心が落ち着く更年期のヨガで、自分に向き合う

セルフケア


更年期のお悩みを、読者代表のヴィーナスが専門家にインタビューして解決する「お悩み解決隊」。今回は5人家族で毎日が忙しいアイコが、リラックスのためのヨガにチャレンジします。教えてもらったのはヨガと瞑想指導者の今津貴美先生(以下、キミ先生)。トイレや子どもとの時間もヨガにつながると聞いて、アイコは「忙しい」と焦る心をまず変えなくちゃ、と悟ったようです。

基本を知りたい、やってみたい!更年期に始めるヨガ
動きがゆるやかで精神が整う。ヨガは更年期に向いている
時間がなくてもリラックス。トイレタイムがヨガにつながる!?
早速挑戦してみよう!ヨガのポーズ3選と呼吸法、瞑想
ファッションとグッズで、より快適にヨガを楽しもう
変化が実感できるまで頑張る!ヨガを続けるコツ
更年期のヨガで、自分に向き合う時間を大切に


基本を知りたい、やってみたい!更年期始めるヨガ

アイコ 私は家族も多く、慌ただしい毎日を過ごしているので、最近大人のリラックスとしてのヨガに心惹かれています。ヨガ初心者の私に、ヨガの基本的な考え方を教えてください。

キミ先生(以下、キミ) 分かりました。ヨガの9割は哲学と瞑想、1割が瞑想のための体づくりです。ヨガのゴールは、環境に依存する幸せではなく、どんな環境や条件下でもブレない幸せを確立し、自然と調和する境地である「悟り」のためのメソッドと考えてください。ポーズができたかどうかにとらわれず、気楽に行えばいいですよ。

アイコ 私にもできますか?体が柔軟でないとヨガができないのではないかと、不安もあるのですが。

キミ 大丈夫ですよ、安心してください。ヨガはどんな方でもできますし、ケガや病気をしていても、ご本人のできる範囲で行っていただけます。ポーズ中はゆったり呼吸し、無理をしないこと。体の感覚を観察すること。ポーズによって湧き上がる感情や思考を見つめる時間を大切にすればいいのです。

アイコ 初心者の場合、ヨガの本や動画を見ながら自宅でもできますか?

キミ もちろんヨガは自宅でも可能です。ただ、型の間違いに気づけないことが多いので、慣れるまでスクールで先生に見てもらうのが安心ですね。間違えた型のまま、体のクセになって身についてしまうと、直すのにかえって時間がかかることがあるんです。ヨガでケガをすることはめったにありませんが、間違った方法を続けた結果、体に痛みが出ることも。呼吸法についても、お腹や胸、呼吸のスピードは、スクールに通ったほうが習得しやすいです。初心者だからこそスクールで基本を教えてもらう、という選択肢も考えてみてくださいね。


動きがゆるやかで精神が整う。ヨガは更年期に向いている

アイコ ヨガのゆっくりとした動きやリラックスできる雰囲気は、私たち更年期世代にぴったりな気がしますが、本当のところどうなんでしょう。

キミ アイコさんがおっしゃるように、ヨガの呼吸法や瞑想は副交感神経を優位にするので、更年期の方にはぜひチャレンジしていただきたいです。

更年期に起こる様々な症状のなかでも、ほてりや発汗、動悸は交感神経優位の症状です。ヨガは、この興奮を抑えて副交感神経を優位にするのです。ヨガを続けると、以下のような症状が軽減されるとされています。

・冷え性
・肩こり
・めまい
・頭痛
・睡眠障害
・不安障害
・うつ病


更年期世代が抱えがちなストレスも、交感神経優位の状態。そんなストレスには、深い呼吸、ヨガの最後に行うリラクゼーション(屍のポーズ)がいいんですよ。

アイコ お話を聞いていて、ますます私向き!と感じました。ちなみに更年期世代がヨガをする際に注意したほうがいい点は何かありますか。

キミ 効果を急ぎすぎない、疲れたらやめることでしょうか。更年期世代の方が特に注意すべきことはないのですが、50歳前後になると筋肉組織内の水分が減っていくので、ヨガの数時間前に水分補給できているのが理想ですね。あと、内臓に圧力がかかるため、ヨガの前は数時間食事をしないこと。そしてとにかく、自分のペースでゆったり行ってください

つい効果を早く出したくなるかもしれませんが、体に変化が出やすい人と時間がかかる人がいるので焦らないこと。「焦らないでいる心」そのものがヨガなんですから。

ちなみに、ホットヨガは交感神経優位になるので、更年期のときはおすすめはしません。

アイコ なるほど、「ヨガの9割は哲学と瞑想、1割が瞑想のための体づくり」。先生がおっしゃっていた意味が分かってきた気がします。



時間がなくてもリラックス。トイレタイムがヨガにつながる!?

アイコ ちょっと心配なのが、私にヨガをするという落ち着いた時間がちゃんととれるかです。いつも子どもたちが騒ぐので、なかなかゆっくりした時間がとれなくて…。

キミ 例えばトイレの後に少し長めに便座に座ってほっとした感覚を味わうのも、ヨガにつながるんですよ。なぜならヨガは、体のなかに宿る神を悟るのが目的。排泄は体の生命力が行う神事という考え方です。それならきっとアイコさんもできますよね!

また、お子さんが騒がしいのであれば、いっそのことお子さんと一緒にヨガをやってみてはいかがでしょう。当たり前の日常にある生命活動を感じてみることがヨガの基本。子どもの話を聞くときに深呼吸する子どもの寝顔や笑顔を見る瞬間に、喜びに浸り、その感覚を持続する。これも立派なヨガですよ。そしてスキマ時間があったら、1、2ポーズとってみましょう。

アイコ え!トイレの後に座ってのんびりすることもヨガなんですね!子どもとの幸せをかみしめる瞬間もヨガ…。そう考えると、私の日常は生命活動の宝庫です。それなら私にもできそう!ちなみにヨガは1日のうち、いつやればいいのでしょう。

キミ 食事前ならいつでも大丈夫です。しいていうなら、空が明るくなってくる明け方と、日が沈む黄昏時がベスト。食後でなければ、就寝前でもOKです。

また、ポーズや呼吸に集中できるなら音楽はかけずに行うのが本来のヨガの方法ですが、集中できないなら音楽をかけて大丈夫。リラックス系のアロマをたいてもいいですよ。

【ヨガの頻度】
可能なら毎日行うこと。週に1回より、2~3回行うと変化を感じやすい。

【時間】
朝食前、夕食前、就寝前(食後3時間経ってから行う)がおすすめ。食後はNG。


早速挑戦してみよう!ヨガのポーズ3選と呼吸法、瞑想

アイコ では早速、初心者の私にもできそうなヨガのポーズを教えてください!

キミ 分かりました。今回は3つの簡単なポーズと、呼吸、瞑想の方法をお教えしますね。

まずはヨガの代表的なポーズから。下記の3ポーズをそれぞれ1分(シャヴァアーサナのみ3分)、ゆったりと呼吸をしながら行います(トータル5分ほど)。慣れてきたら分数を伸ばしていきましょう。

●ウパヴィシュタコーナアーサナ(開脚して前屈するポーズ)
●デッドウォーリア(死にゆく戦士のポーズ)
●シャヴァアーサナ(屍のポーズ)

ヨガには運動効果があるので、他の運動をする必要はないのですが、体が固い場合は、ウォームアップ的な意味合いで関節をほぐすなどをしても良いです。

【おすすめのヨガポーズ】

●ウパヴィシュタコーナアーサナ(開脚して前屈するポーズ)
脚の内側や裏側のストレッチ効果のほか、お腹の組織の活性化や脳を落ち着かせる効果があるといわれています。

①足は楽に開ける角度で横に開き、太ももの付け根を外回しにしてつま先と膝を天井に向けます。脚の付け根を後ろに引き、骨盤から前に体を倒して、椅子の座面など安定した台の上に上体を預けます。腰が丸まらないところでキープして1分。深呼吸を10回してください。

背中や腰が丸くなったり、骨盤が後ろに倒れたり、太ももの後ろが突っ張る場合には、膝を曲げて調整してください。

②柔軟性のある人は、床に体を預けるように上体を前に倒し、深呼吸を15回しましょう。

●デッドウォーリア(死にゆく戦士のポーズ)
背骨をほぐして、体のゆがみを改善するためのポーズです。

①両足は肩幅よりやや広めに開き、両膝を立てて座ります。両手は体の後ろにつきます。

②両脚を股関節からそのまま右側に倒します。

③上体を後ろに向けて両手を肩幅でつき、肘を下ろします。手のひらで床を押して背骨を伸ばし、頭はその延長線上にして深呼吸を10回行います。反対側も同様に行ってください。

よりリラックスするために、ボルスター(後述。クッションでも代用可)を使っても良いでしょう。


●シャヴァアーサナ(屍のポーズ)
ゆっくりとリラックスし、エネルギーをチャージするためのポーズです。

仰向けになり、脇の下にこぶし1つ分のスペースを空け、両手を体の横に伸ばしてください。手のひらを上に向け、両脚はリラックスできる脚幅に。肩の力を抜き、顎を軽く引いて目を閉じます。そして自然な呼吸を繰り返しながら、全身の力を抜きましょう。

仰向けのポーズで腰が痛い場合は、膝の下にボルスター(後述。クッションでも代用可)を入れると楽に。



キミ シャヴァアーサナのときに、私が監修したスマホアプリ「寝たまんまヨガ」(無料)を聞くと、さらに副交感神経が優位になりますよ。

ポーズをとった後、時間があれば、呼吸法と瞑想で自分自身を見つめる時間をつくります。あぐらや正座、もしくは椅子に座って、背骨を伸ばして行いましょう。

●呼吸法 
鼻から4秒で空気を吸い、鼻から8秒で吐きましょう(2分間続ける)。それを終えたら1分観察してください。

●瞑想 
呼吸を観察する瞑想を2分間行います。
まずは目を閉じて、自然呼吸を観察します。お腹や胸の動き、呼吸の長さ、鼻腔の感覚など、今起きている事実を観察してみましょう。もし別のことを考えてしまったら、そのたびに呼吸に意識を戻します。いわゆるマインドフルネス瞑想です。
この瞑想はいきなり行っても大丈夫ですが、呼吸法の後が望ましいです。

アイコ なるほど。マイペースにやってみたいと思います!


ファッションとグッズで、より快適にヨガを楽しもう

アイコ あとお聞きしたいのがファッションやグッズについてです。ヨガをしている方々は、スリムなヨガウエアを身に着けていらっしゃいますよね。やはりウエアにこだわったほうがいいのでしょうか。

キミ いえいえ、ポイントを押さえたウエアであれば、何でも大丈夫ですよ。ウエアで気を付けるべき点は2つ。トップスは腕を上げても窮屈に感じないもの。ボトムスはウエストがきつくないものを選んでください。

ウエア
体のラインが出ない、ゆったりとした服でかまいません。

ボルスター
体を預けたり、脚を乗せて位置を調整したりするときに使う枕状のもの。座布団でも代用できます。

ブロック
土台にしたりバランスをとったりするときに使う長方形のもの。2Lのペットボトルなど、高さのある安定したものなら何でも代用できます。

ヨガマット
座りポーズでは必ずしも必要ではありませんが、あるとやりやすいと思います。


変化が実感できるまで頑張る!ヨガを続けるコツ

アイコ ヨガで体の変化が実感できるまで、どのくらいの期間頑張ればいいのでしょう。

キミ 体の変化には個人差があるので、気にしないことです。ヨガを行って副交感神経が優位になるのが分かったらしめたもの。少なくとも3カ月は続けてみてほしいです。

私のスクールに通われている更年期世代のお客様にヨガを始めた感想を聞いてみたところ、こんなお声が返ってきました。

「ヨガで普段の生活ではしない動きをしていたら、日常生活では気づけずにいた不調に気づけました。自分の体と向き合っているときは、無心というか、雑念がなく集中できているんですよね。こういう時間っていいなと思います。ヨガをやっていると、自分自身を大切にしている感じがするんです」

アイコ 同年代の方の感想は心に響きますね!

キミ 結果を焦ることなく、ヨガを上手に長続きさせるコツもお教えしますね。アイコさんもヨガを通して、リラックスして自分自身に向き合う時間をつくってみてください。

【ヨガを長続きさせるコツ】

・自分のペースで行う
・人と比べない
・今の自分の体を受け入れる
・ヨガをしている時間に本来の自分を取り戻す
・あるがままの自分と向き合う時間にする
・ポーズで生じる体の感覚を観察する
・呼吸が心地よくできているか、いつも意識する

ヨガをする女性




更年期のヨガで、自分に向き合う時間を大切に

アイコ 最後に、私のようにヨガに興味がある更年期女性へメッセージをいただけますか。

キミ 女性の体は更年期に大きく変化します。その変化にのまれるのではなく、ヨガを取り入れることで変化を俯瞰して穏やかさを感じてほしいです。老いていく体の変化にも、強くしなやかな精神状態で対応したいですね。年を重ねるごとに、子育てや更年期、介護などでつらさを感じることもあるかもしれません。ヨガを行うと、自分を見つめ、変化する自分を自然に受け入れるようになるので、生き方や考え方がよりポジティブになると思います。

ヨガのメリットは、ストレスで交感神経優位になりやすい状態をリセットして、穏やかな精神状態になれること。体のアプローチだけでなく、呼吸法や瞑想、消化に負担をかけないヨガ的な食事など、ヨガの思考を意識していくと、10年後には大きな違いが出ると思います。

目の前のことに忙殺され、焦って過ごす10年ではなく、本来の自分の人生を生きることに目を向ける10年にするのです。自分らしく生きること、自分を認めること、自分が幸せになれば周りも幸せになれる、それがヨガの考え方自分を大切にする女神の時間だと思いながら、更年期を大事に過ごしてくださいね。

アイコ ヨガは、自分自身をゆっくり見つめて、愛し、労わることなのですね。「自分を大事にする」という哲学に感動してしまいました。私も、忙しさに追われるように生き急ぐのではなく、生活にヨガを取り入れてリラックスしたいと思います。先生、今日はありがとうございました。



キミ(今津貴美)先生
スタジオ・ヨギー/ヨギー・インスティテュート エグゼクティブ・ディレクター。
インド、アメリカ、日本でヨガを学び、ヨガインストラクターとして活動後に指導者養成コースの指導を担当。のべ2000人以上のインストラクターの育成に携わる。CD『ディープリラクゼーション ヨガニドラー 寝たまんまヨガで簡単瞑想』がスマホアプリ『寝たまんまヨガ 簡単瞑想』になって大ヒットし、200万ダウンロード突破、Google Play ベスト オブ 2021 自己改善部門大賞受賞。著書やメディア掲載も多数。

アイコ 
43歳。夫と小学生~中学生の子ども3人の5人家族。子育てをしながらパート勤務をこなし、毎日忙しく過ごしている。2年前からホットフラッシュやイライラ、不安感、気分の落ち込みに悩む。最近では、物忘れや高血圧、白髪、抜け毛の症状も。

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