ドライマウスに口臭に…。更年期世代のお口トラブル解決法

セルフケア
大人女子が突撃取材!お悩み解決隊


更年期世代が抱えがちなお悩みを、読者代表のヴィーナスたちが専門家に相談して解決する“お悩み解決隊”。今回は3人の子どもを抱えるアイコが、最近気になっているお口のトラブルについて、歯科医の牧浦倫子先生に相談しに来ました。口の乾きや、人と話す際に気になってしまう自分の口臭…。牧浦先生の的確なアドバイスを聞いて、アイコの不安も消えたようですよ。



更年期に増えるお口のトラブルは “唾液不足による口の乾燥”が一因

牧浦先生(以下、牧浦) アイコさん、更年期のせいも確かにありますね。粘膜の潤いや唾液分泌には女性ホルモン(エストロゲン)が関係しています。更年期にエストロゲンが急減することで、唾液が減り、口の乾燥やネバつき、口臭といった不快な症状が現れることがあります。

唾液には口のなかの粘膜や歯を保護してくれる有効成分が含まれています。例えば若返りホルモン、歯を保護する成分、免疫物質などです。その唾液が減ると、虫歯も歯周病のリスクも高まります。そのため、更年期からは意識してオーラルケアを行うことが大切です。

オーラルケアとは、歯だけでなく、歯茎・舌・粘膜など、口のなか全体を健康に保つケアのこと。歯磨きや歯間ブラシ、デンタルフロスなどによる日常のケアに加えて、虫歯・歯周病予防、歯科医院での専門的なクリーニングや治療、口腔機能を保つためのリハビリも含めて考えていきましょう。

実は歯の変化って、更年期だけでなくいろいろな要因が関係しているのです。忙しくて夜遅くに食事をするようになったり、間食の回数が増えたりする生活習慣の変化も、歯に大きな影響を与えます。その変化に自分では気づかず、歯科医院に来て初めて、「今までと同じように歯磨きしているのに虫歯になった」「こんなに歯周病が進んでいるなんて」と気づかれるケースが多いようです。

また、人によって虫歯菌のタイプは異なりますが、どのタイプにも共通していえるのが、唾液の減少がリスク要因になっているということ。更年期が過ぎても、加齢により唾液は減り続けるので、ここから先はずっとケアを続けていく必要があります。

牧浦 今までのケアを変えるというより、食生活を見直したり、症状がなくても定期的に歯医者に行く習慣をつけたりすることが大事です。

口のなかが変化する時期に、自分の歯磨きだけで対応するのには限界があるんです。歯の専門家である私たち歯科医や歯科衛生士でさえ、自分のケアだけでお口のトラブルを防ぐことは難しく、定期的に歯科医に行ってケアを受けているくらいなんですよ。

なお、最低3カ月~半年に1度は歯科検診を受けることをおすすめします。虫歯や歯周病のリスクは100人いたら100人とも違うものなので、ご自身の検診頻度はかかりつけの歯科医院の先生にぜひ聞いてみてください。




自分の口臭のセルフチェック&ケア法を確認する



更年期に増えるドライマウス。気になる原因とセルフケア

牧浦 はい。ドライマウスは口腔乾燥症という病気で、唾液の分泌が減り、口が乾く状態のことをいいます。その原因はさまざまです。


【ドライマウスの原因】

●薬の副作用

更年期以降、薬を飲む機会が増えると、唾液が減ることがあります。例えば睡眠薬や抗不安薬、風邪薬、花粉症の薬、血圧を下げる薬などは、副作用として口が乾くことがあります。効き目が比較的マイルドと思われている漢方薬でも、そう感じられる場合も。

●ストレス

緊張していると口が渇きがちです。更年期には家庭や仕事の負担が増え、ストレスもたまりやすい時期。ストレスで交感神経優位になると、唾液は出にくくなります。

●加齢・ホルモン変化(エストロゲン減少)

女性ホルモンの低下によって副交感神経の働きが弱まり、唾液の分泌が減るため、ドライマウスになりやすくなります。

●生活習慣の変化

マスク生活で口呼吸が増えたことや、ポカンと口を開けている癖も乾燥を悪化させます。

また、更年期世代の方は忙しく、時間の節約のために食べやすいもの、つまりあまり噛まなくてもよい柔らかい食べ物に偏りがちです。そのような食生活をしていると、唾液は減ってしまいます。

ほかには、会話不足もドライマウスの一因です。口をしっかり動かして会話をすると、口の周りの筋肉が使われて唾液が出やすくなりますが、口を動かす機会が減ると、唾液も出にくくなります。

●全身的な病気(シェーグレン症候群・糖尿病など)

更年期以降になりやすいとされる病気にシェーグレン症候群がありますが、この病気は唾液や涙が減るという特徴があります。また糖尿病にも、口の渇きが症状として現れることがあります。


イライラする更年期の女性

牧浦 口臭の原因にもなるので、早めの対策が大切ですね。ここからは、ドライマウスを軽減するセルフケア法を紹介していきましょう。


【ドライマウスのセルフケア】

●こまめな水分補給

喉が渇いていなくても、1~2時間に1回は水分を摂る習慣をつけましょう。おすすめは水、麦茶、ハーブティーなど、カフェインが入っていないもの。特に麦茶はミネラル補給にもなります。

カフェインの入っているコーヒーや緑茶、紅茶などは利尿作用があり、体の水分を出すことにつながるので控えめに。またフレーバー付きの水など、フルーツの風味がついた飲み物は虫歯のリスクがあるので要注意です。カフェインレスコーヒーに関しても、わずかにカフェインが残っている商品もあるため、飲み過ぎないようにしましょう。

なお、朝一番に飲むときは、白湯のように体を温めてくれる温度で摂取するのが良いでしょう。消化作用も働きます。

●栄養バランスが良く、しっかり咀嚼できる食事

ご飯や野菜など、咀嚼が必要な食品を食べて唾液を出すようにしましょう。噛む回数が多い食材を意識的に取り入れてください。

例えば手軽で美味しい日本のパンは、ふわふわして食べやすいため、お好きな方も多いと思いますが、食パンでも意外に砂糖を多く含んでいます。口どけがいいので食べやすい反面、歯にくっつきやすく、虫歯になりやすいというデメリットも。そんなに噛まなくてもよいので唾液もあまり出ません。一方、ご飯はよく噛む必要があり、唾液分泌を促してくれるのでおすすめです。加工食品にも意外に砂糖が含まれているので注意しましょう。

また毎日でなくとも、週に2~3回は加工食品を控えた食事を心がけていただきたいです。外食するなら、パンや麺をメインにせず、ご飯とお味噌汁(または野菜スープ)と焼き魚や肉などが摂れる、定食メニューを選ぶといいですよ。

そのほか、しっかり噛んで唾液分泌を促せる食品として、野菜・海藻・キノコ類は積極的に摂ってください。筋肉や骨をつくるタンパク質も重要です。大豆イソフラボンには女性ホルモン様作用があり、粘膜の乾燥や炎症の緩和も期待できるので、豆腐や納豆のような大豆製品も積極的に摂取しましょう。

ちなみにときどき「野菜が不足しているときに野菜ジュースや酵素ジュースは代わりになりますか?」と聞かれることがあるのですが、ジュースや乳酸菌飲料などの液体は噛まなくても良いため唾液が出ません。また、かなり砂糖も多いので、歯のためにはおすすめしません。素材をそのまま食べるのがおすすめです。

●ガムや口腔保湿剤の活用

キシリトールは虫歯菌のエサにならないので、キシリトール配合ガムならおすすめできます。キシリトールの配合量が多い商品はやや高価ですが、ほかの甘味料が入っていない分、歯には安心ですね。

また、口の乾きを感じたときに、ドラッグストア等で購入できるゼリー状の口腔保湿剤を口のなかに塗るのも効果があります。

●歯科・婦人科での相談

ドライマウスのために虫歯や歯周病、口臭もひどくなる可能性があるので、まずは歯科で口の状態を診察してもらうことをおすすめします。なお、ホルモン補充療法や漢方薬の利用など、婦人科で更年期症状の治療法について相談しても良いでしょう。

●ストレス軽減

ストレスをなくすことは難しいですが、まずはゆっくりと休む時間をとることから始めてください。良質な睡眠をとることは、ドライマウスの改善にもつながります。



誰にも聞けない自分の口臭。セルフチェックして適切なケアを

牧浦 口臭って、なかなか自分では気づけないですよね。でも簡単にチェックできる方法があるんですよ。


【口臭のセルフチェック法】

一番分かりやすいのは、歯磨きのときに使ったデンタルフロスのにおいをかぐことです。少しでもにおいを感じたら、それは口臭のサイン。会話中、相手との距離が50cm以内だと、そのにおいが届いてしまう可能性もあります。

牧浦 根本的な対策は唾液を増やすことですが、ほかにも手軽にできる口臭ケアのコツがあるので、ここでいくつかご紹介しますね。


【口臭のセルフケア】

●朝食をきちんと食べる

朝食を食べると、唾液がしっかりと出てきてにおいが消えていき、口臭予防になります。できれば、ご飯などのよく噛む食事がベストですが、パンでも食べないよりは食べたほうが良いでしょう。

●食後の歯磨きと歯間ブラシ

歯磨きセットを携帯して、食事の直後に歯磨きをするといいでしょう。オフィスに置いておいてもいいですね。その際、歯間ブラシやデンタルフロスを併用すると、歯と歯の間の汚れも落とせます。

●勢いよく水でうがいを

歯磨きする時間がないときや外出先では、水でぶくぶくうがいするだけでも効果的です。頬や唇をしっかり動かして勢いよくうがいすることで、汚れが取れやすく、口臭予防にもなります。

●あいうべ体操で唾液アップ

口のまわりの筋肉を動かして唾液を出すために、“あいうべ体操”という表情筋の運動を行います。

方法は簡単で、ゆっくりと「あ」「い」「う」と口を大きく動かし、「べ」で舌をしっかり出すというものです。これを1日30回を目安に行ってください。

しっかりと体操ができていると、はじめは筋肉痛のような、舌がつるような感じがあるかもしれませんが、慣れると自然にできるようになります。


●タブレットなどはほどほどに

口臭予防になればと摂取しがちなミントタブレットや飴には砂糖が含まれており、虫歯のリスクを高めてしまいます。口臭予防のつもりでも、常に口に入れているのは逆効果になることもあるので注意しましょう。



更年期から見直したい歯磨き習慣とアイテム選びのコツ

牧浦 お口のトラブルが増えがちな40代以降は、歯磨き習慣もアップデートしたほうがいいと思います。ここでは、更年期世代から意識したい歯磨き法と、アイテム選びのポイントをご紹介しましょう。


【更年期からの歯磨き習慣】

●上手な歯磨きのコツ

ブラッシングは「優しく丁寧に」が基本。「しっかり磨こう」と思ってゴシゴシこすってしまうと、歯がすり減ったり、歯茎を傷つけたりする原因になってしまいます。

歯磨きは、タイルをこするように力を入れるのではなく、歯茎を優しくマッサージするようなイメージで行いましょう。歯と歯茎の境目にブラシの毛先をそっとあてて、やさしく小刻みに動かすのがポイントです。

なお、歯ブラシは1カ月に1本を目安に交換してください。もし2週間程度で毛先が開いてしまうなら、ブラッシングの力が強すぎるサインです。

●歯ブラシは歯科医院で選んでもらう

ドラッグストアには数多くの歯ブラシが置いてあるので、自分に合った1本を選ぶのは意外と難しいですよね。一番確実なのは、歯科医院で「私に合う歯ブラシはどれですか?」と聞いてみることです。自分の歯に合う大きさや形を歯科衛生士さんに見てもらい、歯科医院で取り扱っている歯ブラシのなかから選んでもらうと安心です。

歯科医院で取り扱っている商品は高価だというイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、市販品より質が高く、汚れを取る効果が優れていることも多いので、試してみる価値はあります。

一度歯科医推奨アイテムを使ってみて、もし性能が気に入ったら、次回はドラッグストア等で同じ商品を探してみても良いと思います。

●歯間ブラシ、デンタルフロスなどのアイテムを併用する

歯ブラシだけだと歯と歯の間の汚れは落としきれないので、デンタルフロス・歯間ブラシなどの補助清掃用具も併用しましょう。市販のシリコン製の歯間ブラシは汚れが落ちないこともあるので、製品選びは慎重に。歯間ブラシやデンタルフロスも、歯科医院で良いものを紹介してもらうと良いでしょう。使い方を誤ると歯茎を傷つけ、歯茎が下がることがあるため、適切な使用方法も歯科医院で教わってください。

また、デンタルフロスには「ワックスあり(ワックスタイプ)」と「ワックスなし(ノンワックスタイプ)」がありますが、普段のケアにはワックスタイプがおすすめ。ワックスタイプは滑りがよく、歯の間に入りやすく、扱いやすいのが特徴です。一方、ノンワックスタイプは汚れの除去力が高い反面、歯の間に引っかかったり、詰め物が外れたりするリスクもあるため、使いこなすには少しコツが必要です。慣れないうちは、まずワックスタイプでケアの習慣づけをしてください。

おすすめの使い方は、デンタルフロスを手から肘くらいまでの長さで長めにカットして、歯間ごとに新しい部分を使う方法。上から入れて、前や横からスッと抜くように使うと、歯間をまんべんなくきれいにできます。

なお、市販のハンドル付きのデンタルフロスは使いやすいのですが、何度も再利用していると毛束がほぐれてしまって清掃効果が落ちるので、多くても2~3回の使用にとどめましょう。

●歯磨き粉の成分もチェック

フッ化物配合歯磨剤1450ppmと書いてあるものを選び、使用後のうがいは最小限に抑えると虫歯予防に効果的です。夜の歯磨き時には特に、歯磨き粉を洗い流さず、つばを吐き出す程度にし、フッ化物を口のなかに残したままにすることです。歯磨き粉は少しくらい飲み込んでも問題はありません。日中も、歯磨き粉は1回すすげば十分です。




歯周病や口内炎、歯茎下がりに歯ぎしり…。気を付けたい口腔トラブル

牧浦 ありますよ。歯茎の腫れや出血、また歯ぎしりや食いしばりなどのお悩みも、更年期世代の方からよく相談されます。どれも、自覚症状が出たときにはすでに進行していることも多いので、定期的に歯科でチェックを受け、早期発見・早期対処することが何よりの予防策です。


●歯周病

歯周病とは、細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患で、歯の周りの歯茎(歯肉)や、歯を支える骨などが溶けたり歯を失ったりする病気です。徐々に進行して歯が抜けます。

●歯茎の腫れや出血、口臭、口内炎

初期の歯周病は自覚症状が乏しく、歯茎の腫れや出血、口臭が最初のサインになります。また、口内炎が繰り返しできる場合も、口内環境の悪化が関係していることがあります。

●歯茎が痩せる

歯周病が進むと歯茎が露出し、根元の象牙質が露出します。その部分は柔らかく削れやすいため、知覚過敏や虫歯のリスクが上がります。歯垢が根元に溜まったままにすると、歯石の厚みも増して病原性も高くなります。歯科医院での定期的な歯石除去が重要です。

●歯ぎしり、食いしばり、歯の割れ

ストレスやホルモン変化により、更年期には歯ぎしりや食いしばりが増える傾向があります。無意識のうちに歯に負担がかかり、歯が欠けたり折れたりしてしまうケースも。歯のひびは残念ながら元には戻らず、抜くしかありません。ほかの歯が割れないようにするためにも、歯を保護するために、歯科医院で自分の口に合ったマウスピースを作製してもらうといいでしょう。

歯ぎしりや食いしばりの予防のためには、日中は「歯と歯を離しておく」意識を持つことが大事です。付箋などに「食いしばり注意」などとメモして、よく目にするところに貼って日頃から注意するのも効果的です。




口腔の健康を維持できれば、いつまでも楽しく暮らせる

牧浦 更年期になったら歯のケアを早めに始め、続けていくと、歯の喪失を防ぎ、健康な生活を維持できます。自分の歯が揃っていると嚙む力が保たれ、病気を防げます。たとえ病気になったときも口から栄養を摂れるので回復が早いんです。また唾液の分泌が促されれば、消化や栄養吸収もスムーズになり、体の調子も整うのでいいことづくめ。

私のクリニックに定期的な歯科検診に来ている90代の患者さんたちは、畑を耕したり、友達とランチに行ったり、毎日本当に楽しそうに過ごしています。食べる楽しみを支えているのは、健康な歯と口の働きなんですね。つまり、10年後、20年後に「口から食べられる」状態でいられることが、この先の生活の質に直結するんです。

更年期は心と体にいろいろな変化が起こる時期であり、口のなかの不調もその一つです。しっかり噛んで、笑って、食べることを楽しむために、歯・口のケアをし続けてください。定期的なオーラルケアを習慣にして、この先も自分の歯で過ごせる未来をつくっていきましょう。


<この記事を監修いただいた先生>

牧浦 倫子 先生
牧浦歯科医院院長
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アイコ

アイコ
43歳。夫と小学生~中学生の子ども3人の5人家族。子育てをしながらパート勤務をこなし、毎日忙しく過ごしている。2年前からホットフラッシュやイライラ、不安感、気分の落ち込みに悩む。最近では、物忘れや高血圧、白髪、抜け毛の症状も。

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