更年期世代に切実な「冬の便秘」。今日からできる対策でお腹スッキリ!

セルフケア


読者代表のヴィーナスが、更年期のお悩みを専門家に相談して解決する『お悩み解決隊』。今回は冬に便秘気味のアイコが、外科医・漢方医の今津嘉宏先生を訪ねました。今まではトイレで無理にいきんでいたアイコも、先生のアドバイスを聞いて、まずは生活を見直すことを決意。普段からの腸活の大切さを実感したようです。



女性ホルモンと季節のダブルパンチ!? 冬に便秘が増える理由

今津先生(以下、今津) アイコさん、それはお困りですね。確かに冬は気温が下がり、空気も乾燥します。夏より水分も摂りませんし、腹部も冷えやすいので、便が硬くなり、年齢にかかわらず便秘になりやすい季節ではあります。

診察していると、アイコさんのような更年期世代の方は、女性ホルモンの変化によって、便秘または下痢になる人が増えている印象がありますね。女性ホルモンの分泌が減り始める40代以降は、女性特有の臓器である乳腺、子宮、卵巣だけでなく、心臓、肝臓、腎臓の機能も変化していきます。それぞれの臓器は血管と神経でつながっており、お互いに影響を与え合っているため、便通に影響が出ることも多いのです。

今津 腸の働きは、交感神経と副交感神経のバランスによって調整されています。緊張したり、興奮したりすると、交感神経が優位に働き、腸は働きづらくなります。緊張や興奮の度合いが強い人や、緊張・興奮状態が長時間に及ぶと、便秘になりやすいのです。

仕事中は、交感神経が優位となっていますので便秘になりがちですが、特に女性は、中座することを遠慮してしまうため、男性よりも便秘になりやすいといえます。女性のみなさんには、ぜひ仕事の合間のトイレ時間を大切にしていただきたいです。

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まずは衣食住を整え、トイレ習慣を改善。便秘を解消するための心構え

今津 生活習慣病とは、生活習慣が発症の原因となる疾患の総称ですが、便秘も生活習慣病の一つといえます。そのため、「衣食住」を整えると、便通もコントロールできますよ。たとえば「衣」は、服を着ることで肌を守るだけでなく、体温調節の役割も果たします。暑い夏に熱中症にならないように衣類を涼しめに調節すれば、脱水による便秘を防げますし、寒い冬に体が冷えないように服を着ると、腹部が温まり、腸の働きが整います

また、便秘は腸が十分働いていないことを意味するので、腸内環境を整え、腸内細菌をコントロールできれば、便通だけでなく体重や免疫もコントロールできて、健康を維持できます。腸内細菌の力で、便通だけでなくガス(おなら)の臭いも調節が可能です。腸内環境のために、乳酸菌などの善玉菌や食物繊維が豊富な食品、発酵食品などを摂るといいでしょう。

今津 アイコさん、無理して便を出そうとしないほうがいいですね。誰しも赤ちゃんのときに、ご両親は排便習慣を何度も教育してくれていると思います。そのシンプルな排便習慣を思い出してください。トイレに座って無理にいきみすぎたり、トイレットペーパーでごしごし拭きすぎたりと、お尻に負担をかけても、便秘は解消できませんし、むしろ痔の原因になってしまいます。


早速トライしたい冬の便秘対策。食事や生活習慣の改善TIPS

今津 腸内環境を活性化させる「腸活」の方法をいくつかご紹介しましょう。そもそも男性も女性も加齢とともに腸内細菌数が変化し、徐々に便秘傾向になっていくものです。寒い冬は特にお腹を冷やさないように対策してください。


【食事】

●朝に温かいものをお腹に入れる
1日のうちで、体温が一番低くなるのが朝。起きたときに温かいものをお腹に入れることは、便通改善の大切なポイントになります。朝一番に白湯を飲むと体が温まり、血行が促進されるのでおすすめです。

●腸内環境を整える食材を摂る
食物繊維が豊富で腸内細菌を活性化するキノコや、腸内環境を整えるヨーグルトは、腸内環境を整え、便秘や下痢を改善する効果が高い食材。発酵食品は2種類以上の食品を組み合わせることで腸内細菌への作用が増すとされているため、メーカーが異なるヨーグルトを組み合わせたり、甘酒とヨーグルトを混ぜるのもよいでしょう。

●大豆を摂る
豆類に含まれるイソフラボンには女性ホルモンと同じ作用があり、便秘を含む更年期症状を緩和する効果が期待できます。ただし、過剰に摂ると遺伝子異常を起こす危険性があるため、摂取量は1日75mgまでを目安にしましょう(乾燥大豆なら約50g、ゆで大豆なら約100gがイソフラボン75㎎に相当します)。

●冷たい飲み物や食べ物を最初に摂らない
お腹を冷やさないように、食べる順番に注意する必要があります。
体の中心の温度を内臓体温、深部体温といいますが、この体温は体温計で測定する皮膚温よりも、1度ほど高くなります。食事の最初に冷たい飲み物や食べ物を消化管内へ入れると、一気に深部体温が下がるとともに、大事な臓器の温度も下がり、機能が低下してしまうので注意が必要です。ベジファーストを実践中の人も、便秘予防のためにはなるべく食事のはじめに冷たいサラダを摂らないようにしましょう。

●無理なダイエットをしない
更年期になると、女性ホルモンの変化によって、脂肪が蓄積しやすくなり、体重も増加しがちです。若いときと同じ量を食べていても、徐々に体重が増えてしまうので、「ダイエットしなくちゃ」と思う人も多いはず。しかし、無理なダイエットをすると、食物繊維が不足したり、水分不足になったりして便秘になりやすくなります。ダイエットの際にも、バランスの良い食事を心がけましょう。



【生活習慣】

●お腹を温める
冬は、体もお腹も冷えやすい季節。寒さで腸の働きが悪くなり、便秘になりやすいのです。白湯を飲んでお腹を体内から温めたり、おへその上に使い切りカイロを置いて温めたりする(低温ヤケドに注意)工夫が大事です。

●布団のなかでお腹のマッサージ
朝、布団から出る前にお腹をマッサージで刺激して腸を活性化しましょう。おへそを中心に、時計回りにお腹を数回マッサージすると、腸が活性化して便通が改善できます。お腹に刺激を与えることで、臓器の機能が刺激され、ぜん動運動が促されて便意が起こるのです。マッサージの圧の強さはお好みで。

●ストレスを減らして、心身のバランスを整える
心と体は、常にバランスをとっています。体が疲れているときは、精神的にも頑張ることができません。ストレスが強いと体も緊張で硬くなり、疲れやすくなります。ストレスは便通にも悪影響です。心身のバランスを整えて、体調管理、便通改善につなげましょう。

しっかり眠る女性



便秘が続いて苦しい…。医療機関を受診するタイミングとは

今津 食べたものが、消化吸収という過程を経て、体外へ排出されるまでに、長いと72時間前後かかります。つまり、4日以上便通がない場合は、体内で何か問題が起こっているのです。便秘の原因は、精神的ストレスかもしれませんし、寒い冬のせいかもしれません。あるいは、月経前だから、睡眠不足だから、または仕事が忙しいからというケースもありえます。常に自分の健康状態を把握できていると、原因も見えてくると思います。日ごろから自分の体調の変化をよく観察し、体調不良を感じたら医療機関に相談しましょう。

今津 医師は、患者さんの話をよく聞いて、生活の状況、食生活、排便状況等を確認した上で、診察をします。腹診といって、直接お腹に触れ、聴診器で音を聞いて、消化管の働きを確認します。一般的には簡単な薬を内服していただき、薬による体の反応を見ながら、消化管の状態を確認していきます。場合によっては、便検査、レントゲン撮影などを行うこともありますが、便秘だからといって、すぐに検査をすることはありません。





便秘対策をすると、これからの人生はどう変わる?

今津 便秘は、毎日重たい荷物をお腹に抱えて生活するのと同じ。重たい荷物を持って歩くと、足腰に負担がかかり、肉体的な疲労、ひいては精神的な疲労につながってしまいます。快食快眠快便といわれるように、健康な毎日を過ごすことが便秘の予防につながります。そのためにも、まずは腸内環境を整えましょう。便が毎日出るか、便の硬さはどうか、便の臭いはどうか。日ごろから便の様子を観察し、自分自身の健康状態を把握するよう心がけてください。

腸内環境が整えば、免疫力がアップし、健康な体をつくることができます。更年期は、精神的にも肉体的にもトラブルが起きやすくなる時期。更年期以降の人生を明るく過ごすためにも、便秘のない毎日を送って、健康な体を手に入れてくださいね。


今津 嘉宏先生
芝大門いまづクリニック院長
日本外科学会や日本胸部外科学会、日本消化器病学会をはじめ、さまざまな学会の認定医を務める。慶應義塾大学の外科で最先端の外科医療を経験したのち、慶應義塾大学病院の漢方外来で更年期障害などの女性特有の病気を通して漢方医学を学ぶ。現在は、患者一人ひとりに納得のいく治療をすることを目指し、芝大門いまづクリニックで外科学、栄養学、漢方医学の観点から総合的に患者を診察している。著書に『健康保険が使える 漢方薬の事典』(つちや書店)、『長生き朝ごはん』(ワニブックス)ほか。メディア出演も多数。

アイコ
43歳。夫と小学生~中学生の子ども3人の5人家族。子育てをしながらパート勤務をこなし、毎日忙しく過ごしている。2年前からホットフラッシュやイライラ、不安感、気分の落ち込みに悩む。最近では、物忘れや高血圧、白髪、抜け毛の症状も。

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