手指の不調が現れやすい更年期。「メノポハンド」とは?

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更年期に手指の不調を訴える人は少なくないようです。近年、「メノポハンド」という言葉も聞くようになりました。そこで今回は、更年期の専門医である東京科学大学の寺内公一先生に、更年期に現れる手指の関節の炎症や痛みについてお話を伺いました。

記事まとめ
●更年期は手指や肩・腰などの関節痛が増え、女性は50代頃から男性より多く見られる。
●関節痛はエストロゲン低下と関連し、ホルモン補充療法(HRT)で改善が期待できる。
●手指の痛みは、更年期症状だけでなく、関節リウマチなどの病気との見極めが重要。
●手指以外の更年期症状もある場合は、更年期に詳しい医療機関への相談も選択肢。
●大豆イソフラボンなどのサプリメントで痛みが緩和する可能性も。



最近、よく耳にする「メノポハンド」とは?

寺内先生(以下、寺内) 手指の痛みを含め、肩こりや腰痛など、全身の関節痛を訴える方は多いと思います。

厚生労働省の調査においても、男女を問わず「肩こり」「腰痛」「手足の関節の痛み」といった、筋関節痛の有症率は高いことが分かります。

出典:令和4年国民生活基礎調査の概況(厚生労働省)



女性は男性の2倍関節痛が多い?

寺内 こちらは、男性と女性の「手足の関節の痛み」についての年代別の比較です。男女ともに年齢が上がるにつれて、手足の関節痛を訴える人が増えますが、50代頃から女性と男性の差が大きく開き始めます。

出典:令和4年国民生活基礎調査(厚生労働省)



エストロゲンと関節痛の関連は?

寺内 手指に限定されませんが、「エストロゲンの低下」と「一般的な関節痛」には、関連があることが知られています。更年期の関節の痛みは、軽い炎症が起こることとも関係があると考えられます。

例えば、乳がんの患者さんで、卵巣から出るエストロゲンだけでなく、末梢で男性ホルモンから変換されるエストロゲンも完全に止める治療をした方は、ほてりのぼせ、ホットフラッシュといった血管運動神経症状や、関節炎、関節痛、筋肉痛が見られることが知られています※1。また、卵巣を摘出する手術を受けた方にも同様の症状が見られます。

私たちの研究※2でも、更年期外来に通院している女性の56.1%に、毎日筋肉痛や関節痛が見られました。週3~4回痛みを感じる方は12.1%、週1~2回は17.0%で、合わせると85.2%の方に、筋肉痛や関節痛の症状が見られました。

Terauchi, et al. J Psychosom ObstetGynaecol. 2020 Mar;41(1):15-21.


また、この研究で多変量解析を行ったところ、「女性の筋肉痛、関節痛」は、「握力の低下」「不眠」と関連していることも分かりました。


※1 Paul E Goss, et al. N Engl J Med. 2003 Nov 6;349(19):1793-802.
※2 Terauchi, et al. J Psychosom Obstet Gynaecol. 2020 Mar;41(1):15-21.



関節痛にはホルモン補充療法が有効

寺内 有効とするエビデンスは多くあります。例えば、アメリカのホルモン補充療法の臨床研究WHI(Women’s Health Initiative)※3では、閉経後にホルモン補充療法を行った人の、1年後の症状を調べています。

ホルモン補充療法を1年継続した人は、ホットフラッシュや寝汗などに次いで、関節痛が有意に緩和されたことが報告されています。このことは、イギリスの大規模調査※4においても、同様の結果が出ています。

また、別のイギリスの研究では※5では、視点を変えて、閉経後のホルモン補充療法を中止した人の症状を調べています。

寺内 ホルモン補充療法を中止した人は、関節の痛みとこわばりが2.2倍になったと報告されています。

寺内 更年期は関節痛以外にもさまざまな症状が現れますが、ホルモン補充療法で改善した更年期症状を調べた研究もあります。アメリカの研究※6では、ホルモン補充療法を1年行った人は、ホットフラッシュ、寝汗、腟の乾燥感に次いで、関節痛が、有意に改善したと報告しています。

寺内 イギリスの研究※7においても、症状と順序は少し異なりますが同様の報告があります。その研究では、ホットフラッシュ、寝汗、不眠に次いで、筋関節痛、腟の乾燥感が有意に少なくなったと報告されています。

こうしたことからも、ホルモン補充療法は、筋肉や関節の痛みを改善する効果があるといえるでしょう。


※3 Vanessa M Barnabei , et al.Obstet Gynecol. 2005 May;105(5 Pt 1):1063-73.
※4 Amanda J Welton, et al.BMJ. 2008 Aug 21:337:a1190.
※5 Judith K Ockene , et al.JAMA. 2005 Jul 13;294(2):183-93.
※6 Vanessa M Barnabei, et al.Obstet Gynecol. 2005 May;105(5 Pt 1):1063-73.
※7 Amanda J Welton, et al.BMJ. 2008 Aug 21:337:a1190.



なぜ更年期に手指が痛むの?

寺内 なぜ、股関節のような大きな関節ではなく、手指のような小さな関節が痛むのか、その理由はよく分かっていません。

全身についていえることですが、50年以上ご自身の体を使い続けていますので、不調が現れやすいのは自然なことかもしれません。加えて、手は家事や仕事など、生活全般で絶えず使い続けていますので、使いすぎている面もあるでしょう。

寺内 手指の痛みに関しては、はじめに関節リウマチの有無を確認しておくことが大切です。



関節リウマチとは?

寺内 特徴的な初期症状として、起床時の手指のこわばりがあります。

寺内 更年期症状の手指のこわばりは、手を開いたり閉じたりしているうちに、数分で症状は和らぎます。一方で、手指のこわばりが1時間以上続く場合は、関節リウマチの可能性が高くなります。

また、関節リウマチは、手指だけでなく、全身の関節が左右対称に同じように痛んだり腫れたりするのも特徴です。

寺内 確かなことはよく分かっていませんが、自己免疫疾患と考えられています。自己免疫疾患とは、免疫システムの誤作動です。

本来、私たちの体には、ウイルスなどの外敵から身を守るための、免疫システムが備わっています。ところが、この免疫システムが何らかの理由で誤作動を起こしてしまい、自分自身の細胞や組織を攻撃してしまうのです。

関節リウマチは、症状が進むと肘や膝などの関節にも痛みが出るようになり、関節が破壊されると、関節が変形することもあります。また、体内で炎症性サイトカイン(炎症を引き起こす物質)が多く出続けるため、全身症状として倦怠感や貧血、微熱が出ることもあります。

寺内 関節リウマチは、長く病気の進行を抑えることが難しい病気でしたが、近年は薬剤が進歩し、関節破壊の進行を抑え、関節の痛みや炎症のない寛解を目指せるようになりました。

関節リウマチかどうかは、血液検査やX線写真などで診断できます。発症から2年以内に関節破壊が急速に進行しますので、気になる場合はリウマチ内科や膠原病内科などを早めに受診しましょう。



ヘバーデン結節・ブシャール結節とは?

寺内 「ヘバーデン結節」とは、指の第一関節に炎症や痛み、腫れ、こぶ状の変形が現れる変形性指関節症です。X線写真で診断します。症状が進むと、指を曲げにくくなったり、物をつまみにくくなったりします。原因は分かっていません。第二関節に同様の変化が現れる場合は「ブシャール結節」と呼ばれます。関節リウマチとは異なる病気です。

寺内 有効な治療法は見つかっていません。患部にテーピングをして指の安静を保つ対処療法が中心になります。痛みが強い場合は、抗炎症剤などを用います。

ホルモン補充療法を行った患者さんのなかには、手指の「痛み」も緩和されたという声を聞くことはあります。

全身の関節が痛い場合、他にも更年期症状がある場合は、閉経後10年以内であれば、ホルモン補充療法は受けてみる価値がある治療法の一つだと思います。

ただし、ホルモン補充療法は、開始年齢が60歳以上か、閉経後10年以上経過した場合は、慎重投与となる症例(基本的にはおすすめできませんが、患者さんと話し合い、十分に理解していただいた上で、注意を払って投与することが可能なケース)にあたります。

また、禁忌症例(例えば、乳がんのある人と過去に乳がんにかかったことがある人)の場合も、ホルモン補充療法を受けることはできません。

まずは、先にもお話しましたが、関節リウマチかどうかを調べましょう。そして、手指以外に症状がない場合は、手指の治療に理解の深い整形外科を受診しましょう。

関節リウマチではなく、更年期に手指の痛み以外の症状がある場合は、更年期に理解の深い医療機関とつながり、ホルモン補充療法を行うのも一つの方法です。



おすすめのセルフケアは?

寺内 大豆イソフラボンや大豆イソフラボン由来のエクオールは、エストロゲンと化学構造式が似ており、体内での働きも似ています。その点で、ホルモン補充療法を受けることができない、あるいは受けたくない方にとって、大豆イソフラボンやエクオールのサプリメントは、更年期のセルフケアの、選択肢の一つになると思います。

しかし、大豆イソフラボンやエクオールが、手指の痛みを改善するというエビデンスは、まだ十分ではないというのが現状です。

サプリメントは薬ではなく食品ですので、その点をよく理解することも大事です。また、勘違いされている方も多いのですが、大豆イソフラボンやエクオールで、指の変形が治ることはありません。あくまでも「痛み」が少し和らぐ可能性があるということになります。


<この記事を監修いただいた先生>

寺内公一先生

寺内 公一 先生
東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 茨城県地域産科婦人科学講座 教授
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<インタビュアー>

満留礼子

満留 礼子
ライター、編集者。暮らしをテーマにした書籍、雑誌記事、広告の制作に携わる傍ら、更年期のヘルスケアについて医療・患者の間に立って考えるメノポーズカウンセラー(「NPO法人 更年期と加齢のヘルスケア」認定)の資格を取得。更年期に関する記事制作も多い。

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