更年期障害、婦人科での診察の流れは?

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~不調はどのように伝えるといい? 更年期外来の診療はどのように進むの?~

更年期の不調のあらわれ方は人それぞれ。風邪やケガの場合とは異なり、今抱えている症状のつらさを、病院でどう伝えればよいかわからない…、という人は多いかもしれません。そこで今回は、更年期の専門医である東京医科歯科大学の寺内公一先生に、更年期外来での診療の流れや、不調改善を促す生活習慣の見直し、薬物治療について、お話を伺いました。

診察で「話を聴く」ことについて
生活習慣の改善の大切さについて
薬物治療について

診察で「話を聴く」ことについて

<医師との対話を通じて、症状のつらさの背景にある、今抱えている問題をとらえ直すことができます>

―更年期の不調があらわれたとき、更年期外来では具体的にどのようなことをするのでしょう。まず最初に、今抱えている不調をどのように伝えればよいか教えてください。

寺内公一先生(以下、寺内) ほかの病院でも同じだと思いますが、医師が最初に情報として知っておきたいことは、予診票に記入していただくことが多いと思います。
・これまでにかかった病気
・今飲んでいる薬
・気になっている症状の経過
を、まずは予診票に書き込んでいただければと思います。

―初診日は緊張しますから、うまく話せないこともあります。その点最初に、予診票の質問に答えていく形で、今抱えているつらい症状を伝えられるのは助かります。

寺内 そのうえで、私の場合は、初診時に患者さんのお話をよくお聴きすることに時間をかけています。

―不調で不安なときに、自分の話に耳を傾けていただけるとほっとしますね。

寺内 もちろん、診察時間は限られていますから、そのなかでということになりますが、患者さんのお話をお聴きすることは、とても重要なことだと思っています。更年期の不調についてのお話をお聴きするわけですが、「話を聴く」ということ自体に治療的な効果があり、それには二つの面があると考えています。

ひとつは、詳しく自分の話を聴いてくれる人がいるという安心感。もうひとつは、患者さん自身が話をするうちに、ご本人のなかで、それまでつかみどころがなく、漠然として、もやもやしていたものが、だんだんと整理されていき、症状を強くしている要因に、ご自身で気づかれていく…そういった側面があるのです。

その過程で、不調といったからだにあらわれることだけではなく、心理的なこと、社会的なこと、もっといえば、生き方や信念といったことも含めて、どういう問題を抱えていらっしゃるのかということを少しずつお聴きしていきます。

さらに、婦人科系の診療も併せて行います。ほかにも、例えば、更年期障害のお話をしていたのだけれど、よくよくお話を聴いていると、症状が更年期障害とよく似ている甲状腺の病気が疑われる。そういう場合は、血液検査などを追加します。また別のケースですが、動悸がするという方で、脈を測ってみると不整脈があるといった場合は、心電図検査などを追加することもあります。

生活習慣の改善の大切さについて

<生活習慣の改善には、更年期症状をやわらげる効果があります>

―不調の原因が更年期かどうかを見極めるための検査をプラスするのですね。また、「話を聴く」ことのなかに、患者さんを知るてがかりが多くありますね。ほかにはどんなことをするのですか。

寺内 薬物治療も並行して行いますが、まずは、生活習慣の改善のご提案をします。というのは、更年期の不調で、食習慣や運動習慣が乱れてしまうことが珍しくないからです。そうした状況では、症状のつらさに押し流されて、栄養価のない食事でまにあわせてしまったり、部屋が散らかったままになったり、からだを動かす意欲がなくなり体重が増えてしまったりということが起こりやすくなります。

そうした生活は自己評価を下げてしまいますし、ご家族がいらっしゃれば、ご家族からもいろいろ言われてしまうかもしれません。するとまた、そのことが不調につながり…と悪循環に陥るところがあるのです。

ですので、例えば、「食事を作るのが難しいときは、お菓子で済まさずこういうものを選びましょう」ですとか、「運動がつらいときは散歩をしてみましょう」といった、簡単にできそうなことからご提案して、生活習慣の改善を目指していきます。

正しい生活習慣は、心身の健康を保つうえで大切なのですね。私はお薬が中心なのではと思っていたので、少し意外でした。

寺内 そうですね。もしかしたら、こうした取り組みは更年期外来では少数派かもしれません。東京医科歯科大学の産婦人科では、健康管理が大事という視点から、30年近く、管理栄養士さんと一緒に、生活習慣の改善プログラムを行っています。

患者さんが前向きに健康的な自分を取り戻すなかで、更年期の症状が緩和されていくことがデータとしても証明されていますし、もちろん、栄養価の高い食事や、運動すること自体に治療効果があるともいえるでしょう。

薬物治療について

<薬物治療は医師と相談しながら、自分の生き方や信念も大切に>

―お薬にはどのようなものがあるのですか。

寺内 薬物治療は3本柱で、「ホルモン補充療法」「漢方薬」「向精神薬(抗うつ薬、抗不安薬、催眠鎮静薬)」があります。

薬物治療は、それぞれを単独で使うこともありますし、併用することもあります。

患者さんおひとりおひとりに、生き方や信念がありますので、例えば、「ホルモン補充療法をしたい」という方がいる一方で、「私はホルモン補充療法はしたくない」という方もいらっしゃいます。漢方薬や向精神薬についても、使いたい方と、そうでない方がいらっしゃいます。先ほど生活習慣の改善のお話をしましたが、最初は薬を使わずに、生活習慣の改善だけでチャレンジしてみたいという方もいらっしゃるので、本当に人それぞれです。

おひとりおひとり症状も異なりますし、希望や信念なども異なりますので、その方に必要な治療法を見極めつつ、患者さんの考えもよくよく聴いて、治療法をご提案していく。そういう形を私はとっています。

―自分がどんな風に治療を受けていきたいのか、普段から考えておくことが大事ですね。本日はありがとうございました。

寺内公一先生

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科茨城県地域産科婦人科学講座教授。医学博士。主に更年期障害や骨粗鬆症の診療に従事し、中高年女性の抑うつ・不安・不眠の特性とその対応についての研究や、閉経後骨粗鬆症の病態生理に関する研究、女性の身体的・精神的機能の加齢による変化と、食品・薬品およびそれらに含まれる生理活性物質がこれに対して与える影響についての研究を行う。

インタビュアー:満留礼子

ライター、編集者。暮らしをテーマにした書籍、雑誌記事、広告の制作に携わる傍ら、更年期のヘルスケアについて医療・患者の間に立って考えるメノポーズカウンセラー(「NPO法人 更年期と加齢のヘルスケア」認定)の資格を取得。更年期に関する記事制作も多い。

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