【専門医が答える】更年期のお悩みに回答

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女性なら誰もが経験する「更年期」。関心はあるけれど、よく考えると分からないことも多いという人も少なくないのでは?そこで今回は、前回Q&Aに引き続き、更年期の専門家である東京医科歯科大学の寺内公一先生(一部、キッコーマンニュートリケア・ジャパン開発部 和泉)に、一問一答形式で、更年期についての素朴な疑問にお答えいただきました。更年期を上手に乗り切るヒントがいっぱいです!

 

Q6:更年期に積極的に摂りたい食材や食品があれば教えてください。

寺内公一先生(以下、寺内) まずは、栄養バランスの良い健康的な食事をすることが大切です。

<<補足>>
更年期は、生活習慣病や慢性疾患のリスクが高まる時期でもあります。まずは、健康的な食事を心がけることが大切です。炭水化物や動物性脂肪の摂り過ぎを控え、n-3系脂肪酸(亜麻仁油、DHA・EPA)や、ビタミン・ミネラルを含む野菜、果物、豆類を多く摂るように心がけましょう。

何をどれくらい食べたらいいのか分からないときは、厚生労働省、農林水産省のホームページで紹介されている「食事バランスガイド」が参考になります。

そのうえで、大豆イソフラボンを含む大豆製品(納豆、豆腐、豆乳、きなこ、大豆の水煮など)やポリフェノールを含む食品(緑黄色野菜やブドウなど)を献立に取り入れたり、日々の食事の補完として、大豆イソフラボンやポリフェノールのサプリメントを利用したりするのも一つの方法でしょう。

 

Q7: プラセンタ注射がいいと聞いたことがあります。プラセンタ注射は、更年期症状とどのような関係があるのでしょうか。

寺内 更年期症状との関係はよく分かっていません。

<<補足>>
プラセンタ注射は、保険適用のものが1種類、保険適用外のものが1種類あります。更年期症状、更年期障害への有効性は、必ずしも厳密に証明されているわけではありませんが、症状が改善されたという方もいますので、かかりつけの医師とよくご相談されるのが良いと思います。

 

Q8:過去に、子宮頸がんを患いました。更年期になり更年期症状がつらいのですが、HRT(ホルモン補充療法)をすることは可能でしょうか。また漢方薬や、大豆イソフラボンのサプリメントを摂取しても問題ないでしょうか。

寺内 問題ありません

<<補足>>
子宮頸がんの手術をされた方で、更年期症状がつらいという方は多いと思います。また、子宮頸がんの治療で早期に卵巣を摘出された方は、早い時期にエストロゲン(女性ホルモン)の分泌量が低下し、さまざまな疾患のリスクをかかえやすくなります。そのため、健康維持の観点からも、HRT(ホルモン補充療法)を行うことが望ましいと思います。

また 、漢方薬や大豆イソフラボンのサプリメントは、用法・容量を守れば摂取しても問題ありません。かかりつけの医師とよくご相談されるのが良いと思います。

  

Q9:大豆イソフラボンのサプリメントを摂取しています。アグリコン型など色々あるのですが違いが分かりません。どのように違うのですか。

和泉 大豆イソフラボンには、さまざまなタイプがあることが知られています。まず第一に、配糖体型とアグリコン型というものです。元来、大豆中にはイソフラボンは糖がくっついた配糖体型といわれる形で存在しているのですが、その糖が切断されてアグリコン型という形で存在するものもあります。一般的にアグリコン型の方が体内への吸収性が良いといわれています。 そして第二に、大豆の部位によって、イソフラボンの種類も異なってくるというものです。大豆に含まれるイソフラボンアグリコンには、ゲニステイン、ダイゼイン、グリシテインの3種類が存在しているのですが、ゲニステインは大豆全粒に、ダイゼインとグリシテインは大豆胚芽に局在しています。従って、大豆のどの部位を使っているかによっても含有するイソフラボンも異なります。このなかでも“ゲニステイン”は女性をサポートする力が強いといわれています。

ゲニステインについての詳細

 

<<補足>>
ちなみに、エクオールという成分を耳にすることがあるかと思いますが、エクオールは大豆イソフラボンといわれることもあるようなのですが、その構造的特徴から正確には大豆イソフラボンの仲間ではありません
※上記サプリメントに関するご回答は、キッコーマンニュートリケア・ジャパン開発部の和泉が回答いたしました。

 

Q10:50歳頃から徐々に髪が薄くなってきました。これも更年期によく見られる症状なのでしょうか。

寺内 更年期世代の患者様から訴えの多い症状の一つです。

<<補足>>
薄毛は、更年期世代の患者様から訴えの多い症状の一つですが、その発症のメカニズムや治療法は、まだよく分かっていません。また、今のところ、女性ホルモンを補充して症状が改善したというエビデンスはありませんので、女性ホルモンと薄毛の関連性も分かっていません。

現在、医薬品として「壮年性脱毛症における発毛、育毛及び脱毛(抜け毛)の進行予防」の薬効が認められているのは「ミノキシジル」という成分です。市販の外用薬もあります。

女性の脱毛のパターンは男性とは異なり、女性は頭頂部の分け目のところから薄くなる傾向がありますが、女性の脱毛にも「ミノキシジル」は効果があるとされています。

 

Q11:男性にも更年期、更年期症状はあるのでしょうか。

寺内 テストステロン(男性ホルモン)の分泌量が減ることで、女性の更年期症状に似た症状が現れることがあります。

<<補足>>
女性の更年期は、閉経をきっかけに女性ホルモンの状態が大きく変化します。卵巣から分泌されるエストロゲンの分泌量は、大きくゆらぎながら急激に減少します。

男性の更年期は、女性の閉経にあたるようなタイミングや劇的な移り変わりはありません。精巣から分泌されるテストステロンが、年齢とともに少しずつ減少していきます。

テストステロンの分泌量の減少には個人差があり、ゆるやかな坂道のように少しずつ減少する方もいれば、傾きが大きく早めに減少する方もいます。

女性の更年期と似た症状が現れるのは、坂道の傾きが大きい方で、性欲低下などの性機能症状、うつといった精神的な症状、あるいは疲れといった非特異的な身体症状など、いくつかの症状が現れることが知られています。

テストステロンの分泌量が減り、こうした症状が現れることを性腺機能障害といいますが、このことを分かりやすく男性更年期と呼んでいます。

男性更年期の相談・治療を受けたい場合、一般的には泌尿器科を受診しますが、婦人科と同様に、男性の更年期に理解の深い泌尿器科を選ぶことが大切です。テストステロン補充療法は自費ですので、そうした確認も含めて、事前にホームページなどで、病院やクリニックについて調べておくとよいと思います。

 

Q12:子宮筋腫がありますが、更年期になったので、大豆イソフラボンアグリコンのサプリメントを摂取してもよいでしょうか。

寺内 摂取しても大丈夫です

<<補足>>
大豆イソフラボンアグリコンのサプリメントには、子宮筋腫を大きくするほどの女性ホルモンの活性はありませんので、摂取して大丈夫です。また、子宮筋腫の経過を見ながらであれば、HRTも可能です

 

Q13: 40~50代になると女性は尿酸値が高くなると聞きますが、閉経と何か関係がありますか?

寺内 関係がありそうですが、加齢の影響もあると考えられています。ただ、メカニズムはまだ解明されていません。

<<補足>>
更年期を境に、尿酸値の値が高くなる方は増えますが、メカニズムについては、まだ解明されていません。また、HRTで症状が改善するというエビデンスもありません。

閉経後に女性で尿酸値が高くなる方は増えますが、高尿酸血症、痛風は圧倒的に男性に多い疾患で、人数としても男性の方が依然として多い傾向にあります。

 

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寺内公一先生
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科茨城県地域産科婦人科学講座教授。医学博士。主に更年期障害や骨粗鬆症の診療に従事し、中高年女性の抑うつ・不安・不眠の特性とその対応についての研究や、閉経後骨粗鬆症の病態生理に関する研究、女性の身体的・精神的機能の加齢による変化と、食品・薬品およびそれらに含まれる生理活性物質がこれに対して与える影響についての研究を行う。

インタビュアー:満留礼子
ライター、編集者。暮らしをテーマにした書籍、雑誌記事、広告の制作に携わる傍ら、更年期のヘルスケアについて医療・患者の間に立って考えるメノポーズカウンセラー(「NPO法人 更年期と加齢のヘルスケア」認定)の資格を取得。更年期に関する記事制作も多い。

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