呼吸が浅い人必見!更年期を克服する「吐くだけ」キホンの呼吸とは
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セルフケア

更年期世代のお悩みを、読者代表のヴィーナスが専門家に相談する『お悩み解決隊』。今回は47歳のヤヨイが、浅い呼吸の改善法を呼吸コンサルタントの大貫崇先生に相談しました。浅い呼吸は体調不良の原因と聞いたヤヨイは、大貫先生直伝の「きほんの呼吸®」を早速実践。1分間に22回という呼吸数が取材後に激減し、呼吸に対する意識が変わったようですよ。
忙しい更年期。気付かぬうちに、呼吸が浅くなっていない?
ヤヨイ 先生、最近なんだか息苦しさを感じることが多くて気になっています。更年期が原因なのかと思い、ご相談したくて…。
大貫先生(以下、大貫) ひょっとすると、息苦しさを感じるようになったのは、呼吸が浅くなっているからかもしれませんね。
呼吸が浅くなる大きな理由の一つはストレスです。更年期の女性は、必死に子育てしている方、お仕事を頑張られている方、介護を一生懸命されている方などが多く、社会的環境のなかで心身が限界に達しているイメージが、僕のなかにはあります。
家庭でも仕事でもストレスを抱え続け、疲労が蓄積して限界を迎えた頃に更年期が来てしまう。「もう無理」という気持ちになっているかもしれませんが、本当はずっと前から続いているしんどさに女性ホルモンの変化が加わり、心身の不調が起こっているというのが正解かな、と考えています。
呼吸の浅さは、自分ではなかなか気づけないものです。何らかの症状が出たときや、医療関係者など他人から「呼吸が浅いですね」と指摘されて初めて、自分は呼吸が浅かったんだと気づく方も多いのです。
浅い呼吸は倦怠感や免疫力の低下、イライラなどの心身の不調を招きますが、呼吸を改善すると、不安やうつ症状、高血圧、喘息といった症状に良い影響があることが分かっています。これらの良い影響は呼吸と自律神経の深いつながりによるものと考えられますが、それに加えて呼吸が変われば、睡眠や腰痛、肩こりが改善するはずです。
では、まずはヤヨイさんご自身の呼吸の状態からチェックしてみましょうか。僕が1分間測るので、何回吸って吐いてを繰り返しているかを数えて教えてみてください。ではいきますよ、スタート!
…ストップ!
ヤヨイ えーと、22回でした。
大貫 そうでしたか…。呼吸数が20回以上というのは、ちょっと心配になる回数ですよ。このチェック表をご覧ください。
【1分間の呼吸数の目安チェック表】
6回以下:理想的な状態
7回〜10回:合格点な呼吸
11回~19回:呼吸数少し多く呼吸が浅め
20回以上:呼吸数が多く、健康面に不安あり。呼吸がかなり浅い
ヤヨイ 私は20回以上なので、健康面に不安があり、かなり呼吸が浅いということですね…ショックです。

浅い呼吸が引き起こす、体のSOSとは
ヤヨイ 先生、浅い呼吸をしていると、そんなにまずいでしょうか?
大貫 呼吸数が多い…つまり、浅い呼吸をしている場合、血中の二酸化炭素が少なくなってしまうと考えられます。酸素が足りないと呼吸をしたくなる、と思いがちなんですが、実は体って二酸化炭素の量をモニタリングしているんです。二酸化炭素は、血液中の酸素を体の細胞に押し出す役割をしているので、浅い呼吸で二酸化炭素を排出しすぎると、細胞に酸素が行き届きにくくなると考えられます。その結果、疲れやすくなって、また呼吸が浅くなる…という負のループに陥ってしまいますよね。
さらに問題なのは、呼吸数が多いと交感神経優位になることです。呼吸数が多く、肺の伸び縮みする回数が多いと、脳は交感神経優位だと察知して、ストレスホルモン(ストレス刺激によって体内に放出されるコルチゾールなど)を出そうとします。呼吸数が20回以上の人は交感神経が入りっぱなしの状態で、ずっと走り続けているようなもの。これだと疲れますし、夜なら睡眠の質が落ちます。体が休めていないから、免疫も落ちてしまう…。健康にいいわけがありません。
また、僕の見たところ、ヤヨイさんはずっと口で呼吸していますよね。口呼吸をしていると、風邪などのウイルスや細菌が入りやすいですし、そもそも呼吸する際に最も重要で最も大きく動いているはずの“横隔膜”がうまく動かず、呼吸数も多くなる。肩が上がり、肩こりや頭痛、腰痛にもなってしまいますよ。いいことは一つもないので、鼻呼吸に変えたほうがいいと思います。
ヤヨイ 口で呼吸してしまうのは、鼻炎気味だからだと思うのですが…。
大貫 鼻炎だから口で呼吸してしまうのではなくて、口で呼吸してしまうから鼻炎になる、ということなんです。口呼吸が癖になっている場合は、意識して鼻から吸って鼻から吐く練習をしてみましょう。例えばハミングも鼻から吐く練習になりますよ。
ヤヨイ なるほど、ハミングですね!やってみます。
浅い呼吸が改善できる!「きほんの呼吸®」トレーニング3STEP
ヤヨイ 呼吸というと、“深呼吸”や“腹式呼吸”という言葉が思いつきます。そういう呼吸法を取り入れたら、浅い呼吸から卒業できますか?
大貫 「〇〇呼吸法」というような特別な呼吸法を習得する以前に、人間本来がするべき普通の呼吸の改善から始めることをおすすめします。この基礎となる呼吸を、僕は「きほんの呼吸®」と名付けています。適切な呼吸の仕方は、親からも教わらないし、小中学校でも教えてもらえないので、呼吸のあるべき姿を誰も意識していません。そもそも、基本的な呼吸ができていなければ、特別な呼吸法を取り入れても、それが効いているのかどうかも判断できませんよね。
ヤヨイ 確かに。先生の提唱されている「きほんの呼吸®」とはどんな呼吸なのでしょうか。
大貫 難しい呼吸法じゃなくて、「きほんの呼吸®︎」は基本的に「吐くだけ」なんです。では、「きほんの呼吸®」の3STEPをご紹介しますね。コツが分かると5分くらいでマスターできる簡単なテクニックです。「きほんの呼吸®」ができると、よく眠れるようになる、イライラしにくくなるなど、心身にうれしい変化が表れます。ホットフラッシュやだるさ、腰痛が改善したという声も聞きます。
【「きほんの呼吸®」の3STEP】
●STEP1 呼吸数を減らす
1分間の呼吸数チェックで呼吸数が多めと感じた方は、呼吸数を下げるトレーニングをしていきましょう。
①鼻から3秒かけて吸います。
②鼻から6~8秒かけて吐き切ってください。
③吐き切った状態で、3秒間、息を止めましょう。
これを1セットとして、3分間繰り返してください。最初のうちは、苦しいくらいがちょうど良く、何度か繰り返すとだんだん体が慣れてきます。
③で“3秒間息を止める”のは、息を吐き切った状態に慣れるため。みなさん吸うのは大好きなので、息を吐き切った状態に慣れないと、またすぐ吸ってしまうんです。起きているときに意識して呼吸数を減らせないと、寝ているときも癖で浅い呼吸を繰り返してしまいがち。睡眠中にも実践できるように、まずは「きほんの呼吸®」を体に覚えこませましょう。ちなみに、最初は口をすぼめて時間稼ぎしながら息を吐くのがおすすめです。慣れてきたら鼻で吐いてみましょう。
●STEP2 呼吸の際、胸とお腹が両方動くようにトレーニングする
①あおむけに寝て、胸とおへそに手を置きます。
②息を吸ったときに胸とお腹の両方が膨らんでいるかチェックしましょう。
③息を吐くときにも、胸とお腹の両方がしぼんでいるか確認してください。
一見、簡単そうに見えますが、8割の人はお腹だけ、1割の方は胸だけを引き上げてしまっていて(パラドックス呼吸)、両方がいい感じに動く人(シンクロ呼吸)は残りの1割しかいないんです。息を吸ったら、同じぐらい胸とお腹が膨らむようになるまで練習してください。
ポイントは、胸から全部空気が抜けるまで吐き切ることです。次に息を吸ったときに、胸とお腹が両方動くことを確認できたら合格です。


●STEP3 肋骨を下げる
更年期女性によく見られるのが、仰向けに寝たときに左右の肋骨が2つの山のように盛り上がっている状態です。内臓脂肪が多い人にもこの傾向が見られます。
①あおむけに寝て左右の出っぱった肋骨の上に手を置く
②鼻から軽く吸って
③口をすぼめながらゆっくり8秒かけて吐きます。この際胸から空気が抜けて肋骨が下がっていきます。
④吐き切ったら下がった肋骨のまま3秒止めます。
⑤肋骨を下げたまま鼻から吸います。
ちょっと難しいかもしれませんが、肋骨が下がると胸から骨盤にかけてお腹をさすっても平らになっているはずです。
さらに肋骨を下げられるようになると、しっかり息が吐けることになるので、ドーム状の形の横隔膜(お腹と胸の間にある最重要呼吸筋)がちゃんと上までドームの形を作れるようになります。人が1日に呼吸する回数は約2万回。つまり、呼吸数が多くていつも吸った状態が続いて横隔膜が下がりっぱなしだと、1日に約2万回も横隔膜の下で正対しているはずの骨盤底筋群が押し下げられることになり、尿もれの原因の一つになってしまいます。つまり、息が吐けて横隔膜が上がった状態が続けば、骨盤底筋群への負担が減って、尿もれ症状の改善にもつながります。息を長く吐きながら、肋骨が下がっているか確認しましょう。くれぐれもお腹だけを凹ますことがないようにしてください。
家でリラックスしているとき、電車に座ってのんびりいるときなど、呼吸しながら、肋骨を触ってみて平らかどうかチェックするといいと思います。
▼『きほんの呼吸®』STEP1~3 を動画でチェック!
●番外編 風船を使ったトレーニング
①風船をくわえ、鼻から空気を吸って口から息を吐きながら風船を膨らませます。
②空気を吐き切った後に2、3秒息を止めます。
③風船をくわえたまま鼻から息を吸って、口から空気を吐き、風船をさらに膨らませていきます。
これを繰り返して、風船をどんどん大きく膨らませてみてください。風船に口をつけたまま再び鼻から空気を吸う際、舌を口蓋(口の中の上側の壁)にしっかりと当てておくことで空気の逆流を防ぎます。また風船を膨らますときには、頬の筋肉も使って空気をバッと入れるようにすると、顔や口もとのたるみやほうれい線の改善に効果があります。ちゃんと舌が使えていたら、将来的には嚥下や咀嚼といったところに役立つので誤嚥予防にも有効と考えています。
なお、100円ショップの風船のゴムは硬めなので、素材の良い柔らかいゴムを使った風船のほうが膨らませやすいです。
ヤヨイ 風船トレーニングは面白そうですね!口もとのたるみや、ほうれい線の改善と聞けば、やるしかありません!(笑)
浅い呼吸を整える、+αのテクニック
ヤヨイ そのほか、浅い呼吸の改善にいい情報があればお聞きしたいです。
大貫 分かりました。それでは「きほんの呼吸®」にプラスすると良いテクニックをお教えしますね。
●みぞおちをほぐす
「きほんの呼吸®」のウオーミングアップとして、みぞおちの頂点あたりの骨を指でぐりぐり押して、腹直筋を2~3分ほぐしておきましょう。最初のうちは痛く感じると思いますが、ぜひほぐしておきたい筋肉なので自分に厳しく(笑)やってみてください。すると、つっかえていたお腹の筋肉がほぐれて肋骨がうまく下がるようになって、フッと力が抜けて息が吐けます。腹直筋をあまり使わずに肋骨が下げられるようになってくると、ぐりぐり押してもあまり痛みを感じなくなってきますよ。

みぞおちの頂点あたりの骨のキワを押す
●鉄棒にぶら下がる
ぶら下がることは呼吸にとても良いので、公園の鉄棒やぶら下がり健康器などにぶら下がって、体を伸ばしながら呼吸をしてみてください。足が少し床についていても大丈夫。ひざを曲げて背中を丸めながら30秒ほど呼吸すると、広背筋が伸びます。広背筋は体の後ろから息を「吸わせてくれる」筋肉です。横隔膜が使えるようにぶら下がってみましょう。片手ずつ鉄棒にかけて伸ばすのもおすすめです。

●ウオーキングをする
ただウオーキングをするのではなくて、肋骨が下がっている状態で歩いてみましょう。それができると、左足に乗ったら左から空気が押し出され、右足に乗ったら右足から空気が押し出され、ポンプ機能のようになって自然と良い呼吸が繰り返されます。
できれば雑踏のなかを歩くのではなく、森のなかや公園など、日光を感じながらリラックスして歩けると、副交感神経優位になります。歩くとセロトニン(“幸せホルモン”と呼ばれる神経伝達物質)が分泌されますし、呼吸も改善するので、ぜひ歩きましょう。

●安眠のために目を閉じて呼吸してみる
寝る前に、「きほんの呼吸®」のSTEP1を目を閉じて行うと不眠対策になります。
やみくもに呼吸するのではなく、息を吐くときには1、2、3、4、5、6と順に数えて、3秒止める際は映画が始まる前のカウントダウンのイメージで3、2、1と数えます。吸う際は特に何も数えなくて良いです。こうして寝る前に呼吸を整えると、睡眠中も呼吸が浅くならずに安眠することが期待できますよ。
●抱き枕を使う
呼吸のためには、丸くなって寝る姿勢が一番。そこで、首の部分だけ高くなっている枕や、丸くなって眠れる抱き枕を使いましょう。顎を引いて胸を張ってお腹をへこますというのは、呼吸にとっては悪い姿勢なので要注意。
●ほどほどにグッズを取り入れる
呼吸が整うためのグッズがあれば取り入れてもOKです。アロマでリラックスするのも良いでしょう。ただ、グッズに頼るばかりでなく、自分で浅い呼吸をしないように心がけることが何よりも大事です。

浅い呼吸が改善すれば、10年後の心身のしんどさが変わる!
ヤヨイ 今まで、特別な呼吸法を習得しないといけない気がしていましたが、普段の呼吸を改善するのが先だったんですね。「きほんの呼吸®」を実践できれば、この先の人生は変わりますか。
大貫 “更年期は第2の人生の始まり”ともいわれます。今から上手に呼吸できるようになれば、きっと将来、10年後の自分から感謝されるはずですよ。病気の予防や体型の維持につながる上、心身のしんどさも変わると思います。実際、更年期世代の方で「きほんの呼吸®」を実践したら、更年期特有の症状が楽になったとか、よく眠れるようになったという人がかなりいらっしゃいます。特別な呼吸法に目を向ける前に、まずは人間の本来あるべき呼吸を取り戻すことから始めましょう。
そうそう、ヤヨイさん、「きほんの呼吸®」を学んだ今、もう一度1分間の呼吸数を数えてみてください。22回だった最初と比べて、きっと呼吸数が減っているのではないかと思います。
ヤヨイ …ほんとだ、鼻呼吸を心がけながら呼吸数を数えたら、12回に減っています!しかも、もう心がセカセカしていません。うれしい!
大貫 今の時代、皆さんつねに時間に追われてセカセカしているところに、環境が変化するとさらにイライラが追加される状態ですよね。朝起きたときからセカセカしていることもありませんか? まずは普段の呼吸を改善して、自分の体をセカセカ状態から解放しましょう。例えば電車に乗っているときでもいいので、1分間だけ自分の呼吸数を数えてみる。そして、呼吸数を1分間に6回まで減らせるよう、「きほんの呼吸®」のトレーニングを実践してみてください。今日から浅い呼吸を改善し、より良い人生を過ごしてくださいね。
ヤヨイ 鼻呼吸や肋骨に意識を向けながら、「きほんの呼吸®」のトレーニングを続けていこうと思います。先生、今日は本当にありがとうございました!
<この記事を監修いただいた先生>

大貫 崇 先生
呼吸コンサルタント:株式会社BP&CO.代表、「呼吸専門サロン ぶりーずぷりーず」店主
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ヤヨイ
47歳。中学生の子どもとの2人暮らし。バツイチのシングルマザー。子どもに手がかからなくなってきたので、仕事でキャリアアップに励んでいる。4年前から肩こりや倦怠感、目の疲れ、汗、イライラがひどくなってきて、肌のシワやシミも気になっている。