更年期のむくみの原因と改善法を専門医に聞く

セルフケア


更年期のお悩みを専門家にインタビューし、解決していく「お悩み解決隊」。今回取り上げるのは「むくみ」です。更年期になってむくみやすさを感じている人も多いことでしょう。47歳のヤヨイも他人事ではなく、女性特有の症状に詳しい産婦人科医の藤井治子先生に聞いてみることにしました。



むくみはどうして起こるの?

ヤヨイ 先生、むくみについて相談させてください。最近靴下を脱ぐと、ゴムのあとがくっきりと残っていることがあります。これはむくみですよね…。そもそもどうしてむくむのでしょうか?

藤井先生(以下、藤井) ヤヨイさんはむくみに悩まれているのですね。一般的にむくみの原因はいろいろあります。ヤヨイさんにも思い当たることはあるでしょうか?


【むくみの原因】

・運動不足

・筋力低下

・塩分の摂り過ぎ

・タンパク質不足

・糖質摂取過多

・ビタミン・ミネラル不足

・ホルモンバランスの乱れ(月経前症候群など)

・リンパ機能の低下


ヤヨイ 運動不足はかなり当てはまりますね!忙しさにかまけてきちんと栄養が摂れていないことも実感しています。考えてみたら、今の私はむくむ要素ばかりかもしれません…。



セルフチェックで自分のむくみを知ろう

ヤヨイ 私は足のむくみには気づけるのですが、足以外でもむくみますか?

藤井 むくみは顔にも指にも現れます。ぜひ以下のセルフチェックリストで、自分のむくみの有無を確認してみてくださいね。

むくみを放置すると歩きにくかったり、体がだるくなったり、皮膚がたるんだり、ひどいと静脈瘤になったりもします。まずは自分のむくみをチェックしてみましょう。


【むくみがわかるセルフチェック】

・靴が履きにくい

・寝起きに顔がパンパンに腫れている

・指輪が抜けない

・靴下のあとがくっきりとつく

・足のすねを押しても、へこみがすぐに戻ってこない

・急に体重が増えた


ヤヨイ 寝起きに顔がパンパンに腫れるのも感じていましたが、むくみとは思っていませんでした。急に体重が増えるのも、むくみの可能性があるのですね、意外でした。

更年期世代がむくみやすい原因とは

ヤヨイ 実は更年期になってむくみを感じやすくなった気がするんです。むくみは更年期の症状の一つなのでしょうか?

藤井 更年期に限らず、むくみは誰にでも起こりますし、日々変化します。また人によってむくみやすいタイプの方、むくみにくいタイプの方もいらっしゃいます。

ただ、年齢が高齢になるほど、男性より女性のほうがむくみやすいのは確かですね。若いときから低タンパクで栄養不足気味、結合組織(皮膚、関節、リンパ組織、血管など)が脆弱だった人は、むくみやすくたるみも出やすいでしょう。逆に若いときから栄養状態が良く、運動をしていて筋肉のポンプ機能(筋肉の収縮により血液を押し上げる働き)が十分な人は、更年期や老齢期になってもむくみにくいともいえます。

【更年期にむくみやすい理由】

・筋力低下、運動不足

・タンパク質不足

・ビタミン・ミネラル不足による体内代謝の低下

・体脂肪の増加

・リンパ機能低下

・プロゲステロンに対する相対的エストロゲン過剰状態

・かくれ貧血

・甲状腺機能の衰え


ふくらはぎの筋肉は「第2の心臓」といわれ、血流を心臓に戻すポンプのような働きをしています。お尻から太もも、ふくらはぎまでの大きな筋肉を十分動かすと、脚の血流が促され、むくみにくくなります。運動習慣のない人の場合、加齢により筋量が減少してきますので、更年期世代を迎えると一層むくみます。むくみ予防のためには運動の習慣が大事なんですよ。

ヤヨイ 先生は更年期のむくみの一因に低タンパクを挙げられていますが、更年期はタンパク質が不足気味なのでしょうか?

藤井 加齢とともに消化も代謝も衰えるので、更年期になるとタンパク質の吸収量も少なくなりますし、細胞内で行われるタンパクの合成速度も遅くなります。

女性の40~50代は、仕事と子育て、介護などが重なり、ストレスも多い時期です。ストレスにより食習慣が乱れやすく、血糖値が乱高下するとタンパク質の分解も進み、タンパク質が不足します。すると筋肉量も減りますし代謝酵素も減る。ストレスにより負のループに入りやすくなるのです。

そのため、30代のときと比べて、積極的にタンパク質を摂る必要が出てくるのです。

ヤヨイ なるほど!タンパク質不足と運動不足がむくみを招くというのはそういうことなんですね。「ストレスで食習慣が乱れがち」なのはまさに今の私です!

藤井 よく「太っているのか、むくんでいるのか分からない」というお声を聞きますが、往々にして肥満にはむくみが共存しています。むくみは血液やリンパ液などの細胞外液の水分が異常に増加した状態、肥満は脂肪が増えた状態です。脂肪層には細胞外液がたまりやすいのです。

でもヤヨイさん、安心してください。むくみも肥満も、生活習慣の改善で軽減できるんですよ。肥満を解消するセルフケアは、同時にむくみを解消することにもつながります。むくみが気になり始めたら、ぜひ生活習慣を見直してください。


要注意!「冷え」もむくみの原因です

ヤヨイ 私は冷え性ですが、冷え性だとむくみやすいと聞いたことがあります。これはどういうことなのでしょうか。

藤井 確かに冷えとむくみには関連性があります。誰でも秋冬には冷えを感じることはありますが、室内に入ったり靴下をはいたりすれば冷えが治まるものです。それでも冷えが治まらないというのは、血流やエネルギー産生が悪くなっているという証拠。

運動不足だと筋肉のポンプ機能も低下するので、血行が悪くなりますし、筋肉不足だと運動してもエネルギーをつくれず、熱がつくれないために冷えます。また、細胞の代謝(ミトコンドリア機能)が衰えてくると、熱産生が低下し体温が下がります。一方で、慢性的なストレスで交感神経の緊張が続いていても、手足は冷えることがあります。

つまり、冷えとむくみの原因は重なっていて、冷え性を解消するセルフケアをすれば、むくみも改善できるというわけです。


【冷え対策】

・手足や腰を冷やさないようにする

・肩甲骨の間を温めたり、筋肉運動を行ったりして、発熱力がある褐色脂肪細胞を活性化させる


脂肪細胞には、脂肪を蓄える白色脂肪細胞(いわゆる体脂肪)と、脂肪を燃やす褐色脂肪細胞の二つがあります。褐色脂肪細胞は主に首や背中にあるので、ここを刺激して脂肪を燃やし、発熱を促進させてください。

冷えを感じる更年期女性



こうして防ごう、更年期のむくみ対処法

ヤヨイ ここまでお聞きしてきて、むくみのためには生活習慣を整え、冷えを改善することが大事だと感じてきました。更年期世代が気を付けるべき生活習慣は他にもありますか?

藤井 そうですね。それでは、日ごろからこんなことに気を付けて生活するといいというポイントをお伝えしますね。ぜひ参考にしてみてください。

【生活習慣】

・よく歩く

・筋トレをする

・体を冷やさない工夫をする(入浴、手袋、靴下、など)

・十分な睡眠時間を確保する

・ストレスを抱えないようにする


むくみ予防のためには運動不足を解消し、冷えを改善することが大事です。思い立ったら手軽にできるのがウオーキングです。「ウオーキングするために、毎日1時間は確保しないと」と思うと大変になるので、スキマ時間を使って複数回、歩くようにするといいでしょう。

また更年期にはストレスが多いものですが、リラックスした時間をつくってストレスを軽減していきましょう。



【日中の過ごし方】

・デスクワークのときは、定期的に体勢を変えて、足の付け根を伸ばす

・浅く座ったまま、かかとを上げ下げするなど、ふくらはぎの運動を行う

・家事、立ち仕事のときには着圧ストッキング(弾性ストッキング)を身に着ける


リモートワークが多くなると運動不足になりがちです。筋力を維持向上するために、日々の生活に手軽な運動を取り入れましょう。むくみには着圧ストッキングをはいて、脚の血を促進してもよいですよ。効果的な圧力がキープできて、自分のふくらはぎの太さに合ったストッキングを選ぶようにしてください。

【マッサージ、ツボ押し】

・血行を良くするツボ(足三里や三陰交など)を押す 

・耳から首、鎖骨にかけてリンパマッサージをし、心臓に向かってリンパ液と血液を流す

・足の指、足首、足の付け根、お尻のストレッチをする


血のめぐりを良くするようなマッサージやツボ押しも効果的です。リンパマッサージの際には、肌の滑りを良くするマッサージオイルを使ってもいいですね。

脚のストレッチにはストレッチポールというグッズもおすすめです。

【入浴法】

・38~40度のぬるめのお湯に15分ほどゆっくり浸かる 

・半身浴をする

・入浴直後に水シャワーを浴び、寒冷刺激を与える

・マグネシウム入浴剤を使う


ゆっくり体を温めた後に水シャワーなどで寒冷刺激を与えると、細胞のなかのミトコンドリアを活性化し熱産生が増します。脚や手だけ水シャワーをしても血行改善につながりますよ。水シャワーを行う際は、無理せずできる範囲で行ってください。特に冬場は急激に体温が低下すると危険ですからご注意を。

また、更年期には入浴剤のなかでも保温効果が高いマグネシウム入浴剤がおすすめです。マグネシウムは血管を広げる働きがあります。マグネシウム不足の女性も多いので、入浴を通して体内にマグネシウムを補給できれば、細胞機能が正常化し、代謝アップにも役立つといいことずくめ。更年期女性のアンチエイジングにも良いですよ。

【就寝時】

・足を心臓より高い位置に上げる

・足先を冷やさない工夫をする


脚を心臓より高く上げて横になると、血液が流れて脚のむくみが解消され、脚の疲れも和らぐことはよく知られていると思います。また冷え性だからと就寝時に靴下をはく人もいるかもしれませんが、蒸れてしまって安眠できないことがあります。足先を冷やさない工夫としては、ゆるめのレッグウォーマーをつけるとよいでしょう。

ストレッチをする女性



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藤井先生に伺う「むくみ改善法」の前編はいかがでしたか?後編では、むくみの一因となるストレスをためないコツ、むくみ予防のための食習慣、危険なむくみ症状などについてご紹介いただきます。どうぞお楽しみに!



藤井治子先生
医療法人社団ハシイ産婦人科副院長。
産婦人科専門医・医学博士。高知大学医学部医学科卒業、京都大学大学院医学研究科卒業。大学卒業後、産婦人科医として一般診療に従事し、大学院では胚着床メカニズムについて研究。現在は妊娠・出産のサポートだけでなく、予防医療にも従事。思春期から更年期まですべてのライフステージにおける女性特有の症状に向き合い、分子栄養療法や漢方療法を取り入れて診療にあたっている。

ヤヨイ
47歳。中学生の子どもとの2人暮らし。バツイチのシングルマザー。子どもに手がかからなくなってきたので、仕事でキャリアアップに励んでいる。4年前から肩こりや倦怠感、目の疲れ、汗、イライラがひどくなってきて、肌のシワやシミも気になっている。

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