更年期の小ジワ対策、スキンケアと生活習慣の正解を教えて!

セルフケア


その道の専門家に更年期のお悩みを相談して解決する「お悩み解決隊」。今回のテーマは小ジワです。写真で笑顔の自分を確認するとき、鏡を覗いたとき、更年期世代が気になってしまうのが目もと口もとの小ジワ…。いてもたってもいられなくなった47歳のヤヨイが、皮膚科専門医の川村都美先生に、今日からできる小ジワ対策について伺います。



どうして更年期に小ジワが増えるの?

川村先生(以下、川村) そうですね。更年期以降に小ジワが目立ち始める主な原因は、①エストロゲンの減少による、肌のコラーゲンの減少 ②乾燥 ③蓄積された紫外線 の3つが考えられます。詳しくご説明しますね。

更年期世代は女性ホルモンのエストロゲンの分泌量が低下してくることはご存知のとおりですが、エストロゲンは「美肌ホルモン」とも呼ばれていて、肌の水分量を増やしたり、コラーゲン線維の産生を促進したり、肌の新陳代謝を促進する働きがあります。エストロゲンの減少により新陳代謝が落ちた更年期以降の肌にはシミが発生しやすくなりますし、コラーゲン線維の産生が衰えた肌にはたるみが、肌の水分量が足りなくなった肌には小ジワが発生することがあります。そしてそもそも、長く紫外線を浴び続けた更年期のお肌は、水分保持機能が低下しているので、乾燥小ジワができやすいんです。

こうしてできた小ジワは、目じりや目の下、口元など皮膚が薄く皮脂の分泌が少ないところにできやすく、見た目が老けた印象になりがちです。放っておくと深いシワになってしまうので、早めの対処が大切なのです。

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小ジワケアに大切なステップは、洗顔と保湿

川村 小ジワのケアには洗顔と保湿が大事です。

まずは洗顔で皮脂を取りすぎないようにしましょう。このとき、肌をこすらないように、優しく洗うこと。肌をこすってしまうと、肌の一番表面にある角層がダメージを受けます。角層はたった0.2mmの薄さしかないので、こすると角質が剥がれやすくなり、肌の保湿に大切な皮脂膜も剥がれてしまいます。その結果、肌のバリア機能が弱まって、乾燥などの皮膚トラブルを起こしやすくなってしまうんです。

また洗顔後に保湿する際も、化粧品をこすらずにたっぷりつけるようにしてください。保湿をしたうえで、遅くなったターンオーバーを早めてくれるレチノール含有化粧品や肌悩みに合ったエイジングケアの成分が含まれている化粧品を使用したりするのもいいですね。例えば、肌をこすったことで肝斑(頬やあご、口のまわりにできる、左右対称のしみのこと)のができてしまっているなら、トランサミン配合の化粧品を使用してみたり、アンチエイジングとして幹細胞培養上清液がプラスされたコスメを使用してみたりするのも良いですよ。あとは、外出時の日焼け止めも忘れないようにしましょう。


どんな成分があるといいの?小ジワケアの商品選び

川村 そうなんです。例えば、ニールワン、レチノール、ナイアシンアミドといった成分が、シワに良いとされています。


●ニールワン
日本で初めて、厚生労働省によってシワの改善効果が認められた成分。

●純粋レチノール
真皮構造の再構築、肌の水分量アップ、ターンオーバー促進などの効果によってシワを改善する成分。

●ナイアシンアミド
コラーゲンの生成を促し、肌内部から押し上げるようにシワを改善する成分。ニコチン酸アミドとも呼ばれ、シワ改善効果のほかにも、肌荒れや美白有効成分として、医学部外品の承認を得ています。

川村 分かりました。それでは、どんな洗顔料や化粧水などを選べばいいか、お伝えしていきますね。


●洗顔料
洗顔料は皮脂を取りすぎず、こすらなくても洗顔できる、肌に優しいものを選ぶのがいいでしょう。洗顔で皮脂を取り過ぎてしまうと、肌のバリア機能が壊れやすくなり、後から保湿成分を補っても、十分な潤いを保てなくなります。この観点からいくと、クレンジングはクリームクレンジングがおすすめW洗顔の必要がないクリームクレンジングやミルククレンジングだと、なおベターです。
また、目元にウォータープルーフタイプの化粧品を使っている場合は、こすらずにポイントメイクを落とせるよう、アイメイク専用リムーバーを使用してみてください。

●保湿(化粧水、乳液、クリーム、アイクリーム、美容液)
保湿には、エイジングケアをしてくれる成分が入っているものを選びましょう。各コスメブランドが競ってより良いものを開発しているので、じっくりと検討したいですね。
最近流行っている幹細胞コスメも良いですよ。幹細胞コスメとは、幹細胞培養上清液が含まれている化粧品のこと。幹細胞培養上清液には成長因子やサイトカインといわれる物質が入っていて、表皮幹細胞や真皮幹細胞に働きかけて、遅くなったターンオーバーを正常に戻してくれます。そして、真皮のコラーゲンやエラスチンなどの弾力をつかさどるたんぱく質や、ヒアルロン酸を増加させてくれるんです。

●マスクやパックのスペシャルケア
ときにはマスクやパックなどのスペシャル保湿ケアも取り入れてみましょう。幹細胞培養上清EGF(上皮成長因子。新陳代謝を活性化させる働きがあり、肌の老化予防が期待できます)などが入っているものがおすすめです。


小ジワ対策に今日から始めたい、洗顔法と保湿法

川村 では洗顔法と保湿法をご紹介しますね。大事なのは、小ジワ撲滅のために、お手入れのときに「肌をこすらない」ことです。

●洗顔法
汚れは、こすって落とすのではなく浮かせて落としましょう。手には力を入れず、優しく圧をかけずにクレンジングを肌になじませ、汚れが浮き出たら32~34℃のぬるま湯で丁寧にすすいでください。クレンジングを肌になじませて、すすぎ終わるまでの時間は1分ほどが理想。クレンジングをつけて肌をずっとクルクルさせるのは、肌の摩擦になるので厳禁です。
なお、洗顔後にさっぱりした洗いあがりを感じたり、肌が突っ張っているように感じたりするのであれば、洗顔料で皮脂を取り過ぎています。クレンジング剤、洗顔料を見直しましょう。

●保湿法
指だけでのばして塗ろうとせず、化粧品をまず手のひら全体に広げてから、手のひらと指全体を使って肌を優しく包むように、こすらず肌に置くようにつけてください
化粧品を使う順番も大事です。水溶性で油分が少ないものからつけていき、油分が多いものは最後につけます。
眼の周りには、アイクリームの使用をおすすめします。アイクリームもこすらないように、肌に「塗る」のではなく肌に「置く」ように塗っていきます。どうしてものばさなければならないときは、指に力を入れず、肌の上を滑らせるように動かしてください。


人に見せたくない小ジワは、メイクでどう隠す?

川村 小ジワが気になる方には、ベースメイクに気をつけていただくようアドバイスしています。下地やファンデーションを厚く塗らないことが大切ですよ。


【小ジワ対策のメイク法】

●メイクの前に保湿をしっかりと
肌が乾燥していると、メイクが崩れやすく、よれてファンデーションがシワにたまってしまいます。そのため、メイクする前の保湿が大切。保湿するときには、目のきわ、口のきわに加えて、現在シワになっている部分を溝がなくなる方向に伸ばし、シワのなかまでしっかりと保湿しましょう。

●下地やコンシーラーを厚く塗らない
化粧下地は、塗りすぎるとかえってシワが目立ってしまいます。とくに目元は動きが激しいためにメイクがよれやすい箇所。下地やコンシーラーは薄塗りを心がけてください。肌の凹凸やくすみなどをカバーし、ファンデーションのノリを良くするプライマー(化粧下地の一つ)を使用するのもおすすめです。

●ファンデーションはリキッドタイプやクッションタイプを
ファンデーションはパウダーより、乾燥肌、脂性肌、混合肌とオールマイティーに対応できるリキッドタイプやクッションタイプがおすすめ。水分を多く含んでいるので、肌への密着度が高く、乾燥から守ってくれます。崩れも少ないので、ファンデーションがシワのなかにたまる心配もありません
リキッドファンデーションやクッションファンデーション以外を使いたいなら、肌質とファンデーションの相性を考えることが大事。脂性肌なら油分が少ないパウダーファンデーション、乾燥肌には油分の多いクリームファンデーションもOK。混合肌なら、油分が気になるところにポイントでパウダーファンデーションを使うなど、臨機応変に使い分けてください。

●ファンデーションは薄く塗ること
ファンデーションをつけるときは、スポンジにファンデーションを少量取って、肌にこすりつけず、少しずつ薄く置くように塗っていきましょう。パウダーなら、クリアタイプのものを薄くつけること。ファンデーションの厚塗りはNGですよ。

●目もとや口もとはファンデーション使いに注意
目もとや口もとギリギリまでファンデーションを塗らないようにしましょう。ファンデーションをどこまで塗るかについては個人差があるので、鏡のなかで自分のシワを確認しながら、シワが目立ちにくい塗り方を探してみてください。
あとは適度にハイライトを使うといいですよ。小ジワの場所から視線をそらすために、頬骨の高いところよりちょっと外側にツヤを出すのも一つのテクニックです。

●アイシャドウ、グロスはテクスチャーが大事
小ジワが気になる場合には、キラキラするアイシャドウや、テカテカ光るグロスの使い方に注意が必要です。どちらも、小ジワの上に塗ると、小ジワを余計に目立たせてしまうので気を付けてください。


日常生活に潜む、小ジワのNG習慣。注意するポイントは?

川村 活性酸素は、体の細胞を酸化させます。肌の弾力を保つコラーゲンやエラスチンも活性酸素により酸化されると変性しますし、活性酸素はコラーゲンやエラスチンの生成を阻害します。コラーゲン、エラスチンが減少すると、肌はハリが保てなくなって、シワやたるみができてしまうんです。

肌の酸化を防ぎたいなら、できるだけ酸化の原因をつくらないこと。そのためには、紫外線や喫煙、アルコール、睡眠不足に注意するなど、無意識にやっている生活習慣を見直しましょう


【肌を酸化させてしまうNG習慣】
・紫外線
・乾燥
・ストレス
・肌の摩擦
・喫煙
・過剰なアルコール摂取
・化粧を落とさないで寝る
・甘いものの食べ過ぎ
・睡眠不足
・たんぱく質・ビタミン・ミネラル不足の食生活
・力を入れた肌のマッサージ
・美顔ローラーで肌をこする

川村 ちなみに、今挙げたNG習慣のなかでも、特に気を付けてほしいのは以下のような習慣です。


【特に気を付けたいNG習慣】

紫外線対策をしていない
数分の洗濯物干しくらいなら、近所の買い物くらいなら、とUVケアをしないで外に出る人も多いかもしれませんが、紫外線は肌の酸化・老化の一番の原因。紫外線を浴び続けると、活性酸素が発生して肌の老化が進み、水分保持機能が低下するため、日焼け止めは忘れずに外出時には、帽子や日傘などのUV対策をしましょう。

●乾燥
小ジワには乾燥が大敵。肌が水分不足にならないように、化粧品でしっかり保湿することが大切です。化粧品だけでなく、部屋の加湿にも気を配りましょう

●ストレス
強いストレスがかかると、ストレスホルモンが出すぎて様々な肌トラブルを起こします。深呼吸や瞑想、適度な運動、趣味を楽しむなど、リラックスした時間を持ちましょう。そして十分な睡眠と十分な栄養をとり、規則的な生活を心がけてください。

●喫煙・アルコール
喫煙は、たばこ1本で25~100mgのビタミンCを破壊します。
また、アルコールを飲むと消化管からのビタミンB1吸収機能が低下します。さらにアルコールを分解するためにビタミンB1の必要量が増加するので、ビタミンB1不足になることがあります。喫煙やお酒が好きな方は、ビタミンB1、ビタミンCを積極的に摂りましょう。

●表情筋トレーニングやマッサージ
表情筋トレーニングはシワを悪化させます。肌をこすらず、リンパの流れに沿って目のまわり、口まわりを押さえていくのは良いと思いますが、強く押さえ過ぎないように注意が必要です。

乾燥した花


小ジワが気になる人は、どんな栄養素を摂るべき?

川村 食生活はとても大事です。小ジワはもちろんのこと、年齢肌にいいとされる栄養素を挙げますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。


【小ジワ対策のために摂りたい栄養素】

●コラーゲン
たんぱく質として、肌のコラーゲン線維の栄養素になります。
(多く含まれる食品…ゼラチン、鶏の手羽、フカヒレ、牛すじ、鶏皮など)

●鉄分
人体に必要なミネラルの一種。コラーゲンの生成に欠かせません。
(多く含まれる食品…レバー、赤身肉、カツオやマグロなどの赤身魚など)

抗酸化ビタミン
・ビタミンA
肌のターンオーバーを早めてくれます。
(多く含まれる食品…レバー、人参、ウナギ、モロヘイヤ、ほうれん草など)
・ビタミンC
皮膚や粘膜の健康を維持する働きや、抗酸化作用を持っています。
(多く含まれる食品…ピーマン、キウイ、ブロッコリー、菜の花など)
・ビタミンE
脂質の酸化を防ぐ抗酸化作用を持っています。
(多く含まれる食品…卵、アーモンド、オリーブオイル、アボカド、大豆、かぼちゃなど)

●ビタミンB群
・ビタミンB1
肌細胞のエネルギー産生を活性化して肌細胞の分裂をスムーズにします。
(多く含まれる食品…豚肉、赤身肉、全粒粉物、ナッツ、大豆、カリフラワーなど)
・ビタミンB2
肌のターンオーバーを早めてくれます。
(多く含まれる食品…レバー、肉類、牛乳・乳製品、卵など)

●オメガ3脂肪酸
肌の保湿成分のセラミドの原料でもあり、ターンオーバーを整えてくれます。
(多く含まれる食品…サバ、イワシ、イクラ、タラコなど)

イソフラボン
女性ホルモン・エストロゲンの働きを補い、肌の新陳代謝を促進してくれます。
(多く含まれる食品…納豆、豆腐、油揚げ、きな粉など)

●食物繊維
腸内環境を整えてくれます。
(多く含まれる食品…玄米、納豆、豆類、さつまいも、こんにゃく、ごぼう、キャベツ、きのこ類など)

●セラミド
肌の潤いを保ってくれます。
(多く含まれる食品…米、生芋こんにゃく、小麦、大豆、牛乳、ヨーグルト、ほうれん草など)

●ポリフェノール
抗酸化作用を持っています。
(多く含まれる食品…ブドウ、リンゴ、ベリー類、玉ねぎ、なす、大豆、ピーナツ、ココア、ワインなど)

川村 そうですね、ポリフェノールは抗酸化作用が強いため、活性酸素などの有害物質を無害な物質に変えてくれる作用があります。そのため、肌のコラーゲン、エラスチンの変性を防ぎ、小ジワを予防できるんですよ。

川村 ヤヨイさん、くれぐれも飲み過ぎには注意してくださいね(笑)。

いろいろと肌に良い栄養素をお伝えしましたが、逆に摂り過ぎに注意したいのは、脂肪と糖分です。脂肪を多く摂ると、体内で脂肪が酸化してしまいます。また、糖分を多く摂ると、糖化が起こりやすくなり、肌の真皮にあるコラーゲンやエラスチンを破壊し、肌の弾力がなくなりシワができるという悪循環につながります。


小ジワ対策は積み重ね。10年後の若見えのために今すぐ始めよう

川村 女性にとって更年期は、今まで経験しなかった体の変化が起こる時期です。体の変化とともに心も変化し、更年期うつになる方もいらっしゃいます。鏡のなかの自分の老けた顔が気になると、なんだか気持ちも落ち込みますよね。でも、見た目を若々しく保てれば、心にもハリが出て、自分に自信がつき、心身の安定につながると思います。

更年期世代から小ジワ対策を始めれば、深いシワになることを防いだり、遅らせたりすることができますし、たるみ予防、シミ予防にも十分間に合います。10年後のお顔もきっと変わると思いますよ。

川村 小ジワの対策は、やれば結果が必ず出ます。40歳までのお顔は、生まれつき持っているものの影響がかなりあると思いますが、更年期以降は、その人の努力によって差が出てきます。小ジワ対策は「日々の積み重ね」です。日々のケアに何をしていいか分からなくなったときには、美容皮膚科を受診してみてください。

川村 都美先生
とみ皮膚科クリニック院長。日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医。
一人息子のアトピー性皮膚炎に悩んだ経験から、専業主婦から一念発起して皮膚科医を志し、北里大学医学部に進む。その後、北里大学病院皮膚科・独立行政法人国立病院機構横浜医療センター皮膚科での研修、月岡医院の勤務を経て、静岡県富士市にとみ皮膚科クリニックを開院。保険診療と美容診療、二つの側面から患者さんの皮膚の悩みに向き合っている。

ヤヨイ
47歳。中学生の子どもとの2人暮らし。バツイチのシングルマザー。子どもに手がかからなくなってきたので、仕事でキャリアアップに励んでいる。4年前から肩こりや倦怠感、目の疲れ、汗、イライラがひどくなってきて、肌のシワやシミも気になっている。

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