気付いたときが始めどき!更年期からの老眼予防法
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セルフケア

更年期世代が抱えるお悩みを、読者代表のヴィーナスたちが専門家に相談し解決する『お悩み解決隊』。今日登場するのはキャリアウーマンのナオミです。老眼を自覚し、老眼鏡を使っているナオミですが、目の疲れに悩まされている様子。眼科クリニック院長の西之原美樹先生に聞いた、老眼の進行を遅らせるための目のケア法の数々とは…?
老眼はいつから始まるの?原因と仕組みをチェック
ナオミ 先生、今日は老眼のケア法をご相談させてください。私は仕事で書類やパソコンを見るときに見えづらく目が疲れるので、老眼鏡を作ったものの、まだ目の疲労感は改善されないんです。
西之原先生(以下、西之原) ナオミさん、それはお困りですね。老眼は、保険診療では40歳から老視として診断可能になりますが、老眼による見えづらさが一般に多く自覚されるのは40代半ば頃からです。まさに更年期世代のお悩みですね。
【老眼の症状】
・読書やスマホを見るときに目が疲れる。離さないと見えづらい
・小さい文字を見るときにぼやける、見えづらく、目を細めてしまう
・ひどい場合は肩こりや頭痛がする
・夕方から夜にかけて、暗くなると見えづらい
・昔よりピントを合わせるのに時間がかかるようになる
・目がしょぼしょぼする
・細かい文字や数字がはっきり見えない

ナオミ 更年期だから老眼になるのでしょうか。
西之原 いえ。老眼と更年期が始まる年齢がほぼ同じくらいで重なるので、更年期が老眼の引き金になっているように感じるかもしれませんが、直接的な関係は不明なんですよ。
更年期症状の原因は女性ホルモンの分泌の低下によるもの。一方、老眼は、私たちの目のなかにある水晶体というレンズが、年齢とともに弾力性がなくなって固くなることが原因です。水晶体は、遠くや近くを見るときに、“毛様体筋”という筋肉の収縮によってピントの調節をしています。しかし、毛様体筋が収縮しても水晶体が固くて形が変わらず、ピントがうまく合わなくなり、近くのものが見えにくくなるんです。毛様体筋も年齢とともに動きが悪くなり、余計に焦点が合わなくなってきます。

きっとナオミさんが気になるのは老眼が進行した未来ですよね。老眼は70歳くらいまで進行していき、完全に調節ができないところまでになると進行が止まります。
ナオミ そうなんですね。私の老眼の悩みも、まだまだ続きそうでがっくりです…。

老眼の進行を早めるNG習慣とは
ナオミ 私としては、これ以上老眼を進行させたくないです。気付かないうちにしてしまっている、目にとっての悪習慣があったら教えていただけますか。
西之原 30cmくらい近くで、パソコンやスマートフォンなどのまぶしい画面を長時間見続けて目を酷使する生活をしていると、発症や進行の速さに影響が出ます。老眼は誰でもなるのですが、近視が軽度ある人は、老眼に気付くのが遅くなる傾向があります。
対策を怠ると、老眼を感じた時点から数カ月で急に進行し、見えづらくなるとおっしゃる方が多いです。
【老眼を進めるNG習慣】
・パソコンやスマホの使用
近くを見る作業が多い人、パソコンやモニター画面をよく見る人、本や書類など、手元を見る時間が長い人は、老眼の進行が早めです。パソコンばかり見ていると、ドライアイにもなり、視力の低下を招きかねません。
・睡眠不足
寝不足により目の血流が悪くなる上、ドライアイのリスクが高まったり、眼精疲労が起こりやすくなったりします。
・ストレス
ストレスは自律神経のバランスを崩し、老眼にも悪影響といわれています。
・食生活の乱れ
偏った食事をしていると、目に栄養が行き渡らず、老眼の進行を早めることになってしまいます。
・喫煙
喫煙は毛細血管を収縮するので、網膜や視神経の血流が悪くなり、目全体に悪影響を及ぼします。
・紫外線
目に紫外線を長時間浴びると、悪影響があることが知られています。紫外線を多く浴びた人が、早くから老眼になりやすいことも報告されています。
・同じものをずっと見続ける
ずっと同じ姿勢で同じものを見ていると、ピント調節の筋肉を凝り固まらせて、老眼の進行を早めてしまいます。
ナオミ 毎日、目を酷使していながら、あまりに目の健康に無頓着でした。思い当たることがたくさんあります!

目のために今日から始めたい、老眼予防のアイケアと生活習慣
ナオミ 更年期以降を明るく健やかに過ごすために、どんなことに気を付けて生活すればいいでしょうか。先生おすすめの“目の健康習慣”があればぜひ教えていただきたいです。
西之原 分かりました。それでは、老眼のためのさまざまなアイケアをご紹介しましょう。老眼は進行するもので、止められないのですが、対策をすることで進行を遅らせることはできます。日頃からケアを心がければ、老眼にもいい効果が期待できますよ。
なお、すべてを行おうとすると大変になるので、できることから始めてください。
【老眼の進行を予防するためのアイケア】
●老眼鏡を使う
見えにくさを感じたら老眼鏡を使いましょう。目や体の疲れをやわらげ、老眼の進行を緩和させます。
●近くや遠く、いろいろなものを見る
目は脳と直結しています。日々、同じ姿勢で同じ距離の対象物を見るのではなく、近くや遠くを含めたあらゆる景色、興味を感じるいろいろなものを見て、目に適度な刺激を与えましょう。
●十分な睡眠をとる
寝不足が続くと、自律神経のバランスが乱れ、目のピント調整を担う筋肉の働きが鈍くなります。その結果、老眼による見えづらさがさらに悪化することもあるので、質の良い睡眠をとるようにしましょう。

●できるだけストレスをためないようにする
ウオーキングやストレッチなど、生活に適度な運動を取り入れたり、誰かとおしゃべりしたりして、日頃からストレスを溜めない生活を心がけてください。
●過度なアルコールや喫煙を避ける
視神経に悪い影響が出るおそれがあるので、過度なアルコールは控えましょう。また喫煙もおすすめしません。
●目薬を使う
眼精疲労に効果のある目薬を使って、目の疲れをとるのも良いでしょう。
●手元を見る時間を少なくする
本や書類など手元の文字を見るのも、目を疲れさせます。老眼鏡を使うことはもちろんですが、長時間手元を見るのは控えましょう。
●紫外線対策をする
肌だけでなく目も、UV対応のサングラスやコンタクトレンズ、つばの広い帽子、日傘などで、紫外線から守るようにしてください。
●目を温める
目の調節機能は筋肉と血流がポイントです。目が疲れたら、ホットタオルや温かいアイマスクなどを使って目を温めると良いでしょう。お風呂のなかで、目にお湯をかけたり、タオルを目に置いたりして毛様体筋の緊張をほぐしてください。

●目の周りのツボを押す
「太陽(たいよう)」「承泣(しょうきゅう)」「攅竹(さんちく)」「睛明(せいめい)」といった、眼精疲労に効くツボを押して血行を促進しましょう。痛気持ちいい程度の力加減で5~10秒くらい押さえ、10秒休む、これを5回ほど繰り返します。

●目のストレッチを行う
毛細血管などの血流を良くするための適度なストレッチを定期的に行うと良いでしょう。
スマホやパソコン作業がひと段落したり、終了したタイミングで目のストレッチを行ってください。近くを見る作業から離れられるので、効果が期待できます。お風呂から出た後も、体が温まり血流が良くなって筋肉がほぐれているので、目のストレッチに適したタイミングです。
【老眼を遅らせるストレッチ】
①人差し指を30cmくらい離して、両目で指を10秒見つめます。その後、2m以上離れたところを10秒見つめます。これを10回繰り返してください。毎日行うと良いでしょう。
②目をぐるぐる回して動かしてください。右回り、左回りを5回ずつ繰り返します。
③“ガボール・アイ”(ガボール・パッチを利用した視力回復法。ガボール・パッチとは、ガボール変換という数学的な処理によって生成される縞模様のこと)を試しても良いと思います。
ナオミ そういえば最近“スマホ老眼”という言葉も聞きますが、若い人でも老眼になるのでしょうか。
西之原 スマホ老眼とは、30cmくらい近くを長時間見ることで毛様体筋の動きがうまくいかなくなるための一時的な調節不全のことです。若い人でもなることがあり、初期であれば、目を休めたり、点眼液や薬の服用などの治療で改善します。一方、老眼は老化のせいなので、治療によって一時的に症状が軽くなることはあっても治ることはありません。
ナオミ 私たち更年期世代もスマホはよく見ますし、同じような症状は起きそうな気がします。
西之原 老眼が進行しているなか、スマホやパソコンを見つめるなど、目を酷使してしまうと、老眼の悪化を早めてしまうおそれはあると思います。
パソコンやスマホなどのデバイスを1時間見たら、5~10分眼を休める。できれば2~5m以上の距離をボーッと眺めて、毛様体筋の緊張を緩めてあげてください。
ナオミ 分かりました!仕事に集中し過ぎず、適度に休憩を挟んで目を休めるようにします。
食事やサプリで、内側から目のケアを
ナオミ ここまでは外側からのケアをお伺いしてきましたが、食事など体の内側からできる老眼対策はありますか?
西之原 目や体に栄養が行き届くように健康的な食生活をとる必要があります。地中海地域の伝統的な料理“地中海食”などは、目の健康や老眼対策におすすめです。
●地中海食
2010年にユネスコの無形文化遺産に選定された地中海食。魚介類のほか、野菜、果実、オリーブ油、豆類、パン、パスタその他の穀物類で構成される、健康と環境の両面で持続可能な食事です。こういった食事は、近年の研究により健康だけでなくエイジングにも良いという研究結果が出ています。
・赤 … リコピンの含まれるトマト、カロチンの含まれる苺、アスタキサンチンの含まれる鮭、ポリフェノールの含まれた赤ワインなど
・黄 … ビタミンCの含まれるレモン、オレンジなど
・緑 … ビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富な葉物野菜。ホウレンソウ、レタス、ルッコラなど
●食事の際に心がけて摂ると良い栄養素
・ビタミンA 毛様体筋の回復、疲れ目の改善(ウナギ、人参、カボチャ)
・ビタミンB1 視神経の働きを高める(豚肉、大豆、ピーナッツ)
・ビタミンC 水晶体の抗酸化作用(レモン、オレンジ)
・ビタミンE 血行促進(アーモンド、植物オイル)
・コンドロイチン 角膜の透明性を維持(納豆、山芋、ふかひれ)
・DHA 網膜の代謝を活発化(ぶり、さんま、サバ)
●サプリメントで摂ると良い栄養素
・ポリフェノール(特にアントシアニン) … 抗酸化作用の強いポリフェノールにはさまざまな種類があります。代表的なポリフェノールであるアントシアニンは、網膜にあるロドプシンというたんぱく質に再合成を促すので、目の機能改善が期待できます(赤ワイン、ブルーベリー、ブドウなど)
・ルテイン … 抗酸化作用で、網膜の細胞を守る(ホウレンソウなどの緑黄色野菜)
・アスタキサンチン … 眼精疲労に効果があるといわれる、強い抗酸化作用がある天然の色素(鮭、カニ、エビ)

自分に合ったアイケアをして、老眼の進行にブレーキをかけよう
ナオミ これまで、老眼で目がつらいと思いながらも、仕事となると時間を忘れてパソコンに見入ってしまうことも多く、目を酷使していたんだと改めて気付かされました。最後に更年期女性に向けてメッセージをいただけますか。
西之原 老眼という言葉には“老いる”という文字を使います。老いをなかなか認めたくない人が多数だと思います。
ただ、現時点で起きていることを正確に把握して対策をする方が、より生活の質は向上して楽に過ごせるんですよ。今まで経験していない、老眼という症状に不安を感じるかもしれませんが、今はいろいろな対策法がありますので、全部ではなくとも、自分に合った方法を取り入れていけば良いかと思います。
医学も日々進化していますので、どんどん新しい知識を取り入れてアップデートしてください。そして1年に1~2回、定期的に眼科医の診察を受けるといいと思います。厚生労働省が推奨している、春と秋の健康診断でチェックするのもいいですね。
ネット社会の現代は、真偽不明の情報に踊らされることもありますよね。例えば以前話題になったブルーライトの影響について、専門家の間でも意見が分かれているように。巷にあふれる玉石混交の情報のなかから、精査して自分に合った信頼できる方法を見つけ出し、目のケアを実践して目を労わってくださいね。
ナオミ しっかりと目を休めながら、これからも素敵なもの、興味のあるものを、この目でたくさん見ていきたいと思いました。先生、今日は本当にありがとうございました。
<この記事を監修いただいた先生>
西之原 美樹 先生
アイリスター麻布クリニック院長
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ナオミ
52歳。未婚。仕事では管理職としてバリバリ働いている。約1年前から頭痛や肩こり、目の疲れがひどくなり、最近では高血圧や高コレステロール、肌の乾燥の症状も。生理周期が極端に短くなってきているのが悩み。