストレス源が多い時期に、さらにホルモンのゆらぎで精神的にも不安定になるんですよね。

その人をとりまく環境や性格は違っても、みなさんさまざまなストレスを抱えて悩まれています。プレ更年期のアイコさんも、ストレスに女性ホルモンのゆらぎが合わさって、さらにメンタルが疲れていることは考えられます。

松村 夫が更年期を理解してくれず、疲れて横になっていても『サボっている』と言ってくる、なんて話もよく耳にします。周囲の無理解、思いやりに欠けた言動に加えて、誰にも頼れない、相談できない、なんて状況だと、ストレスは減るどころか増える一方よね。


更年期のストレスを軽減させる、生活のヒントをチェックする



知っておきたい、ストレスに強い人、弱い人

松村 ストレスに強いか弱いかは、本人の考え方次第のところもあると思いますよ。何が起こっても「ま、いっか!」と流せる人は、ストレスに強い印象があります。誰しも年をとっているわけだから、若い頃と比べて調子が悪いところが出てきたり、できないことが増えて当たり前。「全部うまくできなくても、8割できていればいいか!」と思えれば、気持ちは少し軽くなりますよね。

反対に、「できなかった2割が気になってしまう」ような、完璧主義の人、何に関してもネガティブに考えがちな人は、ストレスを溜めこむ傾向にあります。そんなストレスが自律神経に影響して、さらに更年期症状が悪化する悪循環に陥ることも。

 年をとってステージも変わったんだから、生き方のペースを変えよう、荷を下ろしていこう、という意識の変革ができればいいと思うんです。肌のピークだって20代。徹夜できていたのも20代。そんな昔と比べて今の自分に自信が持てないと嘆くのではなく、「今の自分なりのベストを目指せばいい」と思えたら、ストレスは少し減ると思います。


ストレスを軽くするコツは「人と比較せず、 “I”(私)を主役に」

松村 まず「未来を意識し過ぎない」というのが大事だと思います。悪いことは起こらないかもしれないのに、ついつい「不安の先取り」をしてしまう人が多いの。そうではなく、更年期以降を「新たなステージ」とプラスにとらえて、新しい楽しみ方を見つけてほしいです。だって世の中の半分はもう年下なわけ。そう考えれば、ストレスやプレッシャーがすごく軽くなると思うんです。

そして、とにかく休んでください。あれをしなきゃ、これをしなきゃとタスクに追われる毎日を見直してください。昔と同じスピードでは生きられなくなっていることを素直に認めて、いかに荷を下ろして手を抜くかという方向にシフトチェンジしていきましょう。

松村 アイコさん、自分と誰かを比較する必要なんてないの!他人と比較しても自分は幸せになれないし、元気になれるわけでもない。SNSを見てネガティブに感じてしまうのなら、「見ない」に限ります!それにSNSで素敵な生活をPRする人も、もしかしたらそうせざるをえない理由があるのかもしれないじゃない?

私ね、いつも“I”(自分)を主語にしようって思うんですよ。「人が私をどう見るか」ではなく、「自分はどうしたら心地いいか」。今の自分に満足していれば、人に何かを自慢する必要も、過度にアピールする必要もないはずです。

私は一人旅がとても好きなんですが、写真をSNSに上げることはしていないんです。旅が好きだからこそ、旅しているときは五感を研ぎ澄ませながら、その瞬間を楽しんで過ごしたい。誰かのために上手に写真を撮ったり、SNSに上げる時間をもったいなく感じてしまうので…(笑)。




更年期の心と体を守る!ストレス軽減生活のヒント

松村 更年期は体調がガラッと変わる時期なので、まずはこのタイミングで、自分にとって何が大事か、自分はどうありたいのかということを見つめ直してみましょう。「何をしたら幸せ?誰と会ったら楽しい?」という風に…。若いときより気力も体力も落ちてきているので、「自分はどうなりたいか」を考えて動くといいですよ。

人生100年と考えると、まだまだ折り返し地点。友達や洋服、生き方もすべて、「これからの自分に合うものを今から見つけていこう」というスタンスでいくといいのではないかしら。人から聞いたリラックス法も「これじゃなきゃダメ」ではなく、自分に合う方法にカスタマイズしていくスタンスでいきましょう!

●食事はいろんなものを無理なく

たんぱく質は元気な体をつくるために必要な栄養素です。更年期世代は、毎食たんぱく質は必ず摂るようにしましょう。そして、ビタミン、ミネラル をバランスよく摂る。土台をしっかり整えることは非常に大事です。

日本人は、「この食材が健康にいい」とメディアで話題になった瞬間、スーパーからその食材が消えることがよくありますが、私は「これだけ食べれば健康」というようなスーパーフードはないと思っています。それよりも、いろいろなものをまんべんなく食べること、そして自分が食べたいものを我慢せず食べる代わりにカロリーや栄養の帳尻を合わせられる知識を持つことが大事ではないでしょうか。

ちなみに更年期にいいとされる大豆は、女性ホルモン様に働く大豆イソフラボンだけでなく、食物繊維や大豆たんぱくが含まれているので、食べることはプラスです。大豆たんぱくは血糖値やコレステロールを調整してくれ、生活習慣病予防に助かる栄養素ですから。ただ、大豆だけでなく、肉も魚もまんべんなく食べたほうがいいですね。

また料理については、自炊するのがベターではあるけれど、毎日3食自炊しなくちゃ、なんて思ったって、忙しい世代なのだからできるわけがない!(笑) ときにはお手軽なカット野菜を使う、おかずを買ってくるなど、適度な手抜きをしながら続けていくほうがよっぽどいいです。

食品から摂るだけで栄養素が十分ではないと感じる場合は、サプリメントを摂ることもおすすめです。そもそも、きちんと自炊できていたとしても、今の時代の食材は、昔に比べて栄養価が低い場合もあるのです。必要な栄養素を補えるサプリメントを上手に活用するといいでしょう。

●義務感のない運動を適度に

適度な運動も、ストレス解消になります。ジョギングやウオーキングなどは、規則正しく、リズム感をもって呼吸をする運動なので、セロトニンという幸せホルモンが出やすくなります。大切なのは、「自分にとってストレスにならない運動」を続けること。本当は行きたくないのに、無理にジムに週何回通おう、なんて頑張ろうとすると、挫折して自己否定につながりやすいので逆効果です。義務感自体がストレスですからね。今やYouTubeでヨガや筋トレの動画もたくさんあるので、やりたいときにやりたいものを、やりたいだけやって疲れたらやめる。それで十分です。

もっというなら、家事だって立派な運動ですよ。料理で1時間の立ち仕事。掃除も動けば体力を使いますよね。通勤だって、エレベーターに乗らずに階段を使えばいい。毎日の生活のなかで体を動かせば、それは運動といえますよ。「ストレス解消のため」「骨粗しょう症予防になるから」「痩せたいから」…なんて運動する理由を探すと義務になっちゃうから、重く考えずに「ただ自分ができる運動をする」。それだけでいいです。愛犬の散歩でもOKですよ。

●ゆっくり睡眠でストレスをリセット

夜ぐっすり眠れば1日のストレスのほとんどはリセットされますが、更年期世代には、睡眠の質の悪い人が多いんです。加齢で眠りが浅くなったり、ホットフラッシュのような不調で眠れなかったり、イライラして寝られなかったり。そうなると当然疲れはリセットされていないから、朝起きても“だるおも”に感じてしまう。

質の良い睡眠をとるために大事なのは、

・眠る1時間半前までにお風呂にゆっくり浸かって、体の深部体温を上げておく
・寝るときには寝返りが打ちやすく心地よい肌触りのパジャマを着る
寝る前にスマホを見ない

ということ。寝るときに電気毛布を使って体を温める人もいますが、電気毛布では体の表面しか温まらないので、深部体温を上げるならお風呂がベターです。

また、夜中にトイレに起きたり、なぜか目が覚めたりと中途覚醒する人も多いですが、その後またすぐに眠れるなら体は休まるので大丈夫です。

もしベッドのなかで眠れず悶々とし始めたら、ひとまずベッドから出ましょう。人間は、場所と行動をセットで覚えるので、そのまま寝られずに布団のなかにいると、「ベッド=寝られない場所」と記憶してしまうので、ひとまず部屋を移動して眠くなったらベッドで眠ること。それでも睡眠の課題が解決しないときは、婦人科や内科に行って睡眠導入剤を処方してもらうと良いでしょう。




●友達との過ごし方も見直しを

女性は昔からコミュニティをつくるのが得意ですから、気の置けない友達とおしゃべりするのもストレス解消にはいいですね。でも、人選は気を付けたほうがいいです。たとえ学生時代に親友だった人でも、更年期になるまでの間に、お互い全く違う人生を歩んできているわけです。昔は一緒にいて楽しかったけれど、今の自分にとっては楽しくないという残念なこともありえます。

おしゃべりして双方が楽しくてゲラゲラ笑えるような関係性なら良いのですが、どちらかが聞き役に徹しなければならないならストレスになります。そういう人間関係はいさぎよく断つことも大事ですよ。

●モヤモヤしたら紙に書いて吐き出す

あれこれ考えすぎてしまう人は、思っていることを紙に書き出してみましょう。堂々巡りしている頭のなかから、モヤモヤを目の前の紙に書き出すと、自分の気持ちが整理されてスッキリしますよ。気分転換にもなるのでおすすめです。

●呼吸を意識してリラックス

現代人はせかせかしている人が多いので、呼吸が無意識のうちに浅くなりがちです。リラックスしたいときには深呼吸してみましょう。吸う息の2倍くらい、吐く息を長めにするイメージで、意識して息を吐いてみてください。息を吸うときは交感神経、吐くときは副交感神経が優位になるので、深くくつろいだ気持ちになることができるはずです。呼吸はリズム運動のようなもの。セロトニンも生まれやすくなりますよ。

●趣味や資格学習など、新たな世界を模索する

自分自身で「枠」をつくらないことも大切です。「もう年だから」と自分で勝手に決めてしまうことで、逆に気持ちが窮屈になってストレスを感じてしまうことがあるんです。

できるか自信がなくても、何かやりたいことがあるなら、「自分に合わなかったらやめればいい」という気軽なスタンスで、興味を持ったことに素直に首を突っ込んでみてください。ひょっとすると、新たな楽しい出会い、新しい世界が広がるかもしれませんよ。

例えば私は、医療とは全く違う趣味を見つけたくて、地唄舞にチャレンジしたら、これが楽しくて!あとは、自分のプラスになるような資格取得にも挑戦しています。例えば、食生活アドバイザーや愛犬飼育スペシャリスト、ファイナンシャル・プランナー…。新しいことを知る、知識を深めることも、ストレス解消につながるかもしれません。

●映画を見て感動して泣く

副交感神経はリラックスするときに働く神経ですが、女性は40代から副交感神経の働きが低下していきます。ストレス解消に映画を見る人も多いと思いますが、感動の涙を流すと副交感神経のスイッチが入るので、泣いた後はすっきりリフレッシュできると思います。サスペンスのようにハラハラドキドキする映画より、感動して泣ける映画がおすすめです。

●お酒を程よくたしなむ

好きな方にとっては、飲酒もストレス解消になります。お酒を飲むと、そこで気持ちをオフにできるので、日中あったことから解放されるのがいいところ。私も休肝日を設けずに飲んでいます(笑)。ただし深酒はNG。ストレス発散になる程度に楽しみましょう。



更年期は「幸年期」。自分の内なる声を聞いて、一歩を踏み出そう

松村 そうですね。更年期は人生の一つのターニングポイントここまで頑張ってきた自分を褒めて、労わって、ねぎらって、そして荷を下ろしていく時期です。無理をしないで、休むときは休んで、手を抜くことを覚えて楽しく過ごしていくといいと思いますよ。とにかく“I”を主語にして、自分のこれからを楽しんでいきたいですね。

疲れていると、ものごとを短絡的に見てしまいがちだけれど、事実は一つでも、受け取り方は何通りもあると思うんです。だから、自分がストレスを感じないように、ものの見方、捉え方を変える習慣をつけるといいのではないでしょうか。友達に冷たい対応をされたとき、「私、彼女に何かしたかな?」って思うのではなく「きっと彼女は機嫌が悪かったんだろうな」で終わらせれば、自分が少し楽になると思うんです。

私は、自分の経験から「更年期は“幸”年期」だと思っているんです。もちろん体調の不調は多いと思うのですが、ストレスを軽減させながらリラックスしてこの時期を乗り越えたら、あとは楽しくなりますから!女性は必ず更年期を抜けられます。霧が晴れたように感じるはずよ。

松村圭子先生
日本産科婦人科学会専門医。成城松村クリニック院長。広島大学医学部卒業。広島大学附属病院を経て2010年に成城松村クリニックを開院。月経トラブルや更年期障害といった不調や病気の治療、婦人科検診のほか、サプリメントや漢方、各種点滴療法などのメディカルケアを行っている。著書に『10年後もきれいでいるための美人ホルモン講座』(永岡書店)、『これってホルモンのしわざだったのね』(池田書店)、『女性の悩みはFemtechで解決!オトナ女子のためのカラダの教科書』(宝島社)など多数。

アイコ
43歳。夫と小学生~中学生の子ども3人の5人家族。子育てをしながらパート勤務をこなし、毎日忙しく過ごしている。2年前からホットフラッシュやイライラ、不安感、気分の落ち込みに悩む。最近では、物忘れや高血圧、白髪、抜け毛の症状も。

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