更年期に吐き気が引き起こされる原因は?症状の特徴や隠れた病気、対処法を解説
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セルフケア
吐き気を感じて食欲がわかない。妊娠していないのに、つわりのような吐き気がする。更年期世代のなかには、胃の不調による吐き気を感じている方がいるのではないでしょうか。これまでは何ともなかったのに、急に吐き気がするようになって不安ですよね。
本記事では、更年期に起こる吐き気の原因や、症状への対処法を解説しています。吐き気にめまいや頭痛が伴う場合は病気が隠れている可能性があるため、医療機関の受診も視野に入れておきましょう。
更年期に起こる吐き気の症状
45〜55歳の更年期になると、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が大きくゆらぎながら減少することで自律神経が乱れ、生理不順や急なのぼせ、気持ちの浮き沈み、不眠や疲労感といったさまざまな不調が現れます。更年期に起こる吐き気も症状の一つで、胃がむかつくように感じるほか、つわりのような症状を感じる人もいるようです。
吐き気のほかに、めまいや頭痛などの症状が現れたり、日常生活に支障をきたすほど重い症状が現れたりする場合もあります。すぐにおさまる場合は特に心配ないとされていますが、症状が長引くようであれば、婦人科などで医師の診察を受けるようにしましょう。
一方、吐き気に急なめまいと耳の症状(耳鳴りや耳が詰まった感じなど)が伴う場合には、他の病気が隠れている可能性も考えられます。つらさを我慢せず、医療機関を受診することをおすすめします。
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更年期症状と思っていても、別の病気が潜んでいるケースもあります。気になったら、婦人科専門医に積極的にご相談することをおすすめします。
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更年期の吐き気の原因はセロトニンの減少
更年期の吐き気の原因は、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量低下に伴う、自律神経の乱れが一因と考えられています。エストロゲンの分泌量が減ると、「幸せホルモン」として知られるセロトニンの分泌量も減少します。セロトニンは、脳や腸で働く神経伝達物質のため、吐き気の感じやすさにも関与しています。そのため、セロトニンの減少に、体の変化やストレス、胃腸の不調などが重なると、吐き気を感じやすくなるといわれます。
加えて、症状の背景には加齢やストレス、季節の影響(夏バテなど)など、複数の要因が重なっていることもあります。また、吐き気の症状に加えて食欲不振などを自覚している場合は、更年期による抑うつが隠れていることもあります。
ストレスや不眠が原因の場合もある
更年期になると、職場で責任のある位置についたり、子どもの進学や就職があったりします。また親の介護など、ライフスタイルが大きく変わる時期でもあります。そういったストレスが、吐き気の原因になっている場合もあるのです。
ストレスがたまると、眠れなくなってしまうことがあるほか、他の更年期症状にもつながる場合があります。吐き気などの更年期症状をおさえるためにも、あまり無理をせず、短い時間でもいいのでリラックスできる時間を設けてくださいね。
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更年期はさまざまなストレスがかかる時期でもあります。規則正しい食生活や睡眠を十分に取るなど、自分でできるセルフケアもいろいろと試してみましょう。
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更年期特有の不安感が原因の場合も
ホルモンバランスの乱れから、気持ちが不安定になりやすいのが更年期です。脳とお腹はつながっているといい、不安感が続くと吐き気やムカムカを引き起こすことがあります。
実際に、東京医科歯科大学(現:東京科学大学)医学部産婦人科の研究チームの報告によると、237名の閉経前後女性を対象にした更年期症状の発症状況の調査において、吐き気と不安症状に強い相関があることが分かっています。
更年期とは限らない!「危険な吐き気」のサイン
更年期症状と勘違いしてそのままにしていると、大きな病気を見逃してしまいます。更年期の吐き気と勘違いしやすい病気について解説します。
チェック項目 | 疑われる病気の例 |
□ 吐き気とともにお腹の痛みを伴う | 胃炎、胃潰瘍など |
□胸やけや口のなかに酸っぱいものがこみ上げる | 逆流性食道炎 |
□ 吐き気とともにめまいがある | 耳の疾患(メニエール病、良性発作性頭位めまい症) |
□吐き気とともに右上腹部の痛みと発熱がある | 胆石や胆のう炎 |
□吐き気とともに頭痛がする | 片頭痛 |
□吐き気と、激しい頭痛が突然起きる | くも膜下出血 |
□生理前や生理中に吐き気を感じる | 月経困難症やPMS |
胃の疾患
胃炎、胃潰瘍、逆流性食道炎の場合、吐き気以外に胸やけや胃の痛み、食後のムカつきがあります。消化器内科を受診するようにしましょう。
耳の疾患
メニエール病の場合、耳鳴りや耳のつまった感じ、視界がグルグルと回る回転性のめまいが伴います。一方、良性発作性頭位めまい症の場合、寝返りをしたり上を向いたりしたときに数秒から1分ほど回転性のめまいが生じます。いずれも耳鼻科を受診するようにしましょう。
胆石や胆のう炎
胆石や胆のう炎の場合、吐き気のほかに右のおなかやみぞおちに強い痛みが生じます。発熱を伴うこともあります。消化器内科・外科を受診するようにしましょう。
脳の疾患
片頭痛の場合、頭痛とともに吐き気を伴うことが多いといいます。脳神経内科を受診するようにしましょう。また、頭痛や吐き気、めまいの症状とともに血圧の急上昇が見られる場合は、くも膜下出血の前兆の可能性があります。放置せず、救急車を呼びましょう。
PMSや月経困難症
生理前に症状が現れるPMSと、生理中に現れる月経困難症の症状に下腹部痛や吐き気があります。つらい時は、婦人科を受診するようにしましょう。
更年期の吐き気への対処法

更年期の吐き気への対処法には、以下のようなものがあります。
●ツボを刺激する
●リラックスを心がけ自律神経のバランスを整える
●カウンセリングで心的ストレスをやわらげる
●漢方薬を服用する
●サプリメントを服用する
●婦人科などで医師の診察を受ける
ツボを刺激する
自律神経の乱れにより吐き気が生じている場合は、合谷(ごうこく)や中脘(ちゅうかん)などのツボを刺激すると良いでしょう。合谷は手の人差し指と親指の付け根あたりにあるツボで、自律神経のバランスを整え、胃腸の働きを促す効果が期待できます。
また中脘は、おへそから指4本分ほど上にあるツボで、胃の消化を促す効果があります。指先で優しく刺激するほか、お灸をすえてツボを刺激すると良いでしょう。


リラックスを心がけ自律神経のバランスを整える
温泉やマッサージに行くなど、リラックスできるように心がけることで自律神経を整えることが期待できます。自宅では、ぬるめのお湯に長時間浸かるほか、寝る前にストレッチをしてみても良いかもしれません。短い時間でもストレスから解放されると、気分転換になって自律神経のバランスが整うため、吐き気や食欲不振などの更年期症状の改善が期待できます。
カウンセリングで心的ストレスをやわらげる
吐き気に強い不安感が伴うなど、精神症状による可能性がある場合は、専門家のカウンセリングを受けると良いでしょう。カウンセリングとは、専門家との会話や対話を通して、問題を解決したり自分を認めたりするものです。いま考えていることや悩んでいることを打ち明けることにより、自分の心情や状況に気づくことができます。
カウンセリングを受けることで、心的ストレスがやわらぐため、更年期特有のストレスや不安感、うつ病などの症状の緩和が期待できます。
漢方薬を服用する
漢方薬とは、生薬(植物の葉、茎、根などのなかで薬効があるとされる一部分を加工したもの)を複数組み合わせて薬として確立されたもので、体全体のバランスを整えることで、体に本来備わっている自然な治癒力を助け、病気を治療していくものです。
女性ホルモンを変動させたくない場合や、乳がんや子宮がんなどの既往歴がある場合にも、漢方薬を服用するという選択肢があります。
更年期の吐き気をおさえたい場合は、呉茱萸湯(ごしゅゆとう)や六君子湯(りっくんしとう)が有効とされています。特に六君子湯は胃腸を整える効果があるため、吐き気だけでなく食欲不振などの症状にも効果が期待できます。
サプリメントを服用する
更年期の吐き気の緩和には、大豆イソフラボンの摂取もおすすめです。豆腐や納豆などの大豆製品に多く含まれる大豆イソフラボンは、女性ホルモン(エストロゲン)と似た作用を発揮することで、更年期症状の緩和に効果があると報告されています。
大豆イソフラボンにはいくつか種類があり、そのなかで最もエストロゲン様作用が高いとされるのがゲニステインです。ゲニステインは、特に味噌や醤油などの大豆発酵食品に含まれますが、十分な量を摂取しようと摂りすぎると塩分過多になる可能性も。また、仕事や家事で忙しいなか、毎日必ず大豆製品を食べ続けるのも難しいでしょう。
そこで、ゲニステインを含むサプリメントを活用すれば、必要な栄養を無理なく効率的に摂取することができます。
婦人科などで専門医の診察を受ける
セルフケアで改善が見られないときや症状が長引く、体重減少が激しいなどの場合には、婦人科などの専門医の診察を受けることをおすすめします。
医師の診察を受けることで、ホルモン補充療法(HRT)や薬物療法など、症状に適した治療が受けられます。つらい状況を一人で抱え込まず、医療機関を受診するようにしてください。
更年期の吐き気に関するよくある質問
ここからは更年期の吐き気に関するよくある質問へ回答していきます。
吐き気の症状はいつまで続くのでしょうか?
個人差があるためいつまでとはいえません。症状が軽い人もいれば、5年や10年など長期にわたって続く人もいるからです。セルフケアで改善が見られない場合や症状が長引く、体重減少が激しいときなどは、医療機関の受診をおすすめします。
更年期の吐き気はどんな感じがしますか?
胃がムカムカするような吐き気を感じることが多いとされています。また妊娠していないのに、つわりのように感じる人もいるようです。めまいや頭痛などが伴う場合は、更年期症状以外の原因が考えられるため、医療機関の受診をおすすめします。
更年期の吐き気に有効な漢方薬はありますか?
呉茱萸湯(ごしゅゆとう)や、六君子湯(りっくんしとう)などの漢方薬が有効とされています。特に六君子湯は胃腸を整える効果があるため、吐き気だけでなく、食欲不振などの症状にも効果が期待できます。
食欲不振や吐き気に有効なツボはありますか?
合谷(ごうこく)や中脘(ちゅうかん)などのツボが有効とされています。合谷は手の人差し指と親指の付け根あたりにあり、自律神経のバランスを整える効果があります。また中脘は、おへそから指4本分ほど上にあるツボで、胃の消化を促す効果があります。
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吐き気の対処方法はいろいろとあります。自分で試してみたり、方法が分からない場合には婦人科専門医を受診したりするなど、我慢せずに相談してみてください。
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一人で抱え込まずに医療機関を受診しよう

更年期になると、吐き気をはじめ急なのぼせ、気持ちの浮き沈み、不眠や疲労感などさまざまな症状が現れます。更年期症状に悩んでいる方は、女性ホルモンと同じ働きをすることで、症状を改善する効果が期待できる大豆イソフラボンの摂取がおすすめです。日々の食事やサプリメントでイソフラボンの摂取を意識してみましょう。
また症状が長引く場合や、生活に支障が出ている場合には、一人で抱えずに専門医を受診することをおすすめします。
<この記事を監修いただいた先生>

秋津 憲佑先生
キッコーマン総合病院 産婦人科部長
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