更年期の肩こり・腰痛はどうして起こる? 原因とすぐできる対処法を解説

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肩こりや腰痛は、更年期以外の時期にも起こります。しかし、更年期に肩こりや腰痛を訴える人は多く、筋肉や関節の痛みを感じる人も少なくありません。「肩こりくらいで……」と、やり過ごしがちですが、痛みの裏に狭心症や骨折などの病気が隠れている場合もあります。そこで今回は、更年期の専門医である東京科学大学の寺内公一先生に、更年期の肩こりや腰痛、筋肉・関節の痛みについて伺いました。

記事まとめ
●更年期の肩こり・腰痛は約7~9割が自覚している代表的な症状。
●肩こりを訴える50代の女性は、男性の2倍に上る。
●加齢や姿勢、運動不足などが重なるため、原因の特定は難しいことが多い。
●手指の関節痛も更年期に増え、エストロゲン低下との関連が示唆されている。
●ホルモン補充療法(HRT)は、関節痛の改善に有効とする報告がある。
●食事や運動、温活などのセルフケアも役立つが、つらい場合は医師に相談を。



更年期の肩こりや腰痛はどれくらいの人が感じている?

寺内先生(以下、寺内) 当院の更年期外来を受診されている患者さんを対象に、肩こり・腰痛の有無を調べたところ※1、「ほぼ毎日」は55.4%、「週3~4回」は13.3%、「週1~2回」は、18.6%いらして、合わせると87.3%となり、9割近い方が、肩こりや腰痛を感じていることが分かりました。

寺内 2004年に行われた地域住民を対象にした疫学調査※2も参考になると思います。この調査は、45~60歳の日本人女性を対象にしており、「疲れやすい」「集中できない」「イライラする」など、21の更年期症状を感じる頻度について調べています。

その項目に、「筋肉や関節の痛み」があり、これを「肩こりや腰痛」と読み取ると、「非常にある」と答えた人は5.2%、「かなりある」は15.7%、「少しある」は51%でした。合計すると約72%の方が肩こりや腰痛を感じており、肩こりや腰痛は、21項目中3番目に訴えの多い症状でした。


※1 Terauchi, et al. Evid Based Complement Alternat Med. 2014:2014:593560.
※2 Anderson, et al. Climacteric. 2004 Jun;7(2):165-74.



女性は男性の2倍肩こり!?

寺内 厚生労働省の調査によると、下図のように、よく見られる35項目の自覚症状のなかで、男女共に1位は「腰痛」でした。「肩こり」は、女性は2位、男性は「頻尿」に次いで3位でした。

出典:2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況(厚生労働省)



年代別に見ると、肩こりを訴える女性は、50代以降は男性の2倍近くいることが分かります。

出典:2025年(令和7年)国民生活基礎調査(k0087) 政府統計の総合窓口



腰痛を訴える人は、男女共に70代をピークに、年齢が上がるにつれて増えています。

出典:2025年(令和7年)国民生活基礎調査(k0087) 政府統計の総合窓口



肩こりや腰痛の原因は?

寺内 実は、これという確定的な原因は、よく分かっていません。例えば、ぎっくり腰のように、急性の腰痛であれば原因を特定しやすいのですが、慢性的な痛みの場合は、以下の複数の原因が複雑に重なり合っていると考えられます。


【慢性的な痛みの要因】
・筋肉・腱の柔軟性の低下といった加齢による変化
・姿勢の悪さ
・運動不足
・座りっぱなし


このことを示すように、慢性腰痛の85%は「非特異的腰痛症」(原因を特定することが難しい腰痛)となっています。

寺内 欧米人は肩こりを自覚することが少なく、肩こりは日本人特有の姿勢によるものではないかという考察があります。肩こりに関する文献は、日本以外ではほとんど見られません。



肩こりや腰痛の影に病気が隠れていることもある

寺内 肩こりや腰痛の原因の多くは、まだ明らかになっていません。しかし、更年期に現れる肩や腰の痛みの背景に、病気が隠れていないとは言い切れません。

例えば、下図は、肩こりや腰痛が現れる病気の一例です。このような症状が気になり、日常生活に支障がある場合は、医療機関を受診していただければと思います。



更年期に手指の痛みを訴える人も

寺内 はい。「手指の不調が現れやすい更年期。『メノポハンド』とは?」の回でお話ししましたが、私たちの更年期外来でも、手指の関節の痛みを訴える方は多い印象があります。

下図は、男性と女性における「手足の関節の痛み」を年代別に比較したものです。男女ともに、年齢が上がるにつれて手足の関節痛を訴える人が増えます。しかし、50代頃からは、女性と男性の差が大きく開き始めます。

出典:2022年(令和4年)国民生活基礎調査(厚生労働省)

寺内 はい。ただし、なぜ更年期に、股関節のような大きな関節ではなく、手指のような小さな関節が痛むのかは、分かっていません。

手指の第一関節が痛むヘバーデン結節などもそうですが、

・エストロゲンが減少すること。
・手指を長く使い続けてきたこと(例えば、ずっと手指に力が加わり続けてきた結果、軟骨が摩耗したり、関節が変形したりし始めること)。

こうした要因が重なると、痛みを強く感じるのではないかと理解しています。

手指の痛みについては、更年期だからとやりすごさずに、まずはリウマチ性疾患の有無を確認することが大切です。



エストロゲンが低下すると関節が痛くなる!?

寺内 「エストロゲンの低下」と「一般的な関節痛」には、関連があることが知られています。更年期の関節の痛みは、軽い炎症が起こることとも関係があると考えられます。

例えば、乳がんの患者さんで、卵巣から出るエストロゲンだけでなく、末梢組織で男性ホルモンから変換されるエストロゲンも完全に抑える治療をした方は、ほてり・のぼせ、ホットフラッシュといった血管運動神経症状のほか、関節炎、関節痛、筋肉痛が見られることが知られています※3。また、卵巣を摘出する手術を受けた方にも、同様の症状が見られます。

私たちが行った研究※4でも、更年期外来に通院している女性の56.1%に、毎日筋肉痛や関節痛が見られました。週3~4回痛みを感じる方は12.1%、週1~2回は17.0%で、合わせると85.2%の方に、筋肉痛や関節痛の症状が見られたことになります。



また、この研究で多変量解析を行ったところ、「女性の筋肉痛、関節痛」は、「握力の低下」と「不眠」に関連していることも分かりました。


※3 Paul E Goss, et al. N Engl J Med. 2003 Nov 6;349(19):1793-802.
※4 Terauchi, et al. J Psychosom Obstet Gynaecol. 2020 Mar;41(1):15-21.



ホルモン補充療法で関節痛がラクになる

寺内 有効とするエビデンスは多くあります。例えば、アメリカのホルモン補充療法の臨床研究WHI(Women’s Health Initiative)※5では、閉経後にホルモン補充療法を受けた人を対象に、1年後の症状を調べています。

ホルモン補充療法を1年継続した人は、ホットフラッシュや寝汗などに次いで、関節痛が有意に緩和されたことが報告されています。この結果は、イギリスの大規模調査※6においても、同様の報告があります。

また、別のイギリスの研究※7では、視点を変えて、閉経後にホルモン補充療法を中止した人の症状を調べています。

寺内 ホルモン補充療法を中止した人は、関節の痛みとこわばりが2.2倍になったと報告されています。


※5 Vanessa M Barnabei , et al.Obstet Gynecol. 2005 May;105(5 Pt 1):1063-73.
※6 Amanda J Welton, et al.BMJ. 2008 Aug 21:337:a1190.
※7 Judith K Ockene , et al.JAMA. 2005 Jul 13;294(2):183-93.



ホルモン補充療法は肩こりや腰痛にも有効か

寺内 エストロゲンの低下が肩こりや腰痛を引き起こすといったエビデンスは、今のところありません。私たちの更年期外来を受診されている患者さんにおいても、肩こりや腰痛だけを訴える方はほとんどいません。多くは、他の症状もいくつか抱えていらして、そのなかに肩こりや腰痛が含まれています。

更年期は、加齢や姿勢の悪さ、運動不足など、さまざまな要素が重なりやすい時期です。そのため、元気なときはやりすごせても、更年期にエストロゲンが低下し、体調が傾いたタイミングで、肩や腰の痛みがより気にかかる、ということはあると思います。

また、肩こりや腰痛の症状の強さ、どれくらい困っていらっしゃるかは、患者さんによって異なります。狭心症などのために肩が重く感じることもありますので、背景に大きな病気がないかを確認することも必要です。

日常生活に支障が出ている場合や、我慢できないほどの痛みがある場合は、早めに医師の診察を受けてほしいと思います。



更年期の肩こり、腰痛に効く漢方薬

寺内 漢方薬は、その方の証を診て処方しますので、あくまでも一例ということになりますが、代表的なものに下記の漢方薬があります。

肩こり…葛根湯(かっこんとう)、加味逍遙散(かみしょうようさん)
腰痛…五積散(ごしゃくさん)
関節痛…桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)

参考:ツムラヘルスケア製品情報サイト



漢方薬とは?

寺内 漢方薬は、植物や動物、鉱物などの生薬を、東洋医学の考え方に基づいて2種類以上組み合わせた薬です。

更年期の不調は、エストロゲンの減少に加えて、さまざまなストレスがいくつも重なり合い、それが掛け算のように影響し合って現れることが一般的です。また、通常の検査では異常が見つかりにくいこともあります。

そのため、複数の生薬の力で、心身のバランスを整え、総合的に不調を和らげていく漢方薬は、ときにつかみどころのない更年期症状の改善に適したアプローチといえます。

また、漢方薬は、乳がんや脳卒中の既往歴があり、ホルモン補充療法が受けられない場合や、患者さんご自身がホルモン補充療法を望まない場合に、治療の柱の一つとなります。

寺内 はい。証とは、その人の状態を表すものです。体質や症状の現れ方などには個人差があるため、同じ症状が現れていても、証が異なれば処方する漢方薬は変わります。

また、証が合っていないと効果は期待できません。証は生活習慣や加齢などの影響で変化するため、漢方薬の処方はその都度見直す必要があります。 

「漢方薬には副作用がない」と誤解されがちですが、漢方薬も薬ですので、副作用はあります。更年期外来では、患者さんのお話をよく聴いて、漢方薬のメリット・デメリットをお伝えした上で、治療を進めていきます。

寺内 代表的なものに、実証(じっしょう)」と「虚証(きょしょう)」があります。 

実証は、体力がある、筋肉質、血色がよく肌にツヤがある、声が大きい、暑がり、お腹を触ると張った感じがするといった特徴があります。

一方、虚証は、体力がない、弱々しい、細くて華奢、顔色が悪い、肌が荒れやすい、声が小さい、寒がり、お腹を触ると柔らかいといった特徴があります。

さらに、「気(エネルギー)・血・水」という、体内をめぐる漢方医学独自の3要素を考慮して分類します。具体的には、気虚(ききょ)、気滞(きたい)、気逆(きぎゃく)、血虚(けっきょ)、瘀血(おけつ)、水滞(すいたい)などのタイプに分かれます。

証の判断は自己流では難しいため、医師に診てもらうことをおすすめします。



おすすめのセルフケア

●食事・インナーケア

ホルモン補充療法によって関節痛が和らぐことから、5大栄養素をまんべんなく摂った上で、大豆製品に含まれる「大豆イソフラボンアグリコン」を摂るのもおすすめです。「大豆イソフラボンアグリコン」は、体内でエストロゲンと似た働きをします。

骨を丈夫に保つカルシウム・ビタミンD・ビタミンKも摂ると良いでしょう。

カルシウム…牛乳や乳製品はカルシウムの吸収率が高い食品です。骨の材料になります。
ビタミンD…皮膚に日光の紫外線が当たると体内で作られます。食品では魚やきのこ類に含まれています。カルシウムの吸収を助けます。
ビタミンK…納豆のなかでも、ひきわり納豆に多く含まれています。骨にカルシウムを蓄積する働きがあります。

【料理の例】キッコーマン ホームクッキング
・豆乳キムチ鍋
・3種のきのことバターのしぼ生焼き
・納豆と豆腐のひと口お焼き

●運動

腰や肩の痛みは、何が原因か分からないことが多いものです。

しかし、加齢と共に筋力が衰えて姿勢が悪くなったり、運動不足になっていたりすることはあります。運動療法は、肩こりや腰痛に対する一定の効果があることが分かっています。自分に合うものに取り組んでみましょう。

ただし、関節に痛みがある場合は、動かさないほうがいい場合もあります。痛みがどんどんひどくなる、いつまでたっても治らない、生活に支障がある場合は、医療機関を受診しましょう。

●ウオーキング

1日に、どれくらい体を動かしたり、歩いたりすると良いかの目安は、厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」が参考になります。

成人の身体活動の目安は、歩数なら1日約8,000歩以上です。運動する時間が取れない人は、通勤や買い物の際に1駅分歩いたり、エスカレーターではなく階段を使ったりして、運動量を増やしてみましょう。

●ストレッチ

どのような動きが良いかについては、例えば肩がこると、自然に肩を上げ下げしたり伸ばしたりすると思います。その動きは体が求めているサインともいえますので、気が付いたときに、こまめに取り入れていくのも一つの方法でしょう。

例えば、タオルの端を持ち、そのまま頭の上までゆっくり腕を上げて胸を広げ、その後、ゆっくりと頭の後ろに下ろすストレッチは、肩と肩甲骨の柔軟性を高めるのに役立ちます。

デスクワークや家事では、前かがみの姿勢が続きがちです。同じ姿勢が続かないように、心地よく無理のない範囲で、背中を反らしたり、丸めたりしてみましょう。

●筋トレ

1日のなかで、腕を上げる動作は意外と少ないものです。それは、腕を上げるための肩周りの筋肉を使っていないともいえます。ダンベル体操(ダンベルを持ち、腕や肩を上げ下げしたり、肩甲骨を寄せたりする)を日課にするのも良いでしょう。

●姿勢改善

ストレートネックは、肩こりや腰痛を悪化させるといわれています。パソコンの画面やスマートフォンを見続けたり、同じ姿勢を続けたりしていませんか。30分から1時間おきに、伸びをしたり首や肩を動かしたりしましょう。また、座りっぱなしを避け、こまめに体を動かす習慣を持つことも大切です。

厚生労働省は、「職場における腰痛予防対策指針」※9を示しています。こうした指針も参考にしてみましょう。


【腰かけ作業の作業姿勢について】

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イ 椅子に深く腰を掛けて、背もたれで体幹を支え、履物の足裏全体が床に接する姿勢を基本としましょう。また、必要に応じて、滑りにくい足台を使用しましょう。

ロ 椅子と太ももの間には、手指が入る程度のゆとりがあり、太ももに無理な圧力が加わらないようにしましょう。

ハ 膝や足先を自由に動かせる空間を取りましょう。

ニ 前傾姿勢は避けましょう。また、適宜、立ち上がって腰を伸ばすなど姿勢を変えましょう。

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●ツボ刺激

ストレスなどで緊張すると、体がきゅっと縮こまり、前かがみになって肩や腰に負担がかかりがちです。肩周りには、「肩井(けんせい)」や「欠盆(けつぼん)」など、肩こりに効くツボが集まっています。心地よい強さで指圧するほか、「あずきカイロ」や「蒸しタオル」などを肩や腰にあててじんわり温めたり、「お灸」をすえたりするのも一つです。

●睡眠環境ケア

首や肩に無理のない枕を選ぶことも、大事かもしれません。枕の選び方については、厚生労働省の「快眠のためのテクニック -よく眠るために必要な寝具の条件と寝相・寝返りとの関係」に、「敷き布団の表面から首の角度が約5度で、首のすき間の深さが一般に1~6cmの枕を選ぶと、首や肩への負担が少なく眠りやすい」と記されています。

●温活(冷え対策)

肩こりや腰痛がある場所を温めるセルフケアも有効です。温かい湯船につかると血流が良くなり、こりや痛みにつながる体内の老廃物や疲労物質が排出されやすくなります。

また、水圧で血管がほどよく圧迫され、リンパの流れも良くなります。そして、浮力が働くことで体重が約10分の1になり、筋肉や関節の緊張がほぐれてリラックスできます。お湯の温度は、ヒートショック※10の予防も兼ねて、体への負担が少ない41℃以下に、10分以内を目安に浸かりましょう。お湯に浸かりながら、優しくマッサージするのもおすすめです。


※9 参考「職場における腰痛予防対策指針」(厚生労働省)
※10 「交通事故死の約3倍?!冬の入浴中の事故に要注意!」(政府オンライン)

<この記事を監修いただいた先生>

寺内公一先生

寺内 公一 先生
東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 茨城県地域産科婦人科学講座 教授
▼詳しいプロフィールを見る

<インタビュアー>

満留礼子

満留 礼子
ライター、編集者。暮らしをテーマにした書籍、雑誌記事、広告の制作に携わる傍ら、更年期のヘルスケアについて医療・患者の間に立って考えるメノポーズカウンセラー(「NPO法人 更年期と加齢のヘルスケア」認定)の資格を取得。更年期に関する記事制作も多い。

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