年末年始はご飯を作りたくない!プロの楽ワザでごちそう準備

セルフケア


12月に入ると見えてくる年越し準備。ごちそうを「作らなければ」と思うと気が重くなる時期ですね。今回の「お悩み解決隊」では、3人の子どもを持つ43歳のアイコが、料理研究家の浅倉ユキ先生にインタビュー。プレッシャーなんて必要ない、気持ちが軽くなる年末年始の料理術を伝授してもらいました。さあ、縁起や伝統に押しつぶされ、クタクタになるお正月から解放されましょう!



気が重い年末年始の料理。考え方を変えてみよう

アイコ 先生、12月に入ると私、毎年すごく気が重くなるんです。更年期でただでさえイライラと疲労感が強いのに、年末のことを考えるとさらに憂鬱に。年末年始の慌ただしさとか、年明けのごちそうの段取りを考えるだけでストレスです。こんな私ですが、どうやって年末年始の食事作りを乗り切ればいいでしょうか?

浅倉先生(以下、浅倉) アイコさんは小中学生のお子さんが3人いるお母さんでしたね。ただでさえ気ぜわしい年末なのに、子どもたちがあまり喜ばないおせちを作るのは大変だと思います。そんな思いをしているのは、アイコさんだけではないかもしれません。

でも、かつては手作り中心だったおせち料理も、最近は有名な料亭のおせちセットなどが通販で気軽に買えるようになりました。重箱に詰めて配達されるおせちセット市場は、年5%のペースで成長していると聞きます。ネットで気軽に購入できるのも理由の一つ。と、いうことは、手作り派が年々減ってきているということなんですよ!

それなら、「おせちは日本の伝統」という重いプレッシャーから解放されて、クリスマスと同じように「1年に1度みんなが楽しみにしているお料理」「用意するとめちゃくちゃ喜ばれるもの」を準備しましょうよ。お正月に家族そろっておいしいものをいただく楽しみだけ、大事にすればいいのではないでしょうか。ごちそうは別に手作りではなく、市販品でもいいんです。おせち料理をつらい家事と考えず、「楽しいごちそうを食べられる機会」としてエンジョイしちゃいましょう!イベントとして楽しめる範囲内でやればいいと思います。


アイコ おせち料理が、家族そろっておいしいものを楽しむイベント…!おせち料理を、クリスマスのお祭り感のように考えたことはありませんでした。でもその言葉だけで、おせちに対する重圧感がなくなりますね。

浅倉 お正月の食卓には、「年に1度しか食べられない」料理を出してもいい気がします。例えば私は、あえてお正月まではお餅を出しません。お雑煮でやっとこの冬最初のお餅が食べられる。そんなスペシャル感を持たせています。栗きんとんや黒豆も正月以外は作りません。だからこそ、作ると「やったー!お正月って感じがする!」と家族も喜んでくれます。手作りしなくても、例えばお正月にだけ出す有名店の和菓子とかでもいいんですよ。

アイコ そんなお正月なら、私もニコニコ笑って過ごせそうです!なぜ今まで「日本の文化」という重いものにとらわれ過ぎていたのか…。

浅倉 主婦はラクしてニコニコするか、頑張って不機嫌になるか。この二択しかないと、私はいつも家族に伝えています。第一、正月早々、頑張った上にニコニコするのは無理ですよ。サイボーグじゃないのでね。「あんまり頑張ると不機嫌になっちゃうから、適当に時短させてもらうね。そのほうがみんなもいいよね?」と家族に伝えてしまってください。

アイコ 分かりました!それなら家族もうなずくしかありませんね(笑)。



自分だけつらくならない、おせち作りの秘訣

アイコ 先生のお宅ではお正月のためにどんな料理を作るのですか?

浅倉 わが家では、栗きんとん、黒豆などは家族が喜ぶので欠かさず作りますどちらも冷凍できるので、早めに作って冷凍しておきます。12月31日はおせちの仕上げの日として予定を空けておきます。でも私一人がやるのではなく、子どもと分担して作るのがわが家の恒例。例えばだて巻きは次女の担当。何度も作っているので上手なものです。そうやって家族みんなで料理することを、行事にして楽しめるといいのではないでしょうか。

また、お正月には家族が好きなもの、絶対に喜ぶもの「だけ」用意すればいいと思います。縁起にとらわれて、たいしておいしくないものをわざわざ用意する必要はありません。わが家ではめでたいけれど家族が喜ばないものは作らないことにし、昆布巻きは数年前に準備リストから外しました。エビや小魚の甘露煮も、誰も喜ばないので買わなくなりました。だって、手間のかかるおせちをせっかく作っても「甘すぎる」だの「味が濃い」だのと言われたら、がっかりしませんか?頑張ったのに喜ばれないなんて、あまりにも非合理的です。面倒だと思うことは、すべて合理的に考え直しましょう。

お正月にはおいしいものがいっぱい食べられるから、わが家のみんなはお正月を心待ちにしています。縁起や伝統にとらわれず、家族みんなが好きなものをずらりと並べて食べる幸せな日。もしアイコさんのご家族が好きなおせち料理があったら、「年に1度しか用意しない特別料理」としてエントリーさせてください。


これがあれば料理が「映える!」秘密のテクニック

アイコ きっと子どもたちもそんなお正月料理なら喜びますね!なんだか先生のお話を聞いていると、お正月が楽しみになってきました。ちなみに私は盛り付けが苦手なのですが、何かいいアイデアがあればぜひ教えてください。

浅倉 お正月の華やかな雰囲気が出せる盛り付けのテクニックで、一番大事なのは「見た目を豪華に」です。ちょっとした小物使いで祝いの席が演出できるので、ぜひ参考にしていただければと思います。なにげないおかずを立派な料理にバージョンアップさせるには、お正月用の赤いお皿に載せて、きれいな飾りを添えるだけ。お正月は味よりも見た目重視でいきましょう!

●いくら、とびっこ、食用金箔

いくらやとびっこ、食用金箔は、あるだけで華やかさが演出できます。ぜひ多めに準備しておきましょう。見た目が派手で高級感ある食材は、トッピングするだけでなんでもごちそうに早変わりします!

●しそ、三つ葉、柚子

しそや三つ葉、柚子などは、彩りが寂しいときに使えます。普段使いのおかずでも、トッピングすればなんとなく「寿(ことぶき)」な感じになります。


●玉麩、紅白生麩、赤いかまぼこ

玉麩、紅白生麩、赤いかまぼこの鮮やかな色が、食卓を明るく見せてくれます。可愛らしい飾りになりますよ。

●赤い皿や箸置き

お正月だけに使う赤い皿は、おせちを盛り付けるのに重宝します。年に1度だけ出すお皿なので、使うのが楽しみになりますよ。また、保管場所をとらない赤い箸置きも気分が変わるのでおすすめです。

●100円ショップのお正月飾りやナンテンの実、緑の葉、おしゃれなピック

100円ショップで売っているお正月の飾りやナンテンの実、緑の葉などもふんだんに用意して、たくさん飾れば、一瞬でお正月っぽくなります。また肉団子にはピックを刺しますので、素敵なピックも忘れずに。

●重箱を仕切るための小鉢や柚子釜

重箱に料理を詰めるときには、お弁当っぽく見えてしまうアルミカップは使いません。代わりに小鉢や柚子釜で仕切るようにしています。

アイコ なるほど、確かに…。先生に教えていただいたものは、できる範囲でしっかり準備したいと思います!



大公開!料理研究家の年末年始お料理カレンダー

アイコ 浅倉先生…。実は私、元旦に出す料理だけが不安なわけではないんです。大晦日からお正月の三が日が終わるまで、年末年始の料理はぜ~んぶ自信がありません…!大晦日は特に落ち着かなくて、お正月前夜としてちゃんとした料理を出さなきゃと思いながら、結局ぱっとしない料理で終わります。どうすればいいのでしょうか?

浅倉 お正月の本番は元旦なので、大晦日に特別感は不要だと思います。「あれ出さないの?」と家族に言われたら、「だ~め!あれはお正月用!」なんて言いながら、翌日からのごちそうを楽しみにしてもらえばよいのです。

私は年越しそばを大晦日の夕飯として、たくさんの天ぷらとともに出しています。揚げてしまえばなんでも天ぷらになるので、冷蔵庫の整理に最適ですよ。おそばが嫌な人は、ご飯の上に天ぷらを載せて天丼にして出しましょう。

また、年末年始の数日間が不安だというアイコさんのために、わが家の年末年始のお料理カレンダーを公開しますね。よかったら参考にしてみてください。

【浅倉家の年末年始お料理カレンダー】

●12月31日 そば&天ぷら、薬味など

●1月1日 お雑煮(東京風)、おせち(重箱に入れる)、刺身、和菓子など

●1月2日 お雑煮(関西風)、おせち(少なくなってきたものは重箱に詰めない)、寿司、和菓子など

●1月3日 残った正月料理のリメイクいろいろ、気が向いたら赤飯を炊く


アイコ なるほど…!いつもお正月は前日の残りものを、体裁を整えて出す、くらいにしか考えていませんでした。これは私も真似したいです。先生ありがとうございます。



親戚が集まる年末年始。どんな料理を出せばいい?

アイコ 親戚が集まるお正月というのも私にはプレッシャーです。食の好みが分かれるいろいろな世代のために、一体どんなメニューを用意すればいいでしょう。

浅倉 世代関係なくお刺身やお寿司ならみんな好きなので、それをお正月料理のメインに考えてはどうでしょう。その脇におせち料理を置くイメージです。おせち料理も、それぞれが好きなもの、ごちそうだと思っているものを事前に聞いておいて、重箱に詰めてキレイに飾り付けるだけでいいと思います。

必死に料理するのに加えて、「味に責任を持つ」のはかなりのプレッシャーですよね。とくに、好みをよく知らない親戚の集まりなどはストレスも高め。人が大勢集まるときには、鍋やホットプレートなど「各自がたれなどで味付けする料理」を出すと気が楽ですよ。おいしくても、おいしくなくても各自の責任になりますからね。いろいろな種類の薬味やたれを並べれば、華やかな食卓に見えます

アイコ 私が味を付けず、ゲストそれぞれが味を付けてくれる料理…。これはいいですね、私もストレスを感じなくて済みます!



おせちに飽きた!そんなときの救世主グルメ

アイコ お正月に「もうちょっと何かない?」「おせちに飽きた」と家族や親戚に言われたときにサッと出せる、便利な買い置き食材も教えてください。

浅倉 冷蔵庫に入れておけば助かる、買い置きおかずですね。それなら、「余ったら普段のおかずに出してもおかしくない、ちょっと豪華な冷凍・冷蔵食品など」を年末のうちに買っておくと便利です。


【年末年始に便利な買い置きおかず】

●冷凍の巻き寿司、押し寿司

(特別感もあるので便利。いくらなどを散らせば、すごく豪華に見える)

●チンして出せる点心のセット

●かまぼこに飽きたときのためのテリーヌやサラミ

●食事以外のだんらんの時間に楽しむ和菓子やせんべいなど

(デパートなどでいつもよりワンランク上のものを買っておけば、手軽にハレの気分が楽しめる)


アイコ なるほど、このアイデアも採用させてください!冷凍の巻き寿司や押し寿司なんてあるんですね。早速リサーチしてみます。

料理したくない日は「買えばよい」。料理は趣味でいい

アイコ 今日インタビューさせていただくまで、お正月が来るのが本当に憂鬱だったのですが、先生にご相談してよかったです!もうすっかり、お正月料理の準備が楽しみになりました。

私の場合、更年期に入って特に、「今日は料理したくない!」という日がよくあるんです。料理研究家の方はそんなときはどうするのですか?

浅倉 料理を作るのが嫌な日は「作りません」!おいしいものを買ってきて、「お惣菜でごめんね」とは言わずに「おいしそうなものを見つけたから、お土産に買ってきちゃった♡」って、あたかも良いことのようにはしゃぎます。謝ったら負けだと思っています(笑)。

昔は女性なら誰もが「裁縫ができて当たり前」でしたが、今や服を手作りする人なんてよっぽど裁縫が好きな人だけ。でも服が市販品だからといって、悲しい気持ちになったりはしませんよね。

料理もそうなってきていると思います。おいしくて健康的なものは、お金を出せばいくらでも手に入る時代です。手作りの必然性がないのだから、料理を作りたい日に、好きなものを作るだけ。趣味の世界。それでいいのです。料理したくない日は作らない。そして、そのことに罪悪感をもつ必要などなく、「おいしそうなお土産を買ってきちゃった♡」とうれしそうにしていれば、家族も責めづらいものです。気が向かない日には、おいしいものをどんどん買って、経済に貢献しましょう!

買ってきたものを食卓に出すときにも、楽しそうに幸せそうに、愛情たっぷりにふるまえば、豊かな食卓になるものですよ。

アイコ 確かにおっしゃる通りです!最後に先生が料理を作る際に心がけていることを教えてください。

浅倉 「おいしいものを用意してあげたよ」っていうのは、とても素敵な愛情表現だと思うんです。その意味で、料理は単なる家事ではないのかもしれません。果物でもなんでも、家族が好きだといったものを買ってあげたり、作ってあげたり、相手が食べたいタイミングで用意してあげたり。例えば、ビールを飲んでいたら、さりげなく枝豆を出してあげるとか。ちょっとしたことで家族に愛情を伝えられるのですから、料理って素晴らしいですよね。

アイコ 先生のお話を聞いていて、料理を「しなければならないもの」にしているのは、ほかでもない私自身だったのかもしれないと気付きました。来年のお正月は、家族が好きなものだらけのテーブルにしたいと思います。今日は本当にありがとうございました。

浅倉ユキ(あな吉)先生
料理研究家、時間管理術研究家。アナザーキッチン株式会社代表取締役、全日本ズボラ主婦連盟代表理事、日本時間管理術協会代表など肩書多数。 2004年より「主婦のストレス値を下げる」をモットーに活動を開始。野菜不足におちいりがちな食生活を楽しく改善するための「ゆるベジ」、暮らしと思考がスッキリ整理される、主婦のための「あな吉手帳術」、反抗期の子どもやママ友、夫とのコミュニケーション術が学べる「話の聴き方スクール」など、女性が快適に暮らすための暮らしの知恵をノウハウ化し、多数のインストラクターを養成して全国展開。9年間で大手出版社などから書籍28 冊を出版。近著は『あな吉さんの家事をやめても愛されるズボラ主婦革命』(1万年堂出版)。

アイコ
43歳。夫と小学生~中学生の子ども3人の5人家族。子育てをしながらパート勤務をこなし、毎日忙しく過ごしている。2年前からホットフラッシュやイライラ、不安感、気分の落ち込みに悩む。最近では、物忘れや高血圧、白髪、抜け毛の症状も。

ピックアップ記事

関連記事一覧