更年期のむくみに効く食べ物は?

セルフケア

更年期世代のお悩み解決のため、5人のヴィーナスが専門家にインタビューする『お悩み解決隊』。前回に引き続き、ヤヨイが「むくみ」の改善・予防について、女性特有の症状に詳しい産婦人科医の藤井治子先生に伺っています。食生活の注意点や、医師に相談すべき危険なむくみなどのお話は、ヤヨイにとって日常生活を見直すいいきっかけになったようです。



むくみの一因・「ストレス」をためないコツ

ヤヨイ いろいろとお伺いしてきたなかで、私が難しいなと思った生活習慣が、ストレスとの上手な付き合い方です。私の場合はシングルマザーとしてのプレッシャーもあり、いつもストレスを抱えている感じです。どんなふうにストレスと向き合っていくといいのでしょうか。

藤井 ヤヨイさん、お一人で何でもこなすのは気が休まらないと思います。どうぞ無理なさらないでくださいね。更年期の女性は、皆さんいろいろなストレスやプレッシャーに囲まれているのではないかと思います。

ただ、ストレスやイライラにより交感神経が緊張していると、血管やリンパ管が収縮し、血液だけでなく細胞外液の流れも悪くなり、むくみの原因の一つとなるのもまた事実。交感神経の緊張をほぐし、副交感神経を優位にするために、「ストレスをためないコツ」をご紹介しますので日々の生活で少しだけ意識してみてください。

【ストレスをためない生活のコツ】

・心からリラックスし、自分を癒やす時間を確保する

・ゆっくり入浴する

・夜更かしせず、早く寝て良質な睡眠をとる

・早起きして体内時計をリセットし、セロトニンやメラトニンの分泌を整える

・ヨガやマインドフルネスの思考法を取り入れる

・マッサージや鍼灸治療で心身を癒やす

・便秘を解消する

・アファメーション(自分に言葉がけをし、肯定的な暗示をかけること)で、自分の価値観を見直す

・他者軸の評価に振り回されないようにする

ヤヨイ なるほど…。私も、人からどう見られているかを意識し過ぎて、自分の価値観に自信が持てないことはよくあります。更年期女性はとにかく毎日忙しく、人の目を気にしている場合ではないかもしれません。他人ではなく自分の価値観を改めて見直すのはかなり大切ですね!



むくみ予防のための食習慣をチェック

ヤヨイ また、先生に詳しくお伺いしたいのが「食」です。更年期でむくみやすい原因の一つが食習慣ということですが、むくみのない生活のためには、どんな食事を心がけたらいいのでしょうか。

藤井 忙しくなると乱れがちな食生活ですが、規則正しくバランスのとれた食事を心がけましょう。塩分の摂り過ぎに注意し、更年期の女性に不足しがちなタンパク質やミネラルを補うこと。また更年期は汗をかきやすく水分不足になりがちなため、水分をこまめに摂るようにしましょう

【食生活のポイント】

・塩分を控える

・タンパク質摂取を心がける

・ビタミン・ミネラル不足に注意する

・糖質の過剰摂取を控える

・水分不足に注意する

ヤヨイ 具体的にはどんな食事にしたほうがいいのか、詳しく教えていただけますか?

藤井 むくみを予防するための食事のコツはこちらです。できる限りでいいので、少しずつ食生活を見直すと、むくみを予防できるはずです。

【むくみを予防するための食事のコツ】

・豆や魚介類などのタンパク質食材を多めに選ぶ

・発酵食品、天然だし、天然調味料を使い、アミノ酸やペプチドの形で吸収させる

・塩分を控えめにし、野菜や海藻、雑穀など、ミネラル豊富な食材を十分に摂る

・砂糖(白糖)や小麦粉を使った加工食品をなるべく控える

・化学調味料やトランス脂肪酸(マーガリン、ファットスプレッド、ショートニングや、これらを使用したパン、ケーキ、ドーナツ、揚げ物など)の摂取を控える

・ファストフードや揚げ物を控えめにし、煮たり茹でたり蒸したりといった調理法で料理する

・青魚やアマニ油、えごま油、くるみなどから、オメガ3系脂肪酸を意識して摂取する(オメガ3系脂肪酸は体内では作られにくい)

ヤヨイ なるほど…、詳しくありがとうございます!食材選びから気をつけていこうと思いました。



危険なむくみ、思い当たる症状があれば医療機関へ

ヤヨイ 更年期のむくみやすさとその予防法について、とてもよく分かりました。一方で、病院で診てもらったほうがいい「危険なむくみ」はあるんですか?

藤井 むくみが「朝起きたら引いている」「日によって気になる」程度なら問題はないでしょう。

ただ、セルフケアをしても、むくみが徐々に悪化したり、ずっと改善しない場合は、むくみの裏に病が隠れている可能性があります。隠れ貧血や甲状腺機能低下症は、更年期女性には頻度の高い疾患ですし、慢性的にゆっくり進み、自覚症状に乏しいので、一度病院を受診してみると安心です。なにか病があっても、早期発見できればいいですよね。

危険なむくみ症状についてですが、例えば以下のようなむくみの場合、すぐに医師に相談することをおすすめします。受診する科は全身を総合的に判断してくれる一般内科や総合内科がいいかもしれませんね。

【診察が必要なむくみの症状】

・急にむくむようになった

・片足だけむくむ

・むくみに痛みを伴う

・むくみが赤く腫れている

・限られた範囲、特定の場所だけむくんでいる

・薬を飲んだ直後にむくんだ

・尿量が急に減る、動悸や息切れ、倦怠感など他の症状を伴うむくみがある


ちなみに「薬を飲んだ直後にむくんだ」というのは、薬剤性アレルギーの可能性があります。免疫細胞が薬剤に対して過敏に反応すると、発赤、かゆみ、湿疹などの反応とともに、むくみが出ることがあります。薬だけではなく、食品、虫刺されなどでも起こり、アナフィラキシーショックになると命に関わったりもします。そのため、急に起こったむくみは医療機関を受診したほうがいいでしょう。



なお、むくみの症状から疑われる疾患としては、以下のようなものがあります。

【疑われる疾患】

・貧血

・甲状腺機能低下症

・腎不全

・心不全

・肝硬変などによる肝機能低下

・関節リウマチ

・静脈血栓症

・下肢静脈瘤

・血管炎 血管性浮腫

・蜂窩織炎(ほうかしきえん)

・リンパ浮腫(生来のものと手術や放射線治療によるものがある)

・皮膚疾患(湿疹や皮膚炎)

・薬剤アレルギー

ヤヨイ むくみを伴う疾患がかなり多いのにびっくりしました。そういえば私の母が下肢静脈瘤で、いつもむくみを気にしています。普段から自分の体に目を向けて、体調の変化に注意すべきなのですね。

藤井 静脈瘤は、静脈血を逆流させないようにしている弁が壊れるため生じる病気で、むくみと共存しやすい病気です。

なお、むくみは環境要因で生じることもありますが、ほとんどは一過性のものです。繰り返しむくんだり、むくみが目立ったりする場合は、体内環境の悪化が疑われます。食、運動、冷え対策などを見直しセルフケアすることが何よりも大切ですが、それでも改善せず、病的に悪化する場合や、急性の場合、左右差のある場合などは医療機関を頼ってくださいね。

「自分を大切にする」ことが、むくみや更年期症状解決の第一歩

ヤヨイ むくみについてとてもよく分かりました。むくみのケアをすると、これからの人生は変わりますか?

藤井 もちろんです。むくみが起こるのは、血管年齢や細胞代謝が衰えてきているからです。むくみをケアすることは、アンチエイジングそのもの。むくみの自覚が出たらセルフケアから始めてみましょう。間違いなく10年後の体調、若さ、美しさにつながると思いますよ。



ヤヨイ 分かりました。アンチエイジングと聞くと俄然やる気が出ました!(笑) 早速むくみ予防のために生活習慣を改善したいと思います。藤井先生、最後に更年期女性にメッセージをお願いします!

藤井 足のむくみには気づける人も多いと思いますが、肌のたるみやハリの減少、体がだるい、疲れやすい、冷えなどに、むくみの原因が隠れていることに、意外と気づいていない人が多い気がします。こうした栄養素不足や運動不足から生まれている症状は、セルフケアで改善が可能です。

更年期はすべての女性に訪れますが、体の不調は人によってさまざま。むくみもその一つです。生活習慣や食事を見直し、ご自身を大切にすることでむくみは十分改善できますし、その他の健康増進にも役立ちます。もちろん、更年期障害を軽くする効果だって期待できます。仕事に子育て、介護などに追われご自分を労る時間がなかなか取れない更年期ですが、ほんの少しずつでもご自分を大切にする時間を持ってみてはいかがでしょうか。

ただし、更年期は、様々な疾患の発症が増える年代でもありますから、いつものむくみ症状ではないなと思ったら、医療機関に相談して病の早期発見につなげてくださいね。

ヤヨイ 忙しく疲れやすい毎日ですが、今日の先生のお話を参考に、日々の食生活や運動に気を遣っていこうと思います。藤井先生、今日は本当にありがとうございました。



藤井治子先生
医療法人社団ハシイ産婦人科副院長。
産婦人科専門医・医学博士。高知大学医学部医学科卒業、京都大学大学院医学研究科卒業。大学卒業後、産婦人科医として一般診療に従事し、大学院では胚着床メカニズムについて研究。現在は妊娠・出産のサポートだけでなく、予防医療にも従事。思春期から更年期まですべてのライフステージにおける女性特有の症状に向き合い、分子栄養療法や漢方療法を取り入れて診療にあたっている。


ヤヨイ
47歳。中学生の子どもとの2人暮らし。バツイチのシングルマザー。子どもに手がかからなくなってきたので、仕事でキャリアアップに励んでいる。4年前から肩こりや倦怠感、目の疲れ、汗、イライラがひどくなってきて、肌のシワやシミも気になっている。

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