ゲニステインに副作用はあるの?適切な摂取量から効果までご紹介

大豆イソフラボンの一つであるゲニステインを摂取すると、女性ホルモンの減少による更年期症状の緩和が期待できます。これはゲニステインの女性ホルモン様作用によるものです。ただ、ゲニステインを摂ると副作用が起こるのか心配する方もいるでしょう。今回は、ゲニステインに副作用があるのか、またどのくらい摂取すればいいのかを、詳しくお伝えしていきます。

ゲニステインとは

ゲニステインとは、丸大豆に含まれるイソフラボンアグリコンのなかで、約50%を占める成分です。

閉経の前後5年間を「更年期」と呼びますが、その年代の女性は女性ホルモンの分泌量が急激に減少して、ほてり、のぼせなどの血管運動症状、うつ、不安、不眠などの精神症状などの不定愁訴である更年期症状が現れることがあります。ゲニステインには女性ホルモン様作用があるので、ゲニステインを摂取すると、減少している女性ホルモンの代わりになり、更年期症状の緩和が期待できます





ゲニステインの摂りすぎによる症状、副作用はある?

更年期症状の緩和効果があるなら、ゲニステインをたくさん摂ったほうがいいのではないかと思う方がいるかもしれませんが、大豆イソフラボンについては、食品安全委員会で摂取上限が決められており(摂取上限については後述)、この範囲内で摂ることが望ましいとされています。ただ、その量を1日超えたからといってすぐに健康被害につながることはありません。

大豆イソフラボンアグリコンのうち約50%を占めるゲニステインも同様に、1日の摂取上限を超えたからといってただちに健康被害につながることはありませんが、摂取上限量を超えることが継続的になると、乳がんや子宮内膜症のリスクにつながることが考えられるので注意が必要です。ここではゲニステインを含む大豆イソフラボンの過剰摂取のリスクを見ていきます。


【大豆イソフラボンの過剰摂取によるリスク】

①乳がんの発症リスク

女性ホルモンであるエストロゲンは、乳がんの発生や増殖に深く関わっています。乳がん細胞のなかには女性ホルモンの受容体をもっているものがあり、エストロゲンが結合すると増殖する場合があります。大豆イソフラボンはエストロゲン同様に女性ホルモン様作用があるため、過剰摂取することにより乳がんの発症リスクにつながることが可能性として考えられます。

②閉経前の女性ホルモンへの影響

閉経前女性に対して、大豆イソフラボン摂取による血中の女性ホルモン、例えばエストラジオール(エストロゲンの一種)や、プロゲステロン(妊娠の準備のためのホルモン)の濃度の変動、月経周期の延長との関係性が示唆されています。

③子宮内膜症のリスク

長期間の大量の大豆イソフラボンの摂取により、子宮内膜症のリスクが高まることも報告されています。

このように、ゲニステインを含む大豆イソフラボンは、「摂れば摂るだけよい」わけではありません。決められた摂取上限を守ることが大事といえます。

ゲニステインの1日の適切な摂取量や飲み方は?

ゲニステインは1日どのくらいの量を摂ればいいのでしょうか。また、摂るタイミングや飲み方など、注意点はあるのでしょうか。ここからは、ゲニステインを効果的に摂取するにはどうすればいいのかを詳しくお伝えします。


①ゲニステインの1日の推奨摂取量

前述のとおり、丸大豆に含まれるイソフラボンアグリコンでは、ゲニステインの存在比率が約50%程度という報告があるので、イソフラボン摂取量の約半分がゲニステインに相当します。 食品安全委員会では、大豆食品では1日70~75mg、サプリメントなどでは30mgがイソフラボンアグリコンとしての摂取上限値と定めているので、そのうちの約50%がゲニステインと考えると、35~37.5mg、サプリメントでは15mg程度となります。ただ実際はゲニステインとしての摂取上限値は定められていません。摂取するゲニステインの量を計算するより、摂取するイソフラボンアグリコンの総量を守って摂取するのがおすすめです。


②ゲニステインの摂取方法

大豆食品でもサプリメントでも、ご自身の摂取しやすい形態で摂ってください。なお、海外から輸入されているサプリメントのなかには、用法どおりに摂取すると、1日の摂取量が30mgを超えているものもありますので注意が必要です。日本国内で製造・販売されている製品は、食品安全委員会が提唱する上限値30mg以内で設計されているので、安心して摂ることができます。

③ゲニステインを摂取するタイミング

ゲニステインを含む大豆食品もサプリメントも、ともに食品ですので、摂るタイミングに特に決まりはありません。自分の摂取しやすいタイミングで摂ることをおすすめします。なお、サプリメントを摂る際には、水で飲むのがベストです。ジュースやお酒などと飲む場合、飲料に含まれている成分によってサプリの体内吸収率が変化しないとも限らないからです。

ゲニステインの効果とは

大豆イソフラボンに含まれるゲニステインには女性ホルモン様作用や抗酸化作用があります。用量を守って摂取すれば、更年期症状改善のほか、乳がんのリスク低下や生活習慣病の予防にも効果があります。

①更年期症状の改善

ゲニステインには女性ホルモン様作用があるので、摂取することで更年期以降減少する女性ホルモンの代わりになり、更年期症状の緩和が期待できます

②乳がんのリスク低下

女性ホルモンの受容体を持つ乳がん細胞とエストロゲンが結合すると、乳がん細胞が増殖する可能性があります。しかしゲニステインがエストロゲンの代わりとなり、乳がんの女性ホルモン受容体に結合し、エストロゲンの作用を邪魔すると、がん細胞の増殖を抑え、乳がんのリスクが低下します



③骨粗しょう症の予防

ゲニステインは、骨吸収マーカー(骨を壊す細胞が作り出す物質)の生成を抑制し、骨粗しょう症の予防につながるといわれています。そのため、骨のことを考えると、更年期が過ぎてもゲニステインを摂り続けることがおすすめです。

日本人女性は骨粗しょう症になる人は比較的多めですが、骨折のリスクは低いことが知られています。日本人は欧米人ほど乳製品を摂らないことからカルシウム摂取量が不足しています。飲料水は軟水でミネラル分が低く、また野菜の生育に使われる水も軟水であるため、欧米人ほどカルシウムを摂ることができません。にもかかわらず骨折のリスクが低い理由の一つに、大豆製品からイソフラボンを摂取していることが挙げられます。

今の10代、20代の女性もダイエットで骨がもろくなっている人が見受けられるため、彼女たちが50代、60代になると骨粗しょう症のリスクは上がるといわれています。医学の発展により寿命はどんどん延びる傾向にあるので、健康寿命を延伸するためにも、常に骨活は必要です。高齢になっても自立活動に必要な骨格を維持するためにも、ゲニステインを更年期以降も継続して摂り続けることをおすすめします。



④美肌効果

ゲニステインを主成分とする大豆イソフラボンアグリコンが、女性の肌のシワ、肌弾力の改善に効果があることが報告されています。

⑤生活習慣病のリスク低減

女性ホルモンは、脂質代謝を正常化させて、動脈硬化の発症を抑制することも知られています。一般的に、心筋梗塞や狭心症といわれる虚血性心疾患は、中高年の男性に多く発症する病気ですが、女性の場合は閉経後に発症が増えます。閉経後に血中のLDLコレステロールが上がった場合、女性ホルモンが下げてくれますが、女性ホルモン様作用のあるゲニステインもLDLコレステロールを下げますので、動脈硬化リスクの軽減が期待できます

また、更年期世代の女性は、加齢により抗酸化力が低下すると、体内における酸化的なダメージにより生活習慣病のリスクが増加しますが、ゲニステインを摂っていると予防効果があります

なお、ゲニステインは女性のみならず男性にもおすすめできる成分です。日本人男性に最も多い前立腺がんの予防にも、女性ホルモン様活性を持つゲニステインは効果が見込めます。


ゲニステインは飲んだらすぐに効くの?

ゲニステインには医薬品のような即効性はありません。ある一定の期間継続的に摂取することで効果が体感できると考えた方が良いでしょう。ゲニステインのような食品由来の成分は、医薬品成分と比較すると、効果がマイルドであると考えられます。実際にゲニステインを主成分とする大豆イソフラボンアグリコンの更年期症状緩和効果は、摂取開始2カ月あたりからようやく表れ始めるともいわれています。

ゲニステインは何歳から飲み始めるといいの?

閉経年齢が約50歳、その前後5年が更年期といわれる時期となります。そのため、更年期症状が出やすくなる40歳代、特に40代後半あたりからゲニステインを積極的に摂取することで、更年期症状の緩和が期待できます

まとめ

ゲニステインは、更年期症状の改善に役立つイソフラボンです。ゲニステインは過剰摂取を続けると、乳がんや子宮内膜症のリスクが増える可能性があるので、摂取上限を守って摂るとよいでしょう。なお、ゲニステインは即効性があるわけではないので、継続して摂り続けることで効果を実感できます。



<記事監修>

佐藤 隆一郎先生
東京大学大学院 農学生命科学研究科特任教授・名誉教授。放送大学客員教授。日本薬科大学非常勤講師。東京大学大学院農学系研究科修了。農学博士。専門は食品生化学、脂質生化学。長年「食と健康」をテーマに研究を重ねている。2019年紫綬褒章受章。著書に『食と健康』(共著、放送大学教育振興会)、『健康寿命をのばす食べ物の科学』(ちくま新書)など。