まだまだ先の話、じゃない!更年期からロコモ予防が必要な理由とは

ロコモティブシンドロームの疑いがある女性
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「ロコモティブ・シンドローム(運動器症候群)」、略して「ロコモ」はご存じかと思いますが、ご自身の親世代くらいの方が気を付けるもの、という意識がありませんか?実は、気を付けるべきなのは「今」からなのです。

先の話じゃない!「ロコモ」予防をはじめましょう

「ロコモ」とは、運動するときに使う「骨」「関節と椎間板」「筋肉と神経活動」のそれぞれの働きが衰えることで、介護が必要になったり、寝たきりになったりする危険性が高いことをいいます。

加齢によって骨や関節、筋肉が衰えると、痛みや変形、可動域の制限などがあらわれやすくなり、筋力やバランス能力が低下します。そうすると、骨折や転倒のリスクが高まり、やがては立ち上がれない、歩けないといった寝たきりの状態になってしまいます。

「ロコモ」に該当する方は、その予備軍も合わせると4700万人にものぼると推定されています。
厚生労働省が行った調査によると、高齢者が要介護になる原因の1位は「脳卒中」、2位は「認知症」、3位は「老衰(高齢による衰弱)」ですが、4位の「関節疾患」と5位の「骨折や転倒」を合わせると1位の「脳卒中」に迫るほどなのです。

「メタボ」に続く新しい国民病として、注目を集めている「ロコモ」ですが、日本整形外科学会によれば、次に挙げる「7つのロコモチェック」に該当する項目が一つでもあれば、何らかの対策が必要とされています。

ロコモのチェックリスト

□片足立ちで靴下が履けない
□家の中でつまずいたり、転んだりする
□階段を上るのに手すりが必要
□15分くらい続けて歩けない
□横断歩道を青信号で渡りきれない
□2kg程度の荷物(1リットルの牛乳パック2個程度)を持ち帰るのが困難
□家の中でのやや重い家事(掃除機の使用や布団の上げ下ろしなど)が困難

40代や50代ではまだ、ロコモチェックの項目が当てはまらないという方も多いでしょう。「ロコモなんて、まだまだ先の話」と思うかもしれませんが、実は、油断は禁物なのです。なぜなら、更年期と「ロコモ」にも、深い関係があるからです。

更年期以降の女性の骨は…

硬いイメージがある骨ですが、実は毎日つくり変えられています。絶えず古い骨の細胞を溶かして壊し、新しい骨の細胞に入れ替えているのです(骨の代謝)。

古い骨の細胞が壊される割合と、新しく骨の細胞がつくられる割合のバランスがよい間は、骨密度は一定に保たれます。

ところが、更年期に女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が急激に減少すると、骨密度も急激に減少することがわかっています。

その理由は、さまざまなホルモンが関わっている骨の代謝に、女性ホルモン(エストロゲン)も大きく関与しているからだと考えられています。

エストロゲンは腸から骨の生成に必要なカルシウムを吸収したり、新しい骨をつくりやすくしたりする働きをしています。

そのため、更年期以降はそれまでエストロゲンによってバランスを保っていた骨の代謝に影響があらわれ、加齢の影響も加わって、骨密度が減り骨がもろくなる「骨粗しょう症」になりやすくなるのです。

骨がもろくなると当然、転倒や骨折もしやすいので、「ロコモ」要注意!という訳です。

骨のメンテナンスは、自分の骨密度を知ることから

「骨粗しょう症」は、なっていても痛みを感じないことが多く、自覚症状はほとんどないといわれています。切り傷のように目で見ることができないため、骨折してはじめて気づく方も少なくありません。

骨折した女性

まずは、今の骨密度の状態を知ることからはじめてみましょう。放っておくと骨密度はどんどん低下してしまいますが、早期発見することができれば、低下するスピードを抑えられます。

病院で行われる検査には、エックス線によるもの、超音波によるもの、採血・検尿によって骨の代謝を調べるものなどがあります。

自治体では、40歳、45歳、50歳…70歳など、該当する年齢の方を対象に、「骨粗しょう症」の節目検診を行っています(費用は数百円から1,000円程度のところが多いようです)。
対象年齢にあたらない方は、民間の骨粗しょう症ドックや人間ドックのオプションを利用するのもおすすめです。

女性の骨密度は、月経が始まる思春期から20歳までにピークを迎え、更年期前まで一定量を保ち、閉経後に減少します。
閉経前に骨密度の検査を受けておき、閉経後は年に1度の間隔で定期検査を受けると、骨量の変化がわかり対策がしやすくなります。

食事の工夫で丈夫な骨をつくる

丈夫な骨をつくるには、骨の材料となる「カルシウム」をはじめ、カルシウムの吸収を助ける「ビタミンD」、カルシウムの骨への沈着を助ける「ビタミンK」を意識して摂ることが大切です。

ビタミンDのイメージ

更年期は、不調の影響で食事が細くなったり、食事内容が片寄ったりすることがあります。そういう状態が続くと、丈夫な骨をつくるための栄養素が不足して、骨密度の低下が進みやすくなりますので気を付けてください。

更年期の女性の「カルシウム」摂取量は、推奨量が1日あたり650mg(日本人の食事摂取基準、2020年版)とされています。

「カルシウム」は、牛乳やヨーグルトなどの乳製品や小魚などに多く含まれています。「ビタミンD」が豊富な鮭やきのこ、「ビタミンK」が多い小松菜や納豆などと一緒に、日々の食事で摂るように工夫しましょう。

鮭やきのこは、ビタミンB6も豊富!レシピをチェック

ちなみに、納豆、豆腐、豆乳、きなこ、油揚げなどの大豆製品はカルシウムが多く、からだの中で女性ホルモンに似た働きをする大豆イソフラボンも豊富です。

運動で負荷や刺激を与えると骨の代謝が促される

また、骨に負荷や刺激を与えると骨の代謝が促され、骨密度の低下を抑えることができます。負荷や刺激といっても、片足を少し床から離したり、かかとを上げて下ろしたりする程度の小さな負荷や刺激でOKです。

例えば、片足を床から5センチほど持ち上げて1分ほどキープするだけで、骨には体重の2.5倍もの負荷がかかります。
また、かかとを上げてストンと床に落としたり、階段を上り下りしたりするような軽い刺激を与えると、骨の古い細胞が溶け出して血液中に吸収され、それがサインとなって新しい骨がつくられるようになります。

こうした運動は、家事や仕事のちょっとした空き時間でもできますので習慣にしていきたいですね。

加えて、骨がもろくなって骨折すると、周りの骨に負担がかかり、第二、第三の骨折をしやすくなるといわれています。骨折は思わぬ転倒によって引き起こされることが多いので、転びそうになったときにバランスをとったり、ふんばったりできる、転びにくい体をつくることも大切です。

ストレッチをする女性

対策の1つとして、体の柔軟性を保つこと。お風呂あがりなどに、全身や大きな関節付近を気持ちよく伸ばすストレッチをしてみてください。根気よく毎日続けると、成果が出やすくなります。

年齢を重ねるほど個人差が大きくなるといわれる骨密度。食事や運動など、日々の工夫で骨密度の低下を予防していきましょう。

加齢とともに衰えやすい、下半身や体幹の筋肉もしっかり鍛える

体をしっかり支え、多少の段差をものともせずに歩くには、とくに太ももの筋肉や腹筋、背筋も鍛えておくべきです。

筋肉を鍛えることは同時に、骨を丈夫にすることにもつながります。やり過ぎはひざや腰を痛めたりと逆効果になることもあるので、ウォーキングや体幹ストレッチ、筋トレなどを、自分のできる範囲で無理なく行ってくださいね。

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同時に、筋肉の維持や増加に欠かせない良質のタンパク質もしっかり摂りましょう。ただし、タンパク質と一緒に脂肪を多く摂ると、肥満などの問題があります。
そんな時は、鶏ささみや牛もも肉、魚介類、大豆や大豆製品、牛乳や乳製品など、できるだけ高タンパク低脂肪の食材を選んでください。

こうした栄養素は食事で摂るのがいちばんですが、忙しい方や外食が多い方などは補助的にサプリメントを利用してもいいでしょう。

サプリを飲む女性


更年期を迎えてからの女性は、「転ばぬ先の杖」ならぬ「転ばぬ先のロコモ予防」をしっかりと心がけることが必要です。

ロコモや骨粗しょう症、というとなんとなく遠い未来のことのようですが、無意識のうちに受けていた女性ホルモンの恩恵がなくなってしまう更年期以降は、自ら意識的にケアをしなければ健康を保つことが簡単ではなくなります。

とはいえ、難しく考えることはなく、できることからはじめればOK!これからも人生を楽しく過ごすために、今から少しずつ積み重ねていきましょう。

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