ゲニステインとダイゼインの違いとは?特徴や効果を解説

更年期症状・骨粗しょう症・乳がんなどのリスクを軽減してくれる、大豆含有の機能性成分・イソフラボン。そもそもイソフラボンとはどんなもの?イソフラボンのなかでもさらに効果的とされるゲニステイン、ダイゼインの違いは?そんな素朴な質問にお答えします。

イソフラボンとは

イソフラボンとは、大豆をはじめとするマメ科の植物に含まれるフラボノイド類です。その化学構造が女性ホルモンの一つであるエストロゲンに類似しているので、「植物エストロゲン」とも呼ばれ、女性ホルモン様作用があることが知られています。更年期世代の女性は、女性ホルモンの分泌量が急激に減少して、ほてり、のぼせなどの血管運動症状、うつ、不安、不眠などの精神症状などの不定愁訴である更年期症状が現れることがあります。その際イソフラボンを摂取することで、減少する女性ホルモンの代替になると考えられています。




イソフラボンは、「グリコシド型」と「アグリコン型」の2種類に大別されます。


●グリコシド型イソフラボン

グリコシド型は、糖が結合しているイソフラボンです。豆腐、納豆、油揚げ、豆乳などの大豆食品に含まれるイソフラボンは、すべてグリコシド型です。

グリコシド型イソフラボンは、体内に吸収される前に、腸内細菌の働きで糖が切断され、アグリコン型(後述)になってから吸収されますが、個人のその日の体調により腸内細菌の働きや活性が変動する可能性があります。


●アグリコン型イソフラボン

アグリコン型は、糖が結合していないイソフラボンです。アグリコン型イソフラボンは、味噌や醤油に含まれています。アグリコン型は糖が結合していないため、グリコシド型より体内への吸収率が高いのが特徴です。腸内細菌で吸収しやすい形に変化させる必要がなく、日々の体調にも左右されません。したがって、グリコシド型よりアグリコン型のイソフラボンを摂取するほうが合理的といえます。日本人を対象とした体内吸収性の臨床実験でも、「アグリコン型イソフラボン」のほうが早く、多く体内に吸収されるという研究報告が上げられています。



この「アグリコン型イソフラボン」にはゲニステイン、ダイゼイン、グリシテインの3種類があります。どのような違いがあるのかを見ていきましょう。


ゲニステイン、ダイゼイン、グリシテインの違いとは

体内吸収性が高い「アグリコン型イソフラボン」(ゲニステイン、ダイゼイン、グリシテイン)のうち、女性ホルモン様作用については、ゲニステインが最も強く、その次にダイゼイン、グリシテインと続きます。

また、これらのイソフラボンは、フェノール性水酸基と呼ばれる構造を持っています。このフェノール性水酸基は体内で起きる酸化に対して体を守る「抗酸化活性」がありますが、3種類のイソフラボンのなかではゲニステインの抗酸化活性が最も強いことが報告されています。女性ホルモン様作用の高さや、それに伴う様々な症状改善効果を考えると、ゲニステインとダイゼインが注目すべき成分だといえます。

ダイゼインの効果は?

ダイゼインの効果は、大きく分けて2つあります。

活性型のエクオールの原料になる

ダイゼインは、腸内細菌によって変換されるとエクオールが生成されます。エクオールとはゲニステインと同程度の強さの女性ホルモン様作用を持つ成分なので、更年期症状の緩和に役立つことがあります。

骨粗しょう症の予防

グリコシド型イソフラボンにダイジンという成分があります。この成分は骨吸収マーカーの生成を抑制し、骨粗しょう症の予防につながると報告されており、特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品が開発されています。ダイゼインはダイジンから糖の結合が外れたアグリコン型イソフラボンなので、同じ有効性が十分期待できます。

ゲニステインの効果は?

ゲニステインは抗酸化活性も女性ホルモン様作用も3種のなかで最も強いイソフラボンです。ゲニステインの効果は5つ挙げられます。

女性ホルモン様作用

ゲニステインには女性ホルモン様作用があるので、摂取することで更年期以降減少する女性ホルモンの代わりになり、更年期症状の緩和が期待できます

骨粗しょう症の予防

グリコシド型イソフラボンにゲニスチンというものがありますが、骨吸収マーカーの生成を抑制し、骨粗しょう症の予防につながるといわれています。ゲニステインは、ゲニスチンから糖が外れたアグリコン型イソフラボンなので、ゲニスチンと同様の骨粗しょう症予防効果が期待できます。

抗酸化作用

更年期世代の女性は、加齢により抗酸化力が低下すると、体内における酸化的なダメージにより、細胞損傷、発がん、動脈硬化などのリスクが増加します。ゲニステインには抗酸化作用があるので、そういった病気のリスクを低減させる可能性が期待できます。

乳がん発症抑制

女性ホルモンであるエストロゲンは、乳がんの発生や増殖に深く関わっています。乳がん細胞のなかには女性ホルモンの受容体を持っているものがあり、エストロゲンが結合することで増殖する場合があるからです。

ゲニステインはエストロゲンの代わりに女性ホルモン受容体に結合し、エストロゲンの作用を邪魔し、がん細胞の増殖を抑え、乳がんのリスクを低下させます(イソフラボンの乳がんリスク低減については、乳癌診療ガイドラインにも掲載されています)。


動脈硬化リスクの軽減

女性ホルモンは、脂質代謝を正常化させて、動脈硬化の発症を抑制することも知られています。一般的に、心筋梗塞や狭心症といわれる虚血性心疾患は、中高年の男性に多く発症する病気ですが、女性の場合は閉経後に発症が増えます。閉経後に上がる血中のLDLコレステロールを下げる女性ホルモンと同様に、ゲニステインを摂ることで、動脈硬化リスクの軽減が期待できます。


ダイゼインとゲニステインの摂取はサプリがおすすめ

更年期世代に摂取するとよいゲニステインやダイゼインは、味噌や醤油から摂ることができます。日本の伝統的な発酵食品である味噌と醤油は、発酵過程中に体内吸収性の高いアグリコン型イソフラボンに変換されるのです。しかし、ゲニステインの含有量は、味噌100g中約25mg、醤油100g中約0.5mgしかありません。いくらゲニステイン、ダイゼインを多く摂りたいからといって、味噌や醤油を摂りすぎてしまうと、今度は塩分過多が問題になります。

そこで、味噌や醤油などの食品に加えて、サプリメントからゲニステインやダイゼインを摂るといいでしょう

有効性の強さから考えて、ゲニステインを優先的に摂取するのがおすすめですが、ダイゼインも一定の効果が期待できますので、ゲニステイン、ダイゼインを一緒に摂取できるサプリメントがおすすめです。

まとめ

女性ホルモン様作用が強く、体内吸収性の強い「アグリコン型イソフラボン」のゲニステインとダイゼインは、更年期症状の緩和や骨粗しょう症のリスク減少、抗酸化作用や乳がんのリスク低減などの効果が期待できます。ゲニステインとダイゼインは味噌や醤油に少量含まれますが、摂りすぎると塩分過多になるので、サプリメントからも摂るようにするといいでしょう。



<記事監修>

佐藤隆一郎先生
東京大学大学院 農学生命科学研究科特任教授・名誉教授。放送大学客員教授。日本薬科大学非常勤講師。東京大学大学院農学系研究科修了。農学博士。専門は食品生化学、脂質生化学。長年「食と健康」をテーマに研究を重ねている。2019年紫綬褒章受章。著書に『食と健康』(共著、放送大学教育振興会)、『健康寿命をのばす食べ物の科学』(ちくま新書)など。