更年期からはコレステロールとうまく付き合う
「LDLコレステロール」と「HDLコレステロール」の数値をチェック
健康診断で「コレステロール値が高め」と指摘されたことはありませんか?
この「コレステロール」という言葉、更年期を迎えるとともに気になってくるものの、何がどうよくないのか今ひとつわからないという人も多いようです。そこで今回は、コレステロールとの上手な付き合い方について考えてみましょう。
更年期以降は、さまざまな生活習慣病にかかるリスクが高くなりますが、「動脈硬化」もその代表的なもののひとつ。コレステロールは、この動脈硬化に大きく関係しています。
そもそも一口にコレステロールといっても、健康診断などで調べるものには大きく分けて「総コレステロール」「LDL」「HDL」の3種類があります。この中で、“悪玉”コレステロールと呼ばれるのが「LDL」。これが血液中に増えすぎると血管内にたまって動脈硬化を促進します。
一方、「HDL」は、過剰になったLDLを回収して肝臓に運ぶ働きがあるため“善玉”コレステロールと呼ばれます。そして「総コレステロール」は、LDLとHDLの両方を含みます。
以前は、コレステロールといえば総コレステロールを意味していましたが、2007年に動脈硬化予防のガイドラインが変わり、悪玉コレステロール(LDL)と善玉コレステロール(HDL)の2つが重要になりました。つまり、「悪玉コレステロールの数値が高い」ことに加えて、「善玉コレステロールの数値が低い」ことも、動脈硬化を引き起こす原因になるのです。
健康診断などの検査表を見るときは、悪玉コレステロールと善玉コレステロールの数値をチェックすることが大切です。女性は男性に比べて善玉コレステロールが多い傾向があるので、総コレステロール値も高くなりがち。総コレステロール値が高くても、善玉の数値が高くて悪玉が低いなら問題はありません。
女性の場合は、更年期以降、とくに閉経後に悪玉コレステロールの数値が高くなる傾向があることが知られています。
なぜなら、更年期に分泌が低下する女性ホルモン(エストロゲン)には血中の悪玉コレステロールを肝臓に取り込む受容体を増やす働きがあるから。男性に比べて女性の悪玉コレステロールが増えにくいのは、このためです。
ところが、更年期以降エストロゲンが減少すると、この受容体も減少するので、血中の悪玉コレステロールが十分に回収されにくくなり、数値が上昇するというわけです。
血中に増えすぎた悪玉コレステロールは、血管の壁に入り込み、そこで「プラーク」と呼ばれるかたまりを形成します。このかたまりが少しずつ大きくなるにつれて、血管内部は狭くなり、血液が流れにくくなってしまいます。これが「動脈硬化」です。動脈硬化が進むと、将来、心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こすリスクが高まるため、早くから対策することが必要になります。
悪玉コレステロールの数値が「140/dl」以上、もしくは善玉コレステロールの数値が「40mg/dl」以下、もしくは中性脂肪の数値が「150mg/dl」以上の場合は、「脂質異常症」と診断されます。
女性の場合は、男性に比べて心筋梗塞などにかかるリスクが少ないこともあり、これらの数値が基準値を少し超えたからといって、ただちに治療や薬が必要になるわけではないともいわれています。どの段階で薬の治療が必要かについては、医師によって見解が異なるようです。
「食物繊維」や「DHA」「EPA」などを積極的に摂りましょう
更年期に入ったら、脂質異常症の予防対策を始めるにこしたことはありません。悪玉コレステロールが高め、もしくは善玉コレステロールが低めという人は、生活改善を行いましょう。
中でも重要なのは、食生活です。肉の脂身やバターなどのコレステロールが多い食品を食べすぎないこと、そして、野菜や海藻などの食物繊維をたくさん摂って、余分なコレステロールを排出することが大切です。
また、コレステロールを控える代わりにお菓子やパンなどの炭水化物を摂りすぎるのもよくありません。血糖値や中性脂肪値が上がったり、摂りすぎるとよくない油の摂取量が増えたりするので注意しましょう。
コレステロール対策には、摂取する脂肪の種類も重要です。油は大きく「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」に分かれますが、肉の脂身などに多い飽和脂肪酸と、不飽和脂肪酸の中でもゴマ油やマーガリンなどに含まれる「n-6系」という脂肪酸は摂りすぎると動脈硬化を促進するといわれています。
一方、不飽和脂肪酸の「n-3系」といわれる脂肪酸は積極的に摂りたいもの。サバやイワシなどの青魚に多く含まれる「DHA」や「EPA」、亜麻仁油に多く含まれています。これらは食事で毎日摂るのは大変なので、サプリメントを利用するのもいいでしょう。
生活改善は、運動することも重要です。善玉コレステロールは適度な運動で増えることがわかっているので、毎日できるだけ体を動かすようにしましょう。
最後に、“悪玉”にもいいところはあるというお話をしておきます。実は、悪玉コレステロールの数値は低ければ低いほどいいのかというと、そうではないのです。そもそも、このコレステロールは、細胞膜やホルモンの材料になる大切な成分。少なすぎると、血管がもろくなったりすることも。最近では、LDLの低下とがんの関係も指摘されています。
もし、検査などで悪玉コレステロールの数値が低すぎると警告されたなら、「悪玉が低いのは大丈夫」などと自己判断せずに医療機関を受診しましょう。