更年期に痩せるには?運動と食事で成功させるダイエットのコツ

セルフケア


更年期世代のお悩みを専門家にインタビューして解決する「お悩み解決隊」。今回は47歳のシングルマザー・ヤヨイが、ダイエットトレーナーの比嘉一雄先生に「痩せたい!」悩みをぶつけます。痩せたいけどうまくいかない…痩せられてもリバウンドしたら…。そんな「ダイエットできない言い訳」を打ち砕かれ、代わりに「ダイエット成功のためのカツ」を入れてもらったようです。


更年期になると太りやすい…その理由を教えて!

ヤヨイ 先生、男性に比べて女性のほうが太りやすい気がするのですが、それはなぜでしょうか。

比嘉先生(以下、比嘉) 男性も女性も、太る=無駄な脂肪が体に蓄積することですから、消費カロリーより摂取カロリーのほうが多ければ太ります

その脂肪の蓄積具合は2種類の女性ホルモン(プロゲステロンとエストロゲン)の関係で変わってくるといわれています。

女性は生理前にプロゲステロンが多くなるタイミングで、脂肪や水分を蓄えやすくなります。そのため、男性と同じようにカロリー制限をしていても、女性のほうが脂肪を減らしにくいんです。イメージとしては、男女が同じようにカロリー制限をした場合、男性は直線的に体重を落とすことができますが、女性は生理周期に伴い段階的に体重が落ちていきます。

また、女性は男性に比べて筋肉が少ないのも痩せにくい原因です。筋肉量によって体の基礎代謝が変わってきますので、筋肉量が少ない女性は、やはりダイエットには不利ではありますね。

ヤヨイ なるほど、そんな理由があったんですね。ちなみに同年代の女友達と話すと、誰もが「昔より痩せにくくなった気がする」と言っています。更年期には太りやすくなるものですか?

比嘉 更年期には、確かに若い頃より痩せるのは難しくなります

ヤヨイ うわぁ…やっぱり。

比嘉 ヤヨイさん、事実を突きつけられるとつらいとは思いますが、それは生物として仕方のないことですから落ち込まないでください(笑)。

更年期になると、先ほどお話しした女性ホルモンのプロゲステロンと対をなすもう一種の女性ホルモン・エストロゲンの分泌が減少します。エストロゲンには、コレステロールや中性脂肪率を下げる働きがあるので、さらに体脂肪の蓄積を促してしまうのです。

ダイエットにとって、大事なのはカロリーのコントロールをし続けることです。周りの人や昔の自分と比べて「痩せにくい」と嘆いてもしょうがないので、地道にしっかりやっていきましょう!




更年期に痩せるにはどうすべき?目指すべきダイエットのゴールとは

ヤヨイ 更年期になって、ダイエットにトライしてもなかなか痩せないので、目標を見失ってばかりです。私たちの年代は、ダイエットのゴールをどこに据えればいいのでしょうか。

比嘉 目指す体型は人それぞれ理想があると思いますが、更年期の場合、若いときのダイエットと異なる点が2点あります。それは①無理をしないこと。そして②健康であること、です。

男女関係なく、年を重ねると内臓脂肪が溜まりやすくなります。しかもそれは、糖尿病や脳の疾患、心疾患などさまざまな生活習慣病、メタボリックシンドロームの原因になりうるのです。そのため、更年期には、体型だけでなく、血液検査の数値を気にしながらダイエットをしていくことが求められます。 また、加齢により重力に負けないための筋肉、抗重力筋が減少し始めるので、それに対する筋肉のトレーニングも必要ですね。抗重力筋は、姿勢を維持させる筋肉と同じなので、いつも若々しく、背筋をピンと張っておくためにも大切です。



更年期のダイエット、食生活のポイントは筋肉と骨のケア

ヤヨイ なるほど、ダイエットといっても、若い頃とは目指す目標も少し変わってくるのですね。まずは食生活をどうすべきでしょうか。昔は極端な食事制限や一つの食材ばかり食べるなど、行き過ぎたダイエットをした気がしますが、更年期からはそんな無茶はダメですよね?

比嘉 そうですね。更年期の食生活で気を付けるべきは、筋肉と骨のケアです。

まずは筋肉。ダイエットや姿勢の維持には筋肉が必要であることは先ほどお伝えしましたが、年を重ねると「タンパク質合成力」が下がってしまいます。若い頃と比べて、運動しても筋肉がつきにくいし、筋肉の材料であるタンパク質やアミノ酸を摂取しても筋肉が成長しづらくなるのです。そのため、積極的に運動し、積極的にタンパク質を摂取しなければなりません

そして骨です。更年期以降の女性は、骨がもろくなりがちです。骨の生成を助けるカルシウムとビタミンDの摂取を心がけましょう


【更年期のダイエットにおすすめの栄養素】

●タンパク質

タンパク質の摂取目標は、若いうちは体重の1kgあたり1gを一日のなかで分割して摂ることを推奨されています。更年期になったら、体重1kg当たり1.2g摂取するのを目標にしてください。(体重60kgの人はタンパク質を72g/日摂取すること)

タンパク質を多く含む食材…肉(豚肉や牛肉は脂身の少ない赤身の部分、鶏肉ならササミやむね肉)、魚(さんま、サバ、いわし、マグロなど)、豆類など。

●カルシウム

閉経に伴うエストロゲンの減少によって、破骨細胞による骨吸収が進み、骨量が減少すると考えられています。その結果、骨粗しょう症の危険性が高まります。女性のほうが圧倒的に骨粗しょう症が多いのはこのためです。そこでカルシウムを摂ることが大切。近年、カルシウムには脂質の吸収を遅らせたり、脂質代謝を上げたりとダイエット効果も報告されています。

カルシウムを多く含む食材…牛乳、チーズなどの乳製品、小魚、大豆製品、野菜や海藻類など。

●ビタミンD

カルシウムと同様にビタミンDも、骨のために必要な栄養素です。なお日光をよく浴びることで、ビタミンDの吸収が高まり、骨の生成が活性化することも報告されていますので、散歩なども有効な手段です。

ビタミンDを多く含む食材…きのこ類、魚介類、卵、牛乳やチーズなどの乳製品など。

●大豆イソフラボン

大豆イソフラボンは女性ホルモンと似たような作用があるので、更年期に入った方は豆乳を飲んだり、サプリなどで補ったりするのはいいと思います。ソイプロテインなどは筋肉にも骨にもいいですよ。

大豆イソフラボンを多く含む食材…納豆、豆腐、きな粉、味噌、豆乳など。



忙しい更年期世代は、スキマ時間を利用してエクササイズ

ヤヨイ 先生、毎日あまり時間は取れませんが、おすすめのエクササイズがあったら教えてください。

比嘉 では、更年期世代にもおすすめのエクササイズをお教えしましょう。運動のために30分、1時間などまとまった時間を定期的にとるのはなかなかできないと思うので、家事をしているときやつり革につかまっているときなど、スキマ時間に何かをしながらできるエクササイズを選びました。更年期の方には、基本的には筋トレや有酸素運動が推奨されています。筋肉の成長だけでなく、抑うつ効果や前向きになる、さらには骨密度が向上するなど、心身に良い影響があるのでぜひやってみてください。

なお、エクササイズの回数は、少しつらいなと思う負荷で、8~12回を1セットとして行っていきます。物理的な負荷を増やすのは道具がなければ難しいので、負荷に慣れてきたなと思ったときは、15~20回と回数を増やしていってください。2~3セットを目安にし、頻度は週に2~3回できたら素晴らしいと思います。1回でもやるのとやらないのとでは大きな違いが出ます。まずは週に1回からがんばってみましょう。

ポイントは、「何回やらなきゃ」などと考えすぎないことです。少しつらいなと運動中に思えるくらいならトレーニングの効果が出ている、くらいの軽い感覚でやっていきましょう!ヤヨイさん、最も大事なのは継続です!

ヤヨイ …わ、分かりました!


●二の腕


●お腹


●お尻


●脚



●体幹


●背中


※出典:『仕事でモテる男はなぜ、体を鍛えているのか?』(比嘉一雄著/かんき出版、撮影:榊智朗)


ヤヨイ ちなみに、ダイエットをする上で注意することがあれば教えてください。

比嘉 そんなに例はありませんが、もしダイエットのために更年期症状が悪化したと感じたら、ダイエットはストップした方がいいでしょう。

症状の悪化は、過度な食事制限のせいで必要な栄養素が欠乏していることが原因かもしれません。栄養素を見つめ直し、無理のない範囲で行っていきましょう。

また運動は少なからず自律神経を刺激し、交感神経を優位にします。過度な運動をした際に、更年期障害のきっかけでもある自律神経の乱れとタイミング的に重なってしまうと、ごくまれに症状を悪化させる可能性があります。

なお、骨粗しょう症などが気になる方は、ジャンプや重すぎる負荷を控えて、骨への衝撃度が小さな運動をしていくといいでしょう。例えば自重(じじゅう)トレーニング※1やスロトレ※2など、トレーニング法を工夫するのもおすすめです。こうしたトレーニングでも骨は成長しますし、しばらく続けて筋肉がついてきたら、より骨の成長を促すジャンプ等の動作も取り入れていただくとよいと思います。


※1 自重トレーニング:腕立て伏せ、スクワットなど自分の体重を使ったトレーニング

※2 スロトレ:スロートレーニング。ゆっくり筋トレを行うことによって、同じ体重でも、骨への負担を変えないまま、筋肉をしっかり刺激ができるトレーニング方法



更年期にダイエットに成功できる人の特徴

ヤヨイ 友人と話していると「ダイエットがなかなか続かない…」なんて話になるのですが、更年期でダイエットに成功している人はどんな人なのでしょうか。

比嘉 更年期の方にかかわらず、ダイエットに成功される方の特徴は「継続できること」です。無理のない範囲でスタートし、それに慣れてきたら少しだけ負荷や回数を増やす。そうやっていくと、続けられたという成功体験が自己肯定感へとつながっていきます

10の変化が必要なときにもまずは1からスタート。つらいと感じなくなったら、そこに1を加える。それを繰り返して小さな負荷を足し続け、いつか10を目指すのです。

ヤヨイ でも私たち更年期世代は、常に心身ともに疲れているから、やる気が続かないような気がするんです…。

比嘉 ヤヨイさん、やる気というものは、基本的には先に来ないと考えた方がいいです。

やる気があるからやれるのではなく、「やるからやる気が出る」のです。部屋の掃除などがいい例です。「少しだけやろう」と思って始めると、いつの間にか隅々まで、もしくは、クローゼットのなかをひっくり返して整理整頓しだしたりすることがありますよね。

ダイエットも同じなんですよ。まず、本当に小さい運動でいいからやってみてください。スクワット1回でもいいです。すると、「1回できたから、あと10回くらいやっておくか」と思えるようになります。その連続ですよ。

ヤヨイ …そうですよね、気付いたら私、言い訳ばかりですよね(笑)。そもそも更年期で筋肉量も落ちてきているんだから、運動はしなければいけない身でした。小さなエクササイズからコツコツとやります!




「いつもダイエットが続かない…」そんな人はここを見直そう!

ヤヨイ 比嘉先生はダイエットトレーナーとして、痩せたい人からいろいろな相談を受けると思うのですが、皆さんどんなことで悩んでいるのですか?

比嘉 「ダイエットが成功した後、リバウンドを防ぐ秘訣があれば教えてください」と聞かれることがあります。そのときは「リバウンドの心配は痩せてからしてください」と伝えています。今のあなたと、痩せた後のあなたは体だけでなく、考え方も変わっているのですから。

一度もダイエットに成功したことがない人にとっては、いまひとつピンとこないかもしれませんが、どういうことか説明してみると…。

「今の食事をAとします。ダイエットのための食事をBとします。多くのリバウンドを経験した人、リバウンドしたらどうしようと懸念している人は、ダイエットが終わったらまたAの食事に戻そうと考えるのです。勝手に体重が増えていくような食生活Aに。でもそうではありません。食生活Aも、体重が減っていく食生活Bも、どちらも普通ではない食生活です。ダイエットの成功とともに、体重を維持できる食生活Cを見つけていくのです。Cを見つけない限り、あなたは一生ダイエッターです」。

そして、「ストレスから過食してしまう」というのもよく聞くお悩みですが、「ストレスも幸せも忙しさも、すべてゼロカロリーですよ」と伝えています。

太ることはカロリーの収支なので、ストレスによって太ることはありません。いじわるな言い方をあえてしましたが、「ストレスで太る」のは因果関係(ストレスが原因で太る)ではなく、ただの相関関係(ストレスの発散法として、食べたから太る)です。ストレスを感じたときの対処方法が食に向いているから太っただけのこと。本当に痩せたいのならば、食べること以外で自分に合ったストレスの解消方法を見つけましょう。スポーツでもカラオケでも、瞑想でも買い物でもなんでもいいんです。食でしかぬぐえないストレスはないはずです。

ヤヨイ うう、確かに正論です…。ダイエットに失敗し続けている私は、失敗する理由があるんだと思いました。分かりました。今日から本気出します!



ダイエットを頑張りたい更年期世代へのメッセージ

ヤヨイ 最後に更年期世代にメッセージをお願いします!

比嘉 ダイエットに成功した更年期世代の方は、いろいろなメリットを手にしています。例えば骨密度の改善、生活習慣病の改善、いい姿勢、前向きな自分、しっかり歩ける等…。なかでも最も大きなメリットは、「自分を好きでいられる」ことではないかと思います。

皆さんは死ぬそのときまで、皆さん自身の体で過ごします。つまり、自分の内面だけでなく外見も好きでいられれば、きっと自分の全部を肯定できて、より幸せなんじゃないかと思うんです。

人と比べて、昔の自分に比べて痩せにくいと嘆いてもしょうがないですよ!とにかく地道にしっかりやっていくことです。いい体は、きっとあなたをもっと素敵な未来へ導いてくれると思います。

ヤヨイ そうですね、今の自分、これからの自分をもっと好きでい続けるため。更年期からのダイエットって、見た目だけの問題じゃないんだって気付かされました。先生、今日はありがとうございました!


比嘉一雄先生
株式会社CALADA LAB.代表取締役社長、ダイエットトレーナー。早稲田大学スポーツ科学部卒業後、東京大学大学院・石井直方研究室で「筋肉」を研究。トレーナーとして月間200本以上のパーソナルセッションをしながら、AIトレーニングマシン『Higatrec®︎』を作成し、世界最大級の展示会「CES」でイノベーションアワードを受賞。YouTubeチャンネル「東京筋肉大学」学長。著書は40冊以上、合計100万部に。

ヤヨイ 
47歳。中学生の子どもとの2人暮らし。バツイチのシングルマザー。子どもに手がかからなくなってきたので、仕事でキャリアアップに励んでいる。4年前から肩こりや倦怠感、目の疲れ、汗、イライラがひどくなってきて、肌のシワやシミも気になっている。

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