がんや生活習慣病は大丈夫?更年期の健康診断で自分を守ろう

がんや生活習慣病は大丈夫?更年期の健康診断で自分を守ろう
セルフケア


更年期症状に悩む5人のヴィーナスが専門家にインタビューする「お悩み解決隊」。今回は48歳、自営業のユミコが糖尿病内科医の大西由希子先生に健康診断(健診)の受け方を聞きました。会社に属さない専業主婦や自営業だと、つい健診を後回しにしがちですが、更年期世代には定期的に健診を受けるべき理由と、注意すべき検査項目があるようです。



専業主婦や自営業でも自治体の健診で定期的に健康チェックを

ユミコ 先生、今日は健康診断(健診)の上手な受け方について質問させてください。会社員だと定期的に健診を受けるタイミングがあるようですが、私は自営業で国民健康保険なので強制されているわけではありません。でも更年期世代になると不調が多く、若い頃より確実に健康不安が増しています。やっぱり専業主婦や自営業の女性も、健診は定期的に受けるべきですよね?

大西先生(以下、大西) もちろんです!会社に所属していないユミコさんにも、自治体から健診のお知らせは届いていますよね?ぜひその健診の案内に従って健診を受けてください。郵便ポストを覗くと日々いろいろなDMが届いていて、自治体からの健診のお知らせが埋もれてしまいがちかもしれませんが、健診の通知はとても大事ですよ。

ユミコ 毎年、「健診のお知らせが来たな」とは思うんです。ただ日々の仕事や家事など、目の前のやるべきことに追われているうちに後回しになり、期限が切れてしまうことも…。

大西 それはとってももったいないです!自治体の健診は公費を使って行っているので、健診のメニューもできるだけ無駄なく病気を効果的にスクリーニングできるように設計されています。健診の項目や頻度についても科学的かつ合理的な根拠に基づいているんです。40歳、50歳、60歳という節目で受ける検査、毎年、隔年で受ける検査など、「何歳以上になったらこの病気が増えるから検査すべき」というベストなスクリーニング法で設計されています。そのときに受けないと、その後は数年たたないと受けられない健診項目があったりもします。自費で人間ドックを受けようとすると非常に高価なのに、それが自治体の案内に従えば非常に低価格で受診できるわけ。コスパよく健診が受けられるようになっているのに、受けずに終わるのは損ですよ。

ユミコさんのようにお仕事優先、または家族が優先と思っている方もいらっしゃいますが、仕事を元気にできるのも、家族を支えるのも、まずは自分が健康であることが大前提です。家のメンテナンスに例えると、シロアリがいるなと思ったときに駆除すれば家は守られるけれど、シロアリの有無を確認せずに、「多分いないだろう」と思っている間に柱が食い荒らされて、根本的な土台から立て直さなくてはいけなくなることってありますよね。

健康もそれと同じで、自分の病巣に早めに気づいて手を打てば元気でいられるのに、健診を受けず、自分の健康状態から目をそむけていると、根本的なところで足をすくわれるかもしれません。早めに対処したほうがいい病巣があるかないかを確認する健診は、必ず受けましょうね。

更年期の自分の体の現状を知らないままの方が怖い

ユミコ  若いときは徹夜もできたし踏ん張りもききましたが、48歳にもなると胃の調子も悪いし、更年期症状も出てきましたし、いつまでも健康とはいかないのかもしれませんね。40代を過ぎて自治体からがん検診の案内も届くようになりました。こちらもついつい放置してしまっています。

大西 ユミコさん、がん検診の受診率ってどのくらいかご存じですか?男女ともに死因の1位であるにもかかわらず、たった5割程度なんです。かかってしまう頻度が高く、死亡患者数も多いがん、例えば胃がんや大腸がん、乳がん、子宮がんといったメジャーながんは早期発見・早期治療が可能です。健診を受けていれば気がつける可能性も高くなります。

それと同時に、更年期世代になったら気を付けなくてはいけないのが生活習慣病高血圧症、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症…。このあたりも要注意なんですよ。がんと聞くと大変な病気というイメージがわきますが、血糖値やコレステロール値がちょっと高いといわれても、体は痛くないし変化を感じられないから危機感がないもの。「どうせ健診で測ったところで、数値は去年と同じだろうからいいか」「この1年間何事もなく過ごせたからきっと大丈夫」という自己判断のもとに放置されがちなんです。しかし、がんほどのインパクトがないからといって長い間悪い数値のままでいると、心筋梗塞や脳梗塞といった病気になってしまう恐れもあります。そしていざ心筋梗塞や脳梗塞になってから治療しても、もうなかなか元には戻せないんですよね。

視力が落ちて眼底出血をしてから初めて診断で知る糖尿病。心筋梗塞になって運ばれて初めてコレステロール値が高いと診断されるケース。このように健診で異常があった時点で治療を始めておけばこんなことにはならなかったのに、という患者さんを私たちは日頃から目にしています。もし健診で異常が出ていたら、その時点で医療機関に診察してもらえるきっかけになったわけです。

日本の医療は素晴らしくて、医療費のたった3割ほどの自己負担で受診できるんです。それなのに、医療機関を利用せずに高価な健康食品を食べて安心するなど、単なる気休めにお金を使っていませんか?「なんとなく病院が怖い」という理由で自分の健康を軽視していませんか?不調の出やすい更年期にはなおのこと、自分の体の現状を知らないことのほうが怖いはずです。ぜひ健診の際に内科的な視点で自分を見つめ直してほしいです。



別の病気でない場合に限って、更年期の不調だといえるんです

ユミコ 私の場合、動悸や汗が出るなどの更年期症状があるので、体調は悪いときがあってもきっと更年期が理由だから、健診に行かなくても婦人科に診てもらえばいいのかなと思っていました。

大西 更年期は確かに体のなかがとても変わる時期ではあります。体質が変化して体重が増えやすくなることもあるかもしれないし、女性ホルモンの働きが弱くなり、骨折しやすくなったり、コレステロール値が上がったりすることもあります。また男女問わず年齢とともに高血圧や糖尿病の人も増えていきます。

ここではっきりお伝えしたいのは、「更年期症状かと思っていたら別の病気かもしれない可能性」があるということです。婦人科の先生に聞くと、50代前後の女性は勝手に自分の体の不調を更年期障害だと決めつけて、まず婦人科にやってくる人も多いそうなんですが、調べてみるとコレステロール値が高く、内科の病気にかかっていることも。「内科の病気ではないことが確定してから婦人科に来てほしい」と多くの婦人科の先生も言っています。健診で内科の病気ではないと分かって初めて更年期障害と診断できるのであって、最初から何も検査せずに更年期症状と自分で決めつけないようにしましょう

更年期には気持ち的にも沈みがちだし、仕事をしていてもちょうど先が見えてくる時期なんですよね。男性だってこの年代は特に、このまま定年を迎えるのか、ここから昇進するのか、自分はこの会社に残るか残らないか、なんてことを考えるタイミングです。一方で、今は高齢出産も増えていますから、ちょうど35歳頃に生んだ子どもが50歳になる頃に思春期の難しい時期を迎えます。更年期と子どもの思春期が重なると本当に大変で、仕事をしていてもしていなくても、メンタルにストレスがかかる年頃です。そんなとき、手っ取り早く漢方やサプリメントに頼ろうと思ってしまう気持ちも分かりますが、医学的な根拠を求めて一度は病院に相談したほうがいいですよ。まずは、健診を受けていなかったら健診を受ける健診で異常が見つかったら、かかりつけ医に相談してください

健診を受ける前の憂鬱は、こんな気持ちで乗り切ろう

ユミコ 健診に行くのって、すごく気が重いんです。健診前夜から食事は控えますし、便の採取を忘れそうになったり、バリウムを飲みたくないなあと思ったり…。ポジティブな気持ちで健診に行く方法はないものでしょうか。

大西 これは性格にもよるかと思います。もし検査数値が悪かったら、すでに病気だったらと悶々と考えるのではなく、病気やがんだったとしても進行する前に診断を受けてすっきりしよう、と考えたらどうでしょう。更年期世代にもなると、周りの家族や友人ががんにかかって亡くなるケースも出てくるものです。ユミコさんの周りにも、乳がんや子宮がんになったお友達がきっといらっしゃいますよね。人は「明日は我が身」と思えるような事例に出くわすと、それまで絶対にやりたくなかった胃カメラの検査も進んで受けるようになるものですよ。結局のところ、病気を自分事と思えるか思えないか、です。せっかく仕事がうまくいっているのだから、病気で中断することになるのは嫌だな。がんになって子どもたちを残して先立つのは嫌だな。こんなふうに、今、健診より優先したいものがあるのならなおのこと、自分の普通の生活を病気で突然奪われる可能性があるとしたら、と考えてほしいです。

なんでもそうですよ。ピアノの発表会のためにしっかり練習しておけばいいのに「今日は友達との約束があるからサボろう」といって練習しなかったら、ピアノの発表会でうまく弾けなくて恥をかく。試験前だから試験勉強しなくちゃと思うのに、「今日は眠いから寝よう」といって勉強しなかったら、受験に失敗した。そんなとき「もっと早くにちゃんとやっておけばよかった」と思いますよね。ピアノの発表会や受験はリベンジできるからいいんです。でも健康に関してはリベンジがきかない場合があります命に関しては失ってしまうと絶対にリベンジできないですよね。

車でも定期点検で調べてメンテナンスをするでしょ。人間も定期的にメンテナンスしたほうがいいんです。健診をちゃんと受けている人は、受けていない人と比べて死亡率が下がるというデータを集めて健診のシステムを作っているわけですから、今の医学と健診を信頼して、「健診は受けるのが当たり前」と習慣化してください。

あとはそうですね…。年末の大掃除やおせち料理作りは面倒だけどその季節が来たとか、年度末の卒業式で何を着ていこう…健診もそんな季節イベントと同じようなものだと考えてみたらどうでしょう。誕生月には健診の案内が来たりするから、誕生日の前に毎年健診を済ませておいて、「今年も健康だった」と、お祝いにおいしいケーキを買うなんて感じに、健診とご褒美をセットにしてもいいかもしれませんね。

ユミコ なるほど、それはいいかも!誕生日を目安にすれば、毎年同じ時期に健診を受けられますしね!



更年期女性が気にすべき健診の数値と、日頃からの対策は?

ユミコ 先生、健診の結果をみるとたくさんの数字が並んでいますが、なかでも更年期女性が気にしたほうがいい項目は何でしょうか。

大西 コレステロールと血圧、血糖値、そして肥満度(BMI)ですね。

コレステロール値が高いと、血管が詰まりやすくなります。例えは悪いかもしれませんが、キッチンの排水管をイメージしてみてください。排水管に汚れが溜まると水の通り道が狭くなり、水が流れにくくなり、そのまま掃除をしなければ最後には詰まってしまいますよね。血管も同じで、体中に血液を行き渡らせる血管にドロドロしたものを流せば流すほど、血管にプラークが溜まり、詰まりやすくなります。血管が詰まってしまうと、そこから先に血液が回らなくなるので細胞は死んでしまう。血が行き渡らなくなる細胞があるのが心臓ならば心筋梗塞ですし、頭の細胞なら脳梗塞です。ともすれば命まで失いかねない大変なことですが、何が原因かといえば普段は痛くもかゆくもないけれど、検査したときの血中コレステロール値が高いことなんです。

きれいな水を流して排水管を詰まらないようにするのと同じように、コレステロール値が低い状態に血液を保つと血管が詰まりにくいのです。

また、よく血圧の高い患者さんは「私はもともとこれくらいの血圧なんです」っておっしゃるんですが、それは単なる危険な思い込み。そんなこと言っているうちに血管が細く、詰まりやすくなって、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす恐れがあります。高血圧だと腎臓が悪くなることも。どんな人でも血圧が高めだったら治療が必要です。

血糖値はもっと厄介で、太い血管だけでなくとても細い血管もむしばんでいきます心筋梗塞、脳梗塞になりやすいうえに、糖尿病になって眼底出血を起こせば失明する恐れがありますし、足の血流が悪くなり、神経が傷害されて感覚がおかしくなり運が悪いと足を切断しなければならなくなることも。

高血圧、糖尿病で腎臓が悪くなり、尿を作れなくなると、毎日トイレに行く代わりに2日に1度透析クリニックに通って血液をきれいにしてもらうために透析を受けなくてはなりません。そんな生活になってから「ごめんなさい、これから気を付けます」と言っても、もう元には戻せないんです。

また健診結果にはその検査項目の正常値が書いてありますが、正常値と比べて自分の値が高い場合だけではなく低い場合も、本当に自分の体は大丈夫なのかどうか、一度クリニックで確認したほうがいいと思います。

お医者さんは大学で6年間学んだ後に毎年毎年いろいろな学会に参加して、ずっと勉強を続けているのです。自己判断で健診結果を放置して後悔するより、ぜひ少しの初診料(3割負担で860円、検査代は除く)でお医者さんにしっかり診察してもらいましょう。毎月通っている美容室の料金よりずっと安価でしょ?それで健康を担保できるなら安いものではないでしょうか。

【更年期世代に重要な健診項目】

コレステロール

コレステロールが血液中で過剰になると、血管の内側にプラークがついたり、血栓ができたりして血管が詰まりやすくなり、動脈硬化になる可能性が。その結果、心筋梗塞や脳梗塞を起こす危険性があります。卵やクリームなど、コレステロール値が高い食物は控えましょう

血圧

血圧が基準値を超えていると高血圧と診断されます。日本人は約4000万人が高血圧といわれています。高血圧は脳卒中や心臓病のリスクとなるので、血圧を高くしないためには、塩分をできるだけ減らしましょう

血糖値

血糖値とは血液内のブドウ糖の濃度で、食前食後に変動します。血糖値が高い状態が長く続くと動脈硬化になり、糖尿病をはじめ様々な病気を発症する危険性があります。ウオーキングなどの有酸素運動が血糖値の改善には効果的

●肥満度

肥満度を表す指標がBMI。BMI 22が標準体重で病気になりにくい状態。25を超えると脂質異常症や糖尿病、高血圧症などの生活習慣病のリスクが2倍以上になります。運動して食べすぎを控え、太りすぎないようにしましょう



【更年期世代が取り入れたい生活習慣】

●1日3食バランスのいい食事を摂る

●週に3、4回は定期的に運動する

まだ糖尿病になっていないなら、よく運動をして食べすぎをやめ、太りすぎなければしばらく大丈夫。日々の運動と、3食をバランスよく食べること。さらに工夫したければ、炭水化物の白米を雑穀米や玄米に変えてもいいですが、太っていてステーキもお腹いっぱい食べるのにご飯だけ玄米に変えるのでは意味がないので注意しましょう。そして、健康診断は毎年受けましょう。

タンパク質を摂る際には、肉に偏らず魚や大豆製品を取り入れながら、バランスよくいろいろな食品から良質なタンパク質を摂取してください。



大西 更年期の方は運動と食生活に気を付けて生活するのがポイントです。生活習慣病予防のためでもありますが、もう一つ、筋肉量が将来の認知症の発症に関係があるということが最近分かってきたんです。筋肉は老いてからつけようと思ってもなかなかつかないんですよね。内臓脂肪は加齢とともに増えるから防ぐ方法は少ないけれど、筋肉を減らさない努力はできるので、それなら筋肉をつけられて内臓脂肪がつきにくい食生活をするといいかなと思います。

そうそう、更年期世代の私が最近はまっているのはYouTubeで動画を見ながら運動することなんです!肩や足、お腹などの部位別、強度別、時間別にいろいろな動画があるので、子どものお弁当を作ってから出勤するまでの余り時間を利用して運動しています。こんなふうに、運動なんて、工夫次第で毎日のすき間時間に簡単にできるものですよ。



更年期女性の健康診断、オプションって必要?

ユミコ ちなみに健診を受ける際に、オプションを提示されることがあります。いつも、オプションを何か加えたほうがいいのかな、と悩むのですが、先生のおすすめはありますか?

大西 おすすめするオプションはあまりなくて「お好みでどうぞ」という程度です。例えば腫瘍マーカーなどをやったおかげでがんが見つかる人がいるかもしれないので、100%否定する必要はないのですが、かといって、がんがあれば絶対に分かるという精度のものでもないんです。マーカーの値が低いのにがんの人もいれば、マーカーが高いのにがんではない人もいる。全員にその検査をしても困るよね、っていう検査がオプションになっていると考えてください。やりたい人がいるから提供しているけれど、全員やるほどの根拠もないからオプションなのです。脳ドックもそうです。

脳ドックは、オプションで付けるとすごく高価なんですよね。で、脳ドックをやって何が分かるかというと「あなた、脳梗塞があったみたいよ」とは言えるんだけど、分かるのは過去のことで、未来の危険予測はできないんです。つまり脳ドックを受けても受けなくても血圧が高いから治療はしましょう、というだけ。ただ、ご家族に脳動脈瘤だった人がいて、動脈瘤が破裂してくも膜下出血を起こしたことがあるという場合は、動脈瘤があるかないかは大事な検査項目になってくる。そういう方には医者が脳ドックをすすめます。このように脳ドッグをやった方がいい人、やらなくていい人がいるからオプションになっているんですね。もしオプションをするべきかどうか迷ったら、お医者さんに聞いてもいいですよ。

オプションをつけなくても、普通の健診で異常値があったらいいチャンスだと思えばいいのです。そうするとお医者さんに行く口実ができるのだから、そこで不安を何でも聞いてください。病気が見つかれば、オプションだったら高い金額支払わなければならなかった検査も保険診療でできるようになります。なんだかちょっとお得に感じませんか?検査に引っかかったらお医者さんに相談する機会が与えられたと思えばいいんです。

ユミコ なるほど、異常値が見つかったときこそ前向きに受診するなんて発想、ありませんでした!

大西 そうなの。もし不安な健診結果が出てしまったら、その結果を握りしめてお医者さんに相談に行き、自分にどのくらい病気のリスクがあるのか聞いてみてください。



健康診断は「転ばぬ先の杖」。家族や仕事が大事な人ほど受けて 

ユミコ 更年期に定期的に健診を受けることは、心身ともにどんなメリットがあるのでしょう。

大西 健診は、転ばぬ先の杖みたいなもの。定期的に検査をして、自分の体を知っていればこんなことにならなかったのに。そう思わないために、40代、50代からの健診は大事に考えてほしいです。これから先もずっと元気に楽しく健康に暮らしたかったら健診を受けましょう

ユミコ 仕事のこと、家族のことにかまけてついつい自分の健康をおろそかにしてはダメということですね。

大西 そうです。やりがいのある仕事や、大切な家族を守れるのは、まず自分の健康があってこそ。体をメンテナンスするのも仕事や家事の一部だと思って、ご自身の健康にもっと目を向けてほしいです。お医者さんというのは困っている人を助ける仕事なので、やみくもに病気を怖がらずに不安なことがあったら相談に来てください。病気があるのは悪いことではありません。安心してなんでも相談できる主治医を探しましょう。

今を楽しく生きるために、自分の体をメンテナンスしよう!

ユミコ 最後に更年期女性にメッセージをいただけますか。

大西 私事ですが、去年3人の友人を病気で亡くしました。3人とも健診で引っかからない病気でした。そこから私自身、「人生何があるか分からない、明日死んでしまうかもしれないけれど、防げるものなら絶対に防いでおこう」と思うようになりました。「明日死ぬかもしれないから今日を精いっぱい生きよう」とはよくいいますが、身近でそんな別離をしてしまうと人生観も変わります。友達を亡くしたのは本当につらい経験でしたが、これまで以上に目の前にいる患者さんには絶対に健診を受けてほしいと思うようになりました。健診で引っかからない病気でさえ起こるんだから、健診で分かる病気になる人は本当に多いんです。

若ければ健康が当たり前と思えたかもしれないけれど、40代、50代になってくると、20代と同じ生活をしていると健康ではいられない人も出てきます人生を楽しむチャンスを逃すかもしれないし、病気が見つかったら手遅れということもあるかもしれない。健診の中身をあまりよく分かっていなくてもいいから、とりあえず受けておきましょうね。

ユミコ 健診を後回しにしてはいけないって、先生のお言葉でよく分かりました。家に帰ったら、早速健診の受診票を探して受けてきます。今日は本当にありがとうございました。


大西由希子先生
朝日生命成人病研究所附属医院で4月から新設される女性内科も担当。糖尿病内科・診療部長兼治験部長。日本糖尿病学会評議員・指導医・専門医。東京大学医学部医学科卒業。同大学附属病院、分院、日立製作所日立総合病院内科などを経て、朝日生命成人病研究所主任研究員、2006年より現職。糖尿病臨床および治療薬の開発、治験に従事。同医院は糖尿病、循環器および消化器疾患の専門医院。


ユミコ 
48歳。夫との2人暮らし。自営業をしながら、自分時間も楽しんでいる。2年半前から足のしびれや股関節の痛み、胃の不調を感じている。生理周期が短くなった影響で貧血や立ちくらみの症状があるほか、動悸や汗も頻発。冷え性もひどくなってきている。

ピックアップ記事

関連記事一覧